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Gorillazのライブはどう作られているのか。パーカッショニストが語る「機材と人間味」

※この記事は、音響や機材の専門家ではない一ファンが、インタビューを読みながらGorillazのライブの仕組みを素人なりに整理してみたものです。突っ込み大歓迎。

先日、Gorillazのパーカッショニスト、カール・ヴァンデン・ボッシュのインタビュー記事が出ていた。Rolandが掲載した記事で、さすがは電子楽器メーカー、機材についてかなり詳しく語られている。
(余談だけど、「カール・ボッシュ」という名前に聞き覚えがあるなと思ったら、空気からアンモニアを作るハーバー=ボッシュ法の発明者のひとりだった。)

電子楽器メーカーらしく、普段デーモンとジェイミーが出てくるインタビューとは一味違った機材ネタ満載の記事でとても面白かったので、メモがてら調べたことを記事にしてみることにした。

Karl Vanden Bossche(カール・ヴァンデン・ボッシュ)とは

まず、カールは1980年代から活動しているロンドンのベテラン・パーカッショニスト。レゲエ、ソウル、アフリカ音楽、ジャズ、ファンクなどに影響を受け、シャーデーなどの仕事を経て、Blurのセッションにも参加。そこでRolandのSPDパッドを使いこなしていたことから、デーモンに「Gorillazをやらないか」と声をかけられたらしい。

SPDパッドというのは、ライブでたまに見かける四角いパッドが並んだ電子打楽器のこと。ひとつひとつにサンプル音を登録できて、叩くとその音が鳴る。

カールは生のパーカッションと電子機材の両方を扱えるタイプの演奏家で、Gorillazのライブでは、この「生演奏と電子音を行き来できること」がかなり重要らしい。
カールはインタビューの中で、「ミュージシャンはカメレオンでなければならない」とも語っている。時代ごとに機材もライブのやり方も変わる中で、生楽器と電子音の両方を扱いながら適応し続けてきたことが、長年Gorillazで重要な役割を担っている理由なのかもしれない。

ライブでの映像と音の同期

クリックトラックとは

Gorillazのライブは、音楽だけでなくJamie Hewlettのアニメーションやキャラクター映像も大きな要素になっている。観客は生身のバンドだけを見るのではなく、スクリーン上の2Dやマードックたちも同時に体験する。
そうなると当然、音と映像はずれてはいけない。
そのために必要になるのがクリックトラックで、簡単に言えば、ミュージシャンのイヤモニに流れるメトロノームのようなもの。これに合わせて演奏することで、映像や同期音源とテンポを揃えられる。
※メトロノームの話は10年前のインタビューなので、クリック同期自体は今も使われていると思うけど、近年はさらに複雑なシステムになっている可能性もある。

演奏に「人間らしさ」を出す工夫

ただクリックに合わせているだけだと演奏が硬くなってしまい、「本当に演奏してるの?」「音源を流せばいいのでは?」という話にもなってしまう。実際、初期にバンドメンバーがスクリーンの後ろに隠れて演奏していたころは「音源を流しているだけなのでは」と観客が混乱して荒れた公演もあったらしい。
そこで、クリックに合わせて演奏しながら「人間らしさ」を残すために、電子音のパーカッションと生の打楽器やドラムを混ぜたり、プレイバックを流すだけではなく、実際に叩いてサンプル音を鳴らす仕組みにしたり、色々な工夫が重ねられてきた。

裏方技術者の大切さ

しかもGorillazは、ゲスト参加も多く、デーモン自身もかなり自由に動く。
厳密な同期システムがありながら、完全に固定化されたショーにはなっていない。
これを成立させるためには、演奏者だけじゃなくてかなりの数の技術者が必要になってくる。
カールの記事にも、MD(音楽監督)のマイク・スミスがボタンを押すと全員にカウントインが行く、という話や、テックのアンディ・ハムウィーがiPadで曲ごとの音色やサンプルを管理している話も出てくる。
ライブ中に演奏者が瞬時に必要な音へアクセスできるよう、裏側ではかなり複雑な管理が行われているらしい。

ヒューマン・クオンタイズって何?

