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美のカリスマ(自称)、中華街の激痛に沈む【真面目マッサージ】


百貨店、21時「もう限界だわ」

閉店を告げる「別れのワルツ」が、大理石のフロアに優雅に響き渡る。 煌びやかなシャンデリアの下、私は最後のお客様をエレベーターホールまでお見送りし、深々と頭を下げた。 「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」 そのお辞儀の姿勢のまま、エレベーターの扉が完全に閉まるまでの数秒間、私は完璧な「美のカリスマ」の彫刻であり続けた。

45歳、大手外資系コスメブランドのトップ・ビューティーコンサルタント。 私の職場は、この百貨店の1階、化粧品売り場という名の戦場だ。 常に最新のメイクを施し、一糸乱れぬ黒の制服に身を包み、7センチのピンヒールで8時間以上立ち続ける。 お客様に夢を売る仕事。だからこそ、疲れた顔など許されない。 「あら、お肌の調子が悪そうね」なんて思われたら、その時点でプロ失格なのだ。

扉が閉まり、バックヤードへ戻る瞬間。 ふっ、と体から魂が抜け落ちる。 「……痛い」 誰にも聞こえない声で、足元に向かって呪詛を吐く。 私の足は今、限界を超えていた。 朝にはすんなりと入ったはずのパンプスが、今はまるで万力(まんりき)のように足を締め付けている。 ふくらはぎはパンパンに膨れ上がり、皮膚が張り裂けそうだ。足首のくびれなんて、もうどこにもない。 血流が完全に止まり、足先は氷のように冷たいのに、鬱血した血管だけがドクンドクンと熱を持って脈打っている。

ロッカールームで私服に着替える。 スニーカーに足を入れようとするが、浮腫みすぎて踵が入らない。 無理やり足を押し込みながら、鏡を見る。 そこには、法令線がくっきりと影を落とし、目が笑っていない女がいた。 「顔が……下がってる」 一日中、貼り付けたような「聖母の微笑み」をキープし続けた代償だ。 頬の筋肉はこわばり、噛み締めた奥歯のせいでエラが張っている。 美意識の高い私が、一番許せない「疲れたおばさん」の顔がそこにあった。

このまま家に帰って、メディキュットを履いて泥のように眠る? いや、そんな生ぬるいケアでは、この岩のような足と、能面のような顔は戻らない。 私はスマホを取り出し、美しいスパ……ではなく、雑居ビルの奥にある、あのお店の番号をプッシュした。 今の私に必要なのは、癒やしではない。「修理」だ。

「鬼の手」を持つ達人の陳さん

タクシーを降りたのは、華やかな百貨店とは対極にある、ディープな繁華街の裏路地。 赤いネオンが怪しく光る雑居ビルの3階。 エレベーターはなく、重い足を引きずって階段を上る。 扉を開けると、そこには洗練されたアロマの香りではなく、強力な漢方薬と湿布、そして独特のオイルの匂いが充満していた。

「いらっしゃーい。今日、遅いね」 出迎えてくれたのは、ヨレヨレのポロシャツを着た、小太りの中国人男性。 この店の主、陳(チン)さんだ。 見た目はただの親戚のおじさんだが、その腕は業界でも噂になるほどの「神の手」、いや「鬼の手」を持つ達人である。

「陳さん、今日はもう……全部ダメ。足も顔も、取り替えてほしいくらい」 私が弱音を吐けるのは、世界でここだけかもしれない。 陳さんは私の顔をジロリと見ると、鼻で笑った。 「あー、顔、死んでるね。足も象さんみたいよ。こっち寝て」

案内されたのは、飾り気のないパイプベッド。 タオルも高級今治タオルではなく、使い込まれた茶色いタオルだ。 でも、今の私にはこの飾らなさが心地いい。 着替えを済ませ、仰向けになる。 「まずは足からね。悪いもの、全部出すよ」 陳さんが、洗面器に入った熱々のお湯を持ってきた。 漢方の生薬が溶け込んだドス黒いお湯に、足を浸す。 「あつっ……!」 「熱くないと効かないよ」 ジンジンと痺れるような熱さが、冷え切った末端の血管を無理やりこじ開けていく。 足湯だけで、すでに戦いは始まっていた。

