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【回復の記録②】 待てる人だと知った日|支配しない愛

回復の記録集|鎧を脱ぎ、愛へ還るまで 2話目。

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静かな場所で、呼吸を整えてからお読みください。


生存のための戦い


彼と出会って約十年、結婚して約八年。

振り返ると、彼はいつも「急がない人」だった。

当時の私は、一人で誰も知らない田舎へ移住し、
孤独という名の戦場にいた。

在宅ワークの合間、週に一度だけ外へ出る。
それを私は「ジンカツ(人脈活動)」と呼んでいた。

それは単なる外出ではない。
縁もゆかりもない土地で生き抜くための、
必死のセーフティネット作りだった。


生存のための戦い


そんな中で彼と出会ったけれど、
本当にこの人でいいのか、私にはわからなかった。

私にとって、人間関係とは常に
「競争」であり「奪い合い」だったからだ。

誰かが「待っていてくれる」経験なんてなかった。

愛とは条件付きのもので、
近さは優劣で決まる。

そう信じて疑わなかった私は、
彼との時間に安らぎを感じながらも、
どこかで他の選択肢を探し続けていた。


静かな光


転機は、ある深夜の出来事だった。

ジンカツの流れで、知り合いの女性とバーへ行き、
気づけば深夜1時を回っていた。

彼女が週末だけ借りていた彼の部屋へ戻ると、
まだ灯りがついていた。


彼は、起きていた。


女性二人が自分を置いて遊び歩いていたというのに、
彼は拗ねるでもなく、責めるでもなく、ただそこにいた。

「先に寝ていればいいのに」という私の常識を、
彼の静かな佇まいが、音もなく崩していった。



「待つ」という行為には、
相手を思い通りに動かそうとする欲求が、ひとかけらも混ざっていない。

それは、相手の自由を奪わないまま、
ただ、その存在が戻ってくる場所を温めておくということ。

支配されることでしか繋がれないと思っていた私にとって、
深夜の灯りの中で私を待っていたその光は、
初めて触れる、「自由」という名の愛だった。


待つという才能


「待っている」という行為が、
こんなにも静かで、
こんなにも強いものだと知らなかった。

申し訳なさと、驚き。
そして、胸の奥からせり上がる得体の知れない安堵。

彼は何事もなかったように、私を家まで送ってくれた。

見返りを求めないその親切を、
当時の私はうまく受け取ることすらできなかったけれど、
何かが確かにほどけていくのを感じた。


支配からの解放

 
あの夜、私ははじめて気づいた。

「待てる人」は、相手を支配しない。
自分の感情で相手を縛らず、
奪わず、ただ存在を許容する。

そんな人は、私の知る戦場には一人もいなかった。

こんな人、他にいない

「この人と、生きていこう」

そう決めたのは、
初めて「待たれる」という経験をしたからだ。

奪い合わなくていい、戦わなくていい。

その安心感に触れたとき、
私は長年着込んできた重い鎧を、
ほんの少しだけ緩めることができた。 

鎧をゆるめた夜



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凪瀬 紬 | 観測記録作家 迷ったりこじらせたりしながら、それでも生存してきた記録です。 「もう少し読んでみたいな」と思ったら、気が向いたときにチップで応援してもらえたら嬉しいです。