「あの日の分岐点」をロードする:第1話:「ロード」した夜 【オートフィクション小説】
◆「ロード」した夜
この記事を読んでくださる皆様に、一つだけ告白しなければならないことがあります。
私は最近、自分の過去へ「タイムリープ」しています。
「普通のゲーマー」の言葉で表現するなら、それは「過去のセーブデータを強制的にロードされ、人生の分岐点をやり直させられる現象」に巻き込まれている、と言った方が正確かもしれません。
今までの人生に不満があるわけではありません。むしろ、愛する家族と過ごす「普通のパパ」としての日常は、確かに満たされています。
それなのに、なぜ私は、過去の自分を「ロード」してしまうのか。 私をあの日の分岐点へと引きずり込もうとする、この抗いがたい衝動の正体は何なのか。 正直なところ、私にも分からないのです。
◆娘の卒業と「卒業アルバム」
あれは、初めてその衝動が起きた日のことでした。
娘(長女)が小学校の卒業式でもらってきた卒業アルバム。娘と一緒にページをめくりながら、クラスメイトのことや、これまでの思い出話をしていました。
「~ちゃんは絵が上手だよね!」
「ほんとだね、~くんはこんなに大きくなったんだね!」
ついこの間までは、保育園に毎朝送り届けるたびに
「イヤ!いかないで!」と泣きながら私の足にしがみつき、保育園の先生にひっぺがされていた長女。
最近はニコニコしながら楽しそうに学校へ向かう姿も増え、これでやっと安心できると、少しホッとしたのも束の間。あっという間に小学校を卒業し、4月には中学生になる。湧き上がる様々な思い出と感情。
時間の流れが早すぎて、信じられない気持ち。
ここまで無事に育ってくれたと、誇りに思う気持ち。
もう幼く無邪気な日々は戻らないんだという、さびしい気持ち。
かけがえのない時間と引き換えに、
どこかに置いてきてしまった自分の時間。
いつの間に、こんなに白髪が増えたのだろうか。
世の中から置いて行かれているような不安。
そんな複雑な気持ちをめぐらせていた夜のことでした。
私は本棚の奥に自分自身の卒業アルバムがあることを思い出しました。
30年前の古い卒業アルバム。地元の友人たちとの思い出の写真、卒業文集。前回開いたのはいつなのか?思い出せません。
ページをめくると、小学生の私がニヤニヤと少し照れたような顔で笑っています。そして、私の卒業文集ページの「将来の夢」の欄には、こう書かれていました。
『将来の夢:ゲームデザイナー』

◆深夜のPC画面
……あれから数十年の時が経ちました。
私はゲームデザイナーにはなれませんでした。
社会の波に揉まれ、日々の生活に追われ、
夢はいつの間にか「普通のゲーマー」へと形を変えていました。
それでも、心のどこかでずっとくすぶっていたのかもしれません。
「創る人になりたい」という熱が。その熱に突き動かされるように、
私はひとり、PCの画面に向かっていました。
何時間が経過したでしょうか、画面に映っているのは今まさに初めて作ろうとしているゲーム「一刀流の流儀」の開発画面。
AI(Gemini)のチャットにゲーム構成を相談し、壁打ちをしながらプログラムを生成。そのプログラムを私が実際に動かしてテストをする。私はそれを何回、何十回と繰り返していました。
ふと我に返ると、私は私のことがおかしくてたまらなくなりました。今日の日中までは、私が今夜突然ゲームを作り出すなんて思いもしなかったからです。
お昼ご飯は何を作るとか、
夕飯の材料の買い出しは何時に行くとか、
明日は仕事で打ち合わせがあるから準備をしないととか、
いつも通り「普通の日常」を過ごしていたはずなのに、と。
そんなことを考えながらゲームのテストを繰り返しているうちに、
AIの利用枠がとうとう上限に達してしまいました。
ここから先は完全に私ひとり。
もう何にも頼れません。大枠は出来上がったのに、ゲームとして重要な部分の最後の仕上げが何度やってもうまく動きませんでした。

