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SEをやっているアラフォー女がドライヘッドスパで強制終了した話【真面目マッサージ】


バグだらけの肉体

深夜25時。 オフィスの照明は半分消えているが、私のデスク周りだけはモニターの明かりで昼間のように白い。 41歳、システムエンジニア。 来週に控えた大規模なシステムリリースのため、ここ2週間は「終電で帰って始発で来る」ような生活が続いている。 画面に並ぶ無数のコード。それを目で追うたびに、眼球の裏側を細い針で刺されるような鋭い痛みが走る。

「……また、エラーか」 独り言の声すら、かすれて出ない。 1日12時間以上、ブルーライトを浴び続けている私の脳は、完全に過覚醒状態だ。 合理的で真面目な性格が災いして、「ここまで終わらせないと気持ち悪い」と自分を追い込んでしまう。 その代償として、首と肩はまるで鉄板が入ったように固まり、頭痛薬なしではモニターを見ることさえ辛い状態だった。 典型的な巻き肩。胸が縮こまり、呼吸が浅い。 体中から「システムエラー」のアラートが鳴り響いているのに、私はそれを無視してキーボードを叩き続けていた。

「もう、限界……」 ふと、視界がぐらりと歪んだ。 これ以上は効率が落ちるだけだ。私は合理的な判断を下し、タクシーを呼んだ。 けれど、家に帰っても眠れる気がしない。脳が興奮して、瞼を閉じてもコードが流れてくるのだ。 今の私に必要なのは、ただの睡眠ではない。 この暴走するCPU(脳)を、物理的に鎮めてくれる強力な強制終了コマンドだ。

私は揺れるタクシーの中で、以前同僚が「あそこに行くと、気絶するように落ちるよ」と話していた、あるサロンの予約ボタンを押した。

微笑みの国のセラピスト

翌日の夕方、私は束の間の休息時間を捻出して、その店に向かった。 雑居ビルの一角。扉を開けると、強烈な、しかしどこか懐かしいハーブとバームの香りが鼻孔を突いた。 「サワディーカー! いらっしゃいませー」 出迎えてくれたのは、小柄だががっしりとした体格の、ベテランの風格漂うタイ人女性、「ペン」さんだった。 日焼けした肌に、目尻の笑い皺がチャーミングな彼女。 しかし、私の顔を見た瞬間、その笑顔がスッと真剣なものに変わった。

「お姉さん、顔色が土色だよ。目、真っ赤。これじゃロボットみたいね」 図星だった。感情を殺して働いていた私は、まさにロボットそのものだっただろう。 「今日は、頭と首、重点的にやりましょう。私に任せて」 ペンさんの言葉には、有無を言わせない母のような説得力があった。 私は促されるまま、ゆったりとした施術着に着替え、薄暗い個室のベッドに横たわった。

「まずは、この冷たいバーム、首に塗るね。スースーして気持ちいいよ」 彼女の指が、私の首筋に触れた。 ひやりとした感触と共に、メンソールの清涼感が皮膚から筋肉へと浸透していく。 それは、熱を持ちすぎていた私の首の神経を、瞬時にクールダウンさせてくれるようだった。

首のコリを砕く指

「うわー、これ、硬いねえ。石が入ってるみたい」 ペンさんは、私の首と肩の境目を触りながら、呆れたように笑った。 SE特有の、モニターに顔を近づける姿勢が生み出す、首の付け根の強烈な凝り。 そこに、彼女の親指がグサリと突き刺さった。

「……っぐ!」 思わず声が漏れる。痛い。間違いなく痛い。 けれど、それは不快な痛みではなく、「そこを開通させないと血が通わない」という、急所の痛みだった。 ペンさんの指は、躊躇がない。 凝りの中心(トリガーポイント)を正確に捉え、ミリ単位で圧をかけながら、硬くなった筋繊維をゴリゴリとほぐしていく。 「痛い? でも、これ取らないと、頭痛治らないよー」 「は、はい……お願いします……」 合理的な私は知っている。この痛みの先には、必ず緩和があることを。

彼女は、私の巻き肩を矯正するために、肩の前面、鎖骨の下あたり(大胸筋)にも容赦なくアプローチしてきた。 縮こまっていた胸の筋肉が、強い圧で引き伸ばされる。 「お姉さん、息止まってるよ。吐いてー、ふーっ」 言われるがままに息を吐くと、バキバキと音を立てて肩がベッドに沈んでいく。 まるで、錆びついた蝶番(ちょうつがい)に油を差して、無理やり開いたかのような感覚。 けれど、その強引さが今の私には心地いい。 中途半端な優しさでは、この頑固な鎧は脱げないのだから。

首の横の筋肉(胸鎖乳突筋)を、ペンさんの指と手のひらで挟むように揉みほぐされる。 そこは、眼精疲労と直結している場所だ。 揉まれるたびに、目の奥のズキズキとした痛みが、じわじわと散らされていくのが分かる。 「あぁ……血が、巡り始めた……」 頭部への血流が再開し、冷え切っていた顔がポッポと熱くなってくる。

