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第4話 「仕上がらない歌詞」と、ChatGPTがくれた言葉の力

2025年5月も終わりに差し掛かった頃。歌詞が完成して「やっと形になった」と胸を張れた矢先、親父は逝った。

最後に会ったのは正月、祖母の家。  
久しぶりに見た親父は、少し痩せた気がして、「長生きしてよ」と軽く言った。  
正直、“もしもの覚悟”は祖母の方に向いていて、親父が先に旅立つなんて想像もしなかった。

親父は、無口だった。  
眉間に皺、目だけが何かを諭すみたいに鋭かった。  
沈黙が怖くて、俺は意味のない話をやたらとした。  
ニュースの断片、今ハマってる曲、昨日見たくだらない動画。  
まとまりなんかなくても、とにかく喋った。空気を埋めたかった。  
親父は大抵うなずきもしない。ただ黙って聞いていた。  
その無言が怖くて、素直になれなかった。でも今思えば、あれも“聞いていてくれてた”ってことなんだと思う。

トモダチと喧嘩して帰った日には、  
「素手で正々堂々、タイマンでやったのか?」と、妙に筋を気にするセリフが飛んできた。

悪ふざけで先生に呼び出されたときも、頭を下げてくれた。なのに、細かいことは一切聞かない。
「全部、お前が悪いんだろ」——それだけ。
言い訳する余地なんてなかった。

説教は短い。だけど、逃げ道はゼロ。“筋を通せ”ってことだ。  

昭和の男って、たぶんそういう筋道や名誉を大切にしてたんだろう。

叱られたあと、何も言わずにラーメン屋に連れて行かれることがよくあった。  
君も知ってる、味噌ラーメンとチャーハンがうまい、あの店だ。  
カウンター席で並んで座って、湯気越しに見える親父の横顔は、いつも眉間に皺。  
ラーメンをすする音と器が当たる音だけが会話だった。  
あの沈黙が、俺たちなりの“和解の儀式”だったんだと、今なら分かる。

無口で照れ屋だけど、親父はよく旅行に連れ出してくれた。  
北海道から九州まで。旅先で買ったご当地キーホルダー、空港の売店でねだった飛行機のミニチュア。  
部屋の棚に並べて眺めるだけで、世界が広がったような気がした。  

会話の中身は覚えていない。それでも同じ景色を見たという事実が、今も確かに残っている。

親父はジャイアンツが好きだった。長嶋茂雄の話になると、珍しく饒舌になった。  
格闘技はRINGS。ヴォルク・ハンの技を「これが本物の関節技だ」と熱く語っていた。  
ミニ四駆やプラモデルは何台でも買ってくれた。  
ISDNの頃からパソコンをいじって、難しい顔で何かを打ち込んでいた。

少しの暇さえあれば、本を読んでいた。

いつからか勉強しろとは、あまり言われなくなった。  

その代わり、「勉強したくないなら、せめて本を読め」とだけ言った。  
書斎には司馬遼太郎がずらり。約束を破ってジャンプやゲームボーイを取り上げられ、本を読むしかない状況になった俺は『関ヶ原』『燃えよ剣』にハマった。戦う男の不器用さや覚悟が胸に刺さって、何度読んでも飽きなかった。  
浅田次郎の『天切り松 闇がたり』『蒼穹の昴』では、理不尽な世界で筋を通す男たちの姿にやられた。  

「男たるもの」を、親父は言葉じゃなく本で教えてくれたんだと思う。

親父は常々こんなことを言っていた。  
「タバコも酒もやめるくらいなら、早死にでいい」  
半分強がり、半分本気。  
その言葉通りに、潔いタイミングで旅立ってしまった。  
まさに天晴れ、絵に描いたような昭和親父だ。

親父の親父、つまり俺の“じいちゃん”も若くして亡くなったらしい。  
記憶はない。けれど祖母がこんなことを言った。  
「孫の中で、じいちゃんに抱っこされたのはあんただけなんだよ」  
その一言が妙に誇らしくて、自分だけが受け取ったバトンがあるような気がした。

あるとき、親父が珍しく夢を語った。  
「本を出版してみたいんだ」  
酒の席で、照れくさそうに、ぽつりと。それが親父の“夢”だった。

俺は、息子に歌を贈りiTunesに載せるという夢を叶えた。  
だったら、今度は親父の夢を引き継ぐ番かもしれない。  
昭和の終わりに生まれ、平成を駆け抜けた一人の人間として、言葉で記憶を残す。  
「夢は引き継げる」って背中を君に見せたい。

2025年のある夜ふと月を眺めながら、
親父を想った。その夜の想いが、このnoteを進める、原動力になっている。

最後に——。  
『勇者に贈る歌』のMVの終盤に登場する、アニメ調に加工した家族の集合写真。  
あれは、祖母からするとひ孫のしょうたが撮った一枚だ。  
「これ、俺がみんなを撮ったやつだよね?」って気づいたとき、心のどこかでほっとした。  
親父の記憶が、君の中に静かに刻まれた気がして、嬉しかった。

間に合わなかった後悔は、きっとずっと残る。  
でも、残せるものはまだある。  
歌がある。言葉がある。記憶がある。  
そして君がいる。

次回に続く。
▶️ 第5話はこちら:
『AIで映像化した、父と子の10年 ― 想いが“かたち”になった夜』

最後まで読んでいただき
ありがとうございました。

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