末端冷え性の私が近所のおばちゃんの「角質削り」と「よもぎ蒸し」でポカポカになった話【真面目マッサージ】
私は冷凍マグロ?
私の職業は、企業の受付兼秘書。
聞こえはいいですが、実態は「エントランスに飾られた冷凍マグロ」です。
四十一歳。
夏でも冷房がガンガンに効いたロビーで、七センチのヒールを履いて直立不動。
「会社の顔」として、どんなに寒くても、足の指がヒールの中で悲鳴を上げていても、口角をミリ単位で調整して微笑み続けます。
おかげで体は芯まで冷え切り、足の裏は感覚がなく、外反母趾気味の親指はくの字に曲がったまま固まっています。
家に帰っても「見られている」緊張感が抜けず、心まで冷え切ったまま。
「もう、格式高いサロンとか疲れる……」。
そんな私が癒やしを求めて辿り着いたのは、オシャレなスパではなく、近所の団地で噂の「おばちゃんがやってるホームサロン」でした。
実家みたいなサロン
「ピンポーン」とチャイムを鳴らすと、間髪入れずに「はーい! 開いてるわよー!」と野太い声が聞こえました。
ドアを開けると、そこは完全に「友達の実家」。
玄関には生活感のある靴が並び、奥からは煮物のいい匂いが漂っています。
「あらー! いらっしゃい! 寒かったでしょ、顔が白紙みたいよ!」。
現れたのは、サロンのエプロン……ではなく、割烹着のようなチュニックを着た、ふくよかなおばちゃん、良子(よしこ)さん(推定60代)。
「えっ、あ、予約した……」。
「知ってるわよ! さあ入った入った! 今、お茶入れるから!」。
優雅なBGMもアロマの香りもありません。
あるのは、良子さんの圧倒的なパワーと、実家の匂い。
でも、その飾らない空気が、張り詰めていた私の緊張の糸を、パチンと切ってくれたのです。
【フットバス】足湯に浸かりながらの漫才トーク
施術部屋(というか、リビングの一角)に通され、まずは足湯です。
「はい、ドボンして。熱めにしてあるから」。
良子さんが用意してくれた桶には、ハーブとお酢が入ったお湯が波々と張られていました。
恐る恐る足を浸けると、ジンジンと痺れるような熱さが襲ってきます。
「ひゃっ、熱い!」
「熱くないわよ! あんたの足が冷たすぎるのよ! 何これ、市場の冷凍魚? 叩いたらカチーンっていい音しそうね」。
良子さんは私の足首を掴んで、ペチペチと叩きながら笑います。
「仕事、受付だっけ? 綺麗なお姉さんも楽じゃないわねぇ。こんな高いヒール履いて、足の指が『助けてー』って泣いてるじゃない」。
「……ふふ、そうなんです。毎日ペンギンみたいに歩いてて」。
「ペンギンならまだ可愛げがあるわよ。この足裏、コンクリートみたいだもん。これじゃ彼氏に蹴り入れたら凶器よ、凶器」。
「彼氏いないです……」。
「あらやだ、ごめんね! でも大丈夫、今日でフワフワの足にして、男の一人や二人、足の裏で転がせるようにしてあげるから!」。
良子さんの口は止まりません。
でも、その手は優しく私のアキレス腱をさすり、お湯をかけ続けてくれます。
不思議なことに、この遠慮のないトークが心地いい。
会社では「お綺麗な方ですね」「恐れ入ります」という定型文しか話さない私にとって、この土足で踏み込んでくる感じが、逆に新鮮で温かいのです。
【角質ケア・フットケア】雪のように舞う「私のアレ」
足がふやけたところで、いよいよ「角質ケア」です。
ヒールだこでガチガチになった私のかかとや、親指の付け根。
良子さんは、職人のような目つきで専用のパドル(やすり)を構えました。
「さあ、工事始めるわよー。この厚底ブーツみたいな皮、全部剥いじゃうから」。
ジャリッ、ジャリッ、ジャリッ。
リビングに、小気味よい音が響き渡ります。
「うわっ、すごい音……」。