ひたすら気持ちいいドライヘッドスパ

「はい、首軽くなったね。次、メインの頭いくよー」 ペンさんは、蒸しタオルで私の目元を覆った。 視界が闇に閉ざされ、じわりとした温かさが眼球を包み込む。 「あー……」 思わずため息が出る。酷使した目が、熱によって癒やされていく。

そして、ドライヘッドスパが始まった。 ペンさんの指は、大きく、肉厚で、驚くほど温かい。 まずは生え際から頭頂部に向かって、頭皮全体を大きく動かすように揉み上げられる。 「頭の皮、硬いねえ。これじゃ脳みそ、窮屈でしょ」 彼女の言う通りだ。私の頭皮は、ヘルメットのように頭蓋骨に張り付いていた。 それを、ペンさんの指が「メリメリ」と剥がしていくような感覚。 痛気持ちいい刺激が、頭全体に響き渡る。

ここから、私の中での「戦い」が始まった。 これほど気持ちいいのだ。寝てしまったらもったいない。 システムエンジニアとしての貧乏性が顔を出す。 「この手技のプロセスを記憶したい」「どのツボがどう効いているのか分析したい」 そんな理性が、必死に意識を繋ぎ止めようとする。

けれど、ペンさんの技術は、そんな私の理性を嘲笑うかのように巧みだった。 こめかみを、ゆっくりとした円運動で圧迫される。 目の疲れに効く「太陽」というツボだ。 ズーンと響く快感が、脳の芯を揺らす。 (……あ、これ、やばい。気持ちよすぎる……) 意識の解像度が、少しずつ下がっていく。

「ここ、目の疲れ取れるよー」 ペンさんは、後頭部の窪み(天柱)に親指をぐっと潜り込ませ、上へと持ち上げた。 その瞬間、目の裏側に溜まっていた泥のような疲労が、スッと消え去るような感覚。 視神経のスイッチが強制的にオフにされる。

(だめだ、寝ちゃダメだ。あと30分もあるのに……今の感覚を、覚えておかないと……) 私は必死に、ペンさんの指の動きを追おうとする。 しかし、彼女のリズムは一定ではない。 時に力強く、時に羽のように優しく。その予測不能な揺らぎが、私の分析思考を停止させる。 頭皮をカトル(カチューシャ)のように掴まれ、頭蓋骨を引き上げられる。 脳みそがふわふわと浮き上がるような浮遊感。

「お姉さん、もう考え事しないの。頭、空っぽにして」 耳元で囁かれる、片言の日本語。それが呪文のように響く。 (……空っぽに……変数の宣言も、ループ処理も……もう、いいか……) 論理的思考が崩壊していく。 目の前の暗闇の中に、色とりどりの幾何学模様が浮かんで消える。 それは、バグだらけのコードではなく、ただ美しいだけのスクリーンセーバーのようだった。

「……んぅ……」 私の口から、意味のない寝息のような音が漏れる。 抗うことをやめた瞬間、私は深い、底なしの沼へと落ちていった。 それは「気絶」に近い、あまりにも幸福な敗北だった。

再起動後のクリアな世界

「……はい、おしまいですよー。お姉さん、起きてー」

遠くから聞こえる声で、私はハッと意識を取り戻した。 「えっ……? もう終わりですか?」 体感時間は5分程度だった。しかし、時計を見るとしっかりと60分が経過していた。 「ふふふ、お姉さん、いびきかいて寝てたよ。気持ちよかったでしょ?」 ペンさんは悪戯っぽく笑いながら、私の背中をポンポンと叩いた。 恥ずかしさよりも先に、体の変化に驚愕する。

目を開けると、視界が恐ろしくクリアだった。 いつもなら霞んで見える部屋の隅のホコリまでが、ハイビジョン映像のように鮮明に見える。 「目が……軽い。頭痛が、ない」 頭を振ってみても、あの不快な重みは微塵もない。 首を回すと、ゴリゴリという音が消え、驚くほど滑らかに動く。 肩の位置が下がり、胸が開いているおかげで、呼吸が足の先まで届くほど深い。

「すごい……本当に、再起動したみたい」 「仕事大事だけど、体もっと大事ね。またガチガチになる前に来てね」 ペンさんは温かいハーブティーを渡してくれた。 バタフライピーの鮮やかな青色が、今の私の澄み切った視界に美しく映える。

店を出ると、夜風が心地よかった。 あれほど嫌だった明日の仕事が、不思議と怖くない。 今のこのクリアな脳なら、あのバグもきっと解決できる。そんな根拠のない自信さえ湧いてくる。 合理的な私が、理屈抜きで「大丈夫」と思える感覚。

「今日は、帰って泥のように眠ろう」 私はスマホを見ることなく、ポケットにしまった。 今のこの静寂な脳内を、もうしばらく誰にも邪魔されたくないから。

ありがとう、ペンさん。 その強くて温かい指が、私のバグだらけの心身を、完璧にデバッグしてくれました。

おやすみなさい。 明日の朝、モニターの前に座るのが、少しだけ楽しみになるような、そんな予感を抱いて。

😴他のマッサージのお話😴

これまで自分が受けてきたマッサージなどのリラクゼーション系の施術をヒントに、深いリラックス効果を得られるような文章を目指していけたらと思っています。

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真面目マッサージで、あなたの眠りが良いものになりますように…😴

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