足裏の砂利をジョリジョリされる

「はい、足出すよー」 陳さんは、私の右足を自分の太ももの上に乗せると、たっぷりのクリームを塗りたくった。 そして、何の前触れもなく、拳の関節(第二関節)を突き出し、私の足の裏の真ん中へねじ込んだ。

「ぎゃっ!!!」 思わず絶叫しそうになるのを、タオルを噛んで堪える。 「痛い? 痛いねー。ここ、腎臓。疲れ溜まりすぎ」 陳さんの関節は、まるで削岩機だ。 私の足の裏にある「湧泉(ゆうせん)」というツボを、体重を乗せてゴリゴリとえぐってくる。 「ジョリジョリ、ゴリゴリ」 耳を疑うような音が、足の裏から響いてくる。 骨の音ではない。老廃物の塊だ。 立ち仕事で重力に負け、足の裏に溜まりに溜まった尿酸や乳酸の結晶が、陳さんの拳によって粉砕されている音なのだ。

「ううぅ……陳さん、そこ、折れます、足が折れます……!」 「折れないよ。ここ流さないと、水が腐るよ」 陳さんは容赦しない。 完璧主義の私が、必死に作り上げてきた「我慢の壁」を、いとも簡単に破壊してくる。 土踏まずの内側、胃腸の反射区。 そこを親指の腹で鋭く切り裂くようにスライドさせる。 まるで、硬くなったパンの耳をナイフで切り落とすような感覚。 痛い。涙が出るほど痛い。 けれど、その激痛が通り過ぎた後、足の裏がカッと熱くなり、何かがスゥーッと通っていくのが分かる。

次は指先。 親指は「脳」、人差し指と中指は「目」の反射区だ。 陳さんは私の足の指を一本一本、根本から引っこ抜く勢いで引っ張り、指の腹をしごく。 「目も疲れてるねー。スマホ見過ぎ、パソコン見過ぎ。頭カチカチよ」 指先を強烈に挟まれるたびに、頭のてっぺんに雷が落ちたような衝撃が走る。 「痛いです! 痛いですけど……目が覚めます!」 「そう、覚醒するね。足の裏は、体の地図だから」

そして、最大の難関、ふくらはぎへ。 陳さんは、パンパンに張った私のふくらはぎを、両手で雑巾を絞るように掴んだ。 「うわ、これ板みたいね。筋肉どこいった?」 「固まって……埋もれてます……」 「出すよー、筋肉」 グググッ!! 陳さんの親指が、骨と筋肉の癒着部分に強引に入り込む。 ふくらはぎの裏側、中心のラインを、膝裏のリンパ節に向かって力任せに押し上げる。 それはマッサージというより、チューブに残った歯磨き粉を、定規を使って無理やり押し出す作業に似ていた。 「んぐぐぐ……!」 声にならない呻き声。 けれど、押し流されたそばから、ドクドクと新しい血液が流れ込んでくる。 「ほら、足が軽くなったでしょ。もう片方もやるよー」 左足が終わる頃には、私は痛みで汗だくになっていたが、足の感覚は劇的に変わっていた。 重りが外れたような軽さではない。足が消えてしまったかのような、無重力の感覚だ。

これは骨格矯正なのか...?

「はい、次、顔ね。その怖い仮面、剥がすよ」 陳さんは新しいタオルで手を拭くと、私の頭側に回った。 美容部員として、私はフェイシャルマッサージのプロでもある。 お客様には、羽毛で撫でるようなソフトタッチで、リンパを優しく流すのが常識だ。 しかし、陳さんのフェイシャルは違う。 これは「整顔」であり、「骨格矯正」であり、もっと言えば「工事」だ。

「噛み締めすぎ。ここ、石が入ってる」 陳さんの指が、私のエラの部分、咬筋(こうきん)を捉えた。 そして、グリリリッ!! と音を立てて回した。 「痛ーーーっ!!!」 今度こそ、声が出た。 「痛いねー。我慢ばっかりしてるから、ここがロックされてるよ。もっと口開けて、力抜いて」 陳さんは、私の頬骨の下に親指を潜り込ませ、グイッと持ち上げた。 頬骨剥がし。 法令線の原因となる、下がった頬の肉を、骨ごと元の位置に戻すような荒療治だ。 ミシミシと頭蓋骨が鳴る。 「顔が……顔が壊れます……!」 「壊れない。元に戻してるだけ。あんたの顔、もっと小さいよ」