「いい音でしょ? ほら見て、粉雪が舞ってるわよ。ロマンチックねぇ」。
良子さんが指差す先には、私の足から削ぎ落とされた白い粉が、ハラハラと大量に落ちていました。
「これ、全部私の……?」
「そうよ。あんたが毎日、寒さとヒールの痛みに耐えて作った『鎧(よろい)』よ。頑張った証拠だけど、もう家では脱ぎなさい」。
良子さんの手つきは、豪快に見えて繊細です。
粗い面のやすりで大きく削った後は、細かい面のやすりに持ち替え、皮膚の表面を磨き上げていきます。
特に、外反母趾気味で変形してしまった親指の側面。
ここは靴擦れで皮膚が厚くなり、黄色く変色していました。
「ここ、痛かったでしょう。骨が当たって泣いてるわ」。
良子さんは、親指のカーブに合わせて、やすりを丸く動かします。
ジョリジョリという感触が、次第にショリショリ、そしてサラサラへと変わっていきます。
痛みは全くありません。
むしろ、不要なものが削ぎ落とされていく快感で、背筋がゾクゾクします。
「はい、触ってみて」。
言われてかかとに触れると、驚きました。
「……えっ、柔らかい! つきたてのお餅みたい!」。
「でしょ? あんたの足、本来はこんなに可愛いのよ。ガサガサのストッキング殺しは卒業ね」。
【リフレクソロジー】ふくらはぎの張りはおしゃべりで流す
角質ケアでツルツルになった足に、今度はたっぷりのクリームを塗ってマッサージです。
全身マッサージの場合は脚から行うのが鉄則ですが、フットケアの流れでも、やはり膝下までのトリートメントは欠かせません。
良子さんの手が、私の足裏の土踏まずをググッと押し込みます。
「いっ、痛い!」
「はい、胃が疲れてるー。お昼ご飯、早食いしてるでしょ?」
「……5分で食べてます」。
「やっぱりね。噛まなきゃダメよ。はい、次はここ、目のツボ。パソコン見過ぎ!」。
良子さんの親指が、私の足裏のツボを的確に捉え、ゴリゴリと刺激します。
痛い。
でも、その痛みと一緒に、体の中に溜まっていたヘドロが流れ出すようです。
そして、ヒールでパンパンに張った「前もも(大腿四頭筋)」と「すね(前脛骨筋)」。
良子さんは、握り拳の関節を使って、すねの筋肉を下から上へと擦り上げます。
「ここ、骨じゃないわよ。全部コリよ。カチカチじゃないの」。
「痛いです、良子さん、そこ骨だと思ってました」。
「違うわよー。あんたが『良い姿勢』しすぎなの。もっとダラッとしなさいよ」。
良子さんの手は温かく、力強い。
常に膝を伸ばして立っていたせいで、鉄筋のようになっていた私の脚。
それが、良子さんの手で揉まれ、叩かれ、流されるうちに、熱を持った肉の塊へと戻っていきます。
「はい、左足終わり。見てごらん、色が違うでしょ」。
見ると、施術した左足だけが、血色が良く、一回り細くなっています。
「すごい……生き返ったみたい」。
「死んでたのよ、さっきまで。さあ、右足も生き返らせるわよ!」。
【よもぎ蒸し】マントの中は私だけのサウナ
足元のケアが終わると、いよいよメインイベントの「よもぎ蒸し」です。
部屋の奥に用意されたのは、真ん中に穴の空いた特別な椅子と、その下でグツグツと煮えたぎる土鍋。
部屋中に、よもぎと漢方薬草の、土っぽくて懐かしい香りが充満しています。
「はい、裸になってこのマント被って。てるてる坊主になるのよ」。
渡されたのは、厚手の防水マント。
下着もすべて脱ぎ、マント一枚になって椅子に座ります。
「熱かったら言ってね。でも、あんたは冷えの塊だから、最初はぬるく感じるかもね」。
座った瞬間、椅子の穴から、濃厚な蒸気が立ち昇ってきました。
「……んっ!」
直撃です。
デリケートゾーンの粘膜に、熱い蒸気がダイレクトに当たります。
普段、絶対に温めることのない場所。
そこから、熱が体内に侵入してきます。
