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【回復の記録③】 待つ側になった日|応える愛へ

回復の記録集|鎧を脱ぎ、愛へ還るまで 3話目。

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この記事のためのBGMです。
静かな場所で、呼吸を整えてからお読みください。


春の訪れと内側の熱


鳥たちが歌い始め、
春の気配が満ちる季節。


あの日、
「来てほしい」と言えた
バレンタインの前夜を境に、
私の中の何かが決定的に変わった。

一人で戦場を生き、誰にも頼らず
「来てほしい」とさえ言えなかった私が ──
鎧を脱ぎ、初めて自分の熱を差し出すことができた。

関係は奪い合いや競争であり、
誰かが「待ってくれる」経験なんてなかった私が ──
ただ静かに待ってくれる人の存在を知り、支配しない愛の形に触れた。

「人を好きになったことがない」と思い込み、
ただ求められるのを待つだけだった私が ──


あの日から。

寝不足で、仕事も忙しく、
いつもなら不機嫌の極みにいるはずの疲労感。

けれど、体の奥底からは、
説明のつかない喜びが静かに、
けれど激しく湧き上がっていた。


岸辺のルール


私たちは夫婦別室で寝ている。

かつて調べ尽くした「睡眠と健康」の研究結果に従い、
夫の健康を最優先に考えた末の、
私たちの「岸辺」のルールだった。


夜、
隣の部屋で眠る彼が
一瞬目を覚ましたとき、私は声をかけた。


「来たいときに、いつでも来てね」


「うん」


彼は、来なかった。



※この先に、抒情的な親密さを表現したイラストと記録が含まれます


待つことの痛みと祈り


暗闇の中、熱を抱えたまま、
私は眠れない夜を過ごした。


熱を抱えて─

少しの寂しさ。けれどその奥で、
私は気づいてしまった。

「待てる人」である彼は、もっとずっと長く、
もっとずっと深い寂しさの中で
私を待っていたのだということを。



「待つ」とは、ただの空白ではなかったのだ。

それは、相手が自分の足でこちらへ歩いてくるための、
一番やさしい「余白」を空けておくこと。

彼はずっと、この静かな熱をひとりで抱きしめて、
私が鎧を脱ぐのを、ずっと、ずっと待っていてくれた。

愛は、ぐいぐい押し進める力じゃなくて、
「いいよ」と、受け取ることを自分に許してあげる力。

私のこわばっていた心が、
春の光みたいにゆっくりと溶け始めたのだった。



私が一晩感じたこの「熱」を、
男性という生き物は
どれほどの自制心で制御してきたのだろう。

彼は無邪気な私を横目に、
どれほどの理性で愛を繋ぎ止めていたのだろう。


夜更けの灯りの中で、言葉にならない温度─



雅歌が教える愛の形


かつて何度読んでも意味がわからなかった
旧約聖書の『ソロモンの雅歌』。

男女の喜びと身体性を率直に称えるその詩編が、今、
私の血肉となって響いている。

愛は強制でも、取引でも、支配でもない。
「死のように強い」結びつきでありながら、
相手を急かさない、受け取ることを許す力なのだ。


夫は神の似姿であり、代理人。
彼を通して、私はようやく知ってしまった。

「人を好きになったことがない」
と思い込んでいた私の心が、

愛される喜びという「熱」に侵されていることを。

 

愛される喜びを知った熱─



待てる人へ


あの夜、
私は「求められる側」でも
「試す側」でもなく、

ただ「待たれている側」
でいられる安心感を知った。


そして今、私もまた、
彼を待てる人になり始めている。

急かされない静けさの中で、
体のこわばりがほどけていく。


愛とは、押し進める力だけではない。
ただ、そこに在ることを許し、
受け取る勇気のことだった。  


この日から私は─
愛される喜びを知り、
自分も相手を慈しみながら
「待てる人」になり始めた。

私も待てる人になりたい─



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凪瀬 紬 | 観測記録作家 迷ったりこじらせたりしながら、それでも生存してきた記録です。 「もう少し読んでみたいな」と思ったら、気が向いたときにチップで応援してもらえたら嬉しいです。