お客様に向け続けてきた笑顔。 「いらっしゃいませ」「申し訳ございません」 その言葉を発するたびに緊張させてきた表情筋が、陳さんの指によって強制的にリセットされていく。 目の周りの眼輪筋(がんりんきん)。 眉間の皺眉筋(しゅうびきん)。 陳さんの指先(第二関節)が、眉毛の上の凝りをゴリゴリと削り取る。 目の奥に溜まっていた老廃物が、涙と一緒に押し出される。 「うぅ……痛い……でも、そこ……」 痛みの奥にある、「そこを触ってほしかった」という核心を突かれる快感。 自分では絶対に押せない強さ。 美意識の高い私が、顔を歪めて痛みに耐える姿なんて、誰にも見せられない。 でも、陳さんの前では、私はただの「疲れた人間」でいられる。 そのことが、何よりも心を軽くしてくれた。

「最後、頭皮も剥がすよ」 陳さんは私の髪をガシッと掴み、頭皮を頭蓋骨から引き剥がすように動かした。 「頭と顔は一枚の皮ね。頭が下がれば顔も下がる。全部上げるよ!」 バリバリバリ! 頭皮の下で癒着が剥がれる音がする。 痛いけれど、視界がパッと明るくなるのが分かる。 下がっていた目尻が、頬が、口角が、見えない糸で引っ張り上げられるように、あるべき位置へと帰っていく。

本来の美しさってこれかも

「はい、終わり。生きてるか?」 陳さんのぶっきらぼうな声で、私は現実に戻ってきた。 全身が熱い。サウナに入った後のように、体中の血が巡り、皮膚が呼吸しているのを感じる。 ゆっくりと体を起こし、恐る恐る自分の足を見る。 「……え?」 そこには、朝見た時よりも一回り、いや二回りは細くなった足首があった。 埋もれていたくるぶしが、くっきりと顔を出している。 ふくらはぎのあの不快な張りは消え、スッキリとした曲線が戻っていた。

そして、鏡を見る。 「これが、私……?」 ノーメイクなのに、肌が内側から発光しているように白い。 目はパッチリと開き、白目が青白く澄んでいる。 何より、頬の位置が高い。 法令線が薄くなり、フェイスラインがカミソリのように鋭角に引き締まっている。 作り笑いではない、自然な笑みが、勝手にこぼれた。 「陳さん……すごい。魔法みたい」 「魔法じゃないよ。あんたの体が、自分で治したんだよ。俺は手伝っただけ」 陳さんはニカッと笑い、冷たいお茶を出してくれた。

靴を履く。 来る時は踵が入らなかったスニーカーが、今はブカブカだ。 靴紐をきつく締め直さなければならないほど、足の甲の厚みが減っている。 「ありがとうございます。また、明日から頑張れます」 「頑張りすぎないでいいよ。また詰まったら、いつでも流してやるから」

雑居ビルを出ると、夜風が火照った頬に心地いい。 足取りは驚くほど軽い。 まるで、足の裏にバネが入ったかのように、地面を蹴るたびに体が前に進む。 ショーウィンドウに映る自分の姿を見る。 背筋が伸び、顎を引き、颯爽と歩くその姿は、百貨店の照明の下にいる時よりも、ずっと生き生きとして美しかった。

本当の美しさとは、高いファンデーションで塗り固めるものではない。 滞りのない、健やかな血流と、柔らかい筋肉。 そして何より、痛みを乗り越えて「自分」を取り戻した、この清々しい心の中に宿るのだ。

明日、またあの戦場へ戻ろう。 今度は、作り物の笑顔ではなく、心からの笑顔で、お客様をお迎えできる気がする。 陳さんという、心強い修理工がついているのだから、私は何度でも、美しく蘇ることができる。

ありがとう、陳さん。 その無骨で温かい「鬼の手」に、最高の感謝を込めて。

😴他のマッサージのお話😴

これまで自分が受けてきたマッサージなどのリラクゼーション系の施術をヒントに、深いリラックス効果を得られるような文章を目指していけたらと思っています。

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真面目マッサージで、あなたの眠りが良いものになりますように…😴

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