「どう? お股(また)がビックリしてるでしょ?」
「は、はい。すごいです。なんか、内臓に直接アクセスされてる感じが……」。
「そうそう、それよ! 子宮を温めないと、女は枯れちゃうからね」。
最初の5分は、ただ温かいだけでした。
しかし、10分を過ぎた頃から、異変が起きました。
体の芯、お腹の奥底にある「冷えの塊」が、蒸気の熱に反応して溶け出し、全身に熱湯を送り込み始めたのです。
じわじわじわ……。
背中から、額から、脇から。
普段、冷房の中で生活していて汗などかいたことのない私が、滝のような汗をかき始めました。
「おお、出てきた出てきた! いい汗よー。デトックス、デトックス!」。
良子さんが、冷たいお水を差し出してくれます。
「飲みなさい。出して、入れて、循環させるのよ」。
マントの中は、私だけのプライベートサウナ。
蒸気は容赦なく全身を包み込みます。
顔もマントの中に入れて深呼吸すると、よもぎの香りが鼻の粘膜から脳へと抜け、頭の中のモヤモヤまで蒸発させていきます。
「会社での『作り笑顔』も、全部溶かして流しちゃいなさい」。
良子さんの声が、蒸気の向こうで優しく響きます。
その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた何かが切れました。
汗と一緒に、目からも熱いものが溢れ出してきました。
誰にも見せない涙。
でも、汗と混じって分からないから、私はそのまま泣くことにしました。
冷え切っていた私の体が、心臓の鼓動に合わせてドクンドクンと脈打ち、生きていることを主張しています。
私は冷凍マグロじゃない。
温かい血の通った人間なんだ。
第六章:【発汗と浄化】脱皮したての赤ちゃん肌
「はい、終了ー! よく頑張ったわねぇ!」。
40分後。
マントを脱ぐと、床には水たまりができるほどの汗が落ちていました。
タオルで体を拭きながら、自分の肌を見て驚愕しました。
「……白い!」
くすんでいた肌が、蒸し上がった肉まんのように白く、ツヤツヤに輝いています。
触れると、吸い付くようなモチモチ感。
足の裏も、角質ケアのおかげでピンク色になり、ふっくらとしています。
着替えを済ませてリビングに戻ると、良子さんが特製の梅干し入り番茶を用意してくれていました。
「どう? スッキリした?」
「はい……なんか、体重が5キロくらい減った気分です。体もポカポカしてて、まだ熱いくらい」。
「それが本来のあんたよ。冷たいなんて似合わないわ。あんたは太陽みたいに熱い女なんだから!」。
良子さんはガハハと笑い、私の背中をバンと叩きました。
「また冷えたら、いつでも来なさい。私が何度でも溶かしてあげるから」。
その言葉が、どんな高級美容液よりも心に染み渡りました。
ポカポカお腹に
サロンからの帰り道。
夜風は冷たいはずなのに、私の体はコートがいらないほど温かい。
お腹の中心に、小さな太陽が宿っているみたいだ。
ヒールを履いた足も、角質という鎧を脱いだおかげか、地面の感触が柔らかく感じる。
「明日の朝、エントランスに立つのが楽しみだな」。
作り笑顔じゃない、体温の乗った本当の笑顔で「おはようございます」が言えそうだ。
ポケットの中の温かい缶コーヒーを握りしめ、私は軽い足取りで家路を急いだ。
近いうちにまた、あのおせっかいで温かい「実家」に帰ろうと思う。
😴他のマッサージのお話😴
これまで自分が受けてきたマッサージなどのリラクゼーション系の施術をヒントに、深いリラックス効果を得られるような文章を目指していけたらと思っています。
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真面目マッサージで、あなたの眠りが良いものになりますように…😴