そもそもGorillazは、ライブ以前にスタジオ録音の段階でも「機械っぽさ」と「人間っぽさ」の間を調整しているらしい。
音楽制作では、録音した演奏をあとから編集して、リズムを正確な拍の位置に揃えることがある。これを大きく言うと「クオンタイズ」という。完全に揃えると演奏はきれいに整うけれど、そのぶん人間らしい揺れやグルーヴが失われることもある。
そこで、完全にグリッドへ揃えるのではなく、人間的なズレを残したり、必要なところだけ調整したりする。2017年頃のインタビューではそれを「ヒューマン・クオンタイズ」と表現している。

この「どこまで揃えるか」はジャンルによっても基準が違う。テクノやEDMのように正確さが気持ちよさにつながる音楽もあれば、ヒップホップやファンクのように少し遅れたり揺れたりすることがグルーヴになる音楽もある。

Gorillazの場合は、電子音やサンプルを多用しながらも、完全に無機質にはしない。そのバランスを、スタジオ録音の段階からかなり細かく調整しているらしい。

ライブで電子音と生音をどう混ぜているのか

ライブの話に戻る。
Gorillazには、普通のドラムを叩く人とは別に、パーカッションや電子パッドを担当する人がいる。近年のライブでは、ドラマーが生バンドとしての土台やグルーヴを作り、カールのようなパーカッショニストが、スタジオ音源に含まれる電子音やサンプルをライブで再現する、という役割分担になっているらしい。
つまり、アルバムに入っている電子音をただ裏で流しているわけではなくて、ステージ上で実際に「叩いて」鳴らしている。

カールは、生の打楽器とRolandのSPDやV-Drumsのような電子パッドを両方扱っている。電子パッドには、サンプル、効果音、拍手、電子音など様々な音を登録できる。演奏中にそれをリアルタイムで叩き分けることで、Gorillaz特有の複雑な音像をライブで再構築している。

2025年に配信されていたライブ映像では、カールが見慣れない楽器を振っていて、気になって調べたら「シェケレ」という西アフリカ系の打楽器だった。ひょうたんにビーズを編み込んだような楽器で、シャラシャラした独特の音がする。

図鑑Neo『音楽』から抜粋:木の実や貝、ビーズなどを糸で編んだものをヒョウタンにかぶせた楽器。

こういう生の打楽器が、電子パッドやサンプルと並んで普通に混ざっているのが、なんだかすごくGorillazっぽい。
そうやって、機械的な同期システムの中に「人間らしさ」を残す工夫を積み重ねた結果が、今のGorillazのライブなのだと思う。

DJ的な感覚がバンドに溶け込んでいった

Gorillazの初期には、Kid Koalaのようなターンテーブリストの存在も大きかった。「Clint Eastwood」や「Tomorrow Comes Today」あたりのヒップホップ的な感触、スクラッチ、ループ、サンプル感は、かなりDJカルチャー寄りのものだと思う。
「音を切り刻む」「サンプルを差し込む」「編集感覚をライブに持ち込む」という役割が、当時はターンテーブリストによって担われていた。近年のDemon Days再現ライブでもKid Koalaが出演していたので、その役割が完全に消えたわけではない。

(2026/6/11追記)Kid Koalaについてはこちらでも話しているのでぜひ。

ただ、通常のツアー構成で見ると、その感覚は今ではリズム隊や演奏システム全体の中に分散して組み込まれているように見える。カールのようなパーカッショニストが電子パッドでサンプルを叩いて鳴らすのは、ある意味でターンテーブルが担っていた「編集感覚」をライブ演奏に落とし込んだものとも言えるかもしれない。Gorillazのライブが年々複雑になってきたのは、こういう積み重ねがあるのかもしれない。

まだちゃんと見えていなかった

ここまで書いておいて何だけど、私はまだGorillazのライブを生で観たことがない。
映像では何度か観ているけれど、これまでの自分の解像度はかなり低かった。正直、「人がいっぱいいるな」「ゲストが豪華だな」「デーモン楽しそうだな」くらいで見ていた。

でも最近は少しずつ、「この人はBlurのライブにもいたマイク・スミスだ」「この人がベースのSeyeさん!デーモンのソロにもいたぞ」みたいに、ステージ上の人たちが少しずつ見えてくるようになってきた。
今回カールのインタビューを読んで、その人たちがただ大勢いるのではなく、それぞれ違う役割を持ってライブを支えていること、裏方にもたくさんの技術者がいることが少しだけ見えてきた気がする。

Gorillazのライブは、録音された音楽をただ再生するものではなく、編集された音楽を人間たちが巨大なチームで再構築する場なのだと思う。
今度ライブ映像を見るときは、演奏している人たちだけでなく、機材や音の出し方、映像との同期も含めて、もう少し違う目で見てみたい。

そして、できればそろそろ本当に来日してほしい。

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