◆タイムリープ
開発画面には様々な英語のメッセージが飛び交っておりましたが、
私には何一つそれらの文字の意味が分かりません。
ただただ、AIに言われた通りに手を動かしてきただけなのですから。
私はただ、画面に映っている冷たい文字の並びを眺めていました。
ひとりでは、やはり何もできないのか……
私を動かす見えない「熱」に動かされ、
そして今は見えない「壁」の存在を目の当たりにするようでした。
手は完全に止まり、時計の針は午前2時を回ろうとしていました。
「……私は何をやっているのだろう」
疲労と眠気がピークに達し、私はキーボードの上に手を置いたまま、深く、重い瞬きをしました。
目を閉じた暗闇の中で、PCの冷却ファンの「フォー……」という無機質な音だけが、私の体の中で響いていました。
「フォー……」
「……」
「……~じゃないか?」
「……!?」
……暗闇と音の中で、かすかに声が聞こえた気がしました。
次の瞬間、私は「あの日」の光景を見ていました。

◆あの日の分岐点
「~高校がいいんじゃないか?」
それは父の声でした。
淡い水色のカーペット。
真四角の古いテレビ。
木製のガラス戸棚。
その上には熱帯魚の水槽。
白のこたつテーブルの上に、
母がよく作ってくれた玉ねぎとコーンのスープ。
手元には教科書やノートやペンが散乱し、
私は中学校の緑色のジャージを着ていました。
向かいには仕事帰りの、まだ若々しい頃の父が座り、
奥のキッチンでは母が夕飯を作っていました。
……その光景は、私が中学3年生の頃の実家のリビングでした。
私は宿題をしながら、進路について相談をしていました。

「だから、お前は絵を描いたりゲームしたりするのが好きなんだから、
こっちの高校に進んで、デザイナーになったらいいんじゃないか?」
父は私にこう言いました。
いつの間にか忘れていた記憶。
私が『ゲームデザイナー』になれたかもしれない、最初の分岐点。
私は、あの日を「ロード」してしまったのです。
つづく。
◆あとがき
【 伝えたいこと 】
今回、オートフィクション小説の初めての記事を投稿しました。オートフィクションとは、
作者自身の実体験や私生活をベースにしながらも、フィクション(虚構)の演出や脚色を大胆に織り交ぜる文学手法 のこと、らしいです。
今回の記事は、このような構成になっております。
・タイムリープ自体はフィクション(虚構)
・タイムリープした先(回想・記憶)は実体験
・それ以外も実体験
ただ、私は小説なんて一度も書いたことはありません!オートフィクションという単語すら知りませんでしたし、この小説をスタートすることを悩みに悩み、継続できるのか今でも悩んでおります。でも決めました。
この小説を通じて、
人生に悩み、苦しむ方に、これだけを伝えたい。
人生のどんな選択や苦悩も、無駄なことなど一つもない。
「好きなこと」は、何歳になっても「好きなこと」。
「好きなこと」で「好きな人」たちと繋がることが、
「人生を楽しく」する。
「人生を楽しく」生きることが、最も幸せな生き方。
私は、おそらく人生の中間地点(折り返し)に立っております。
これらの『伝えたいこと』は、それなりに「普通の人生」を人並みに生きてきた経験で感じてきたことです。残りの半分の人生の中で、これらのエピソードを発信し、証明したい。そう思っております。
とまぁ、また偉そうに語っちゃいましたが…
noteも小説もすべてが素人なので、
どうか温かい目で見守ってください!!!
【 はじめましての方へ 】

はじめまして。ANLY(アンリー)と申します。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。「クリエイターになれなかった」私は、毎日普通のパパや普通の会社員をやっております。
このオートフィクション小説、「あの日の分岐点」をロードする では、私がこれまで歩んだ人生の様々な場面にタイムリープし、クリエイターへの道を選ばなかった「あの日の分岐点」を紹介しながら、「もしもあの日、クリエイターの道を選んでいたら?」というもう一つのANLYの人生を綴ります。
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