1989年のBE MY BABY
80年代の半ばにすい星のように姿を現し、巨大な衝撃と今も色あせない鮮烈な記憶を残したソロ・アーティストを振り返るシリーズ。本日は吉川晃司さんの3日目。
吉川さんのキャリアの大きな転換点となったのは、誰がどう考えても間違いなく、1988年12月に突如発表された布袋寅泰さんとのユニット・COMPLEX結成でしょう。それまで隆盛を誇った歌番組やアイドル文化が緩やかに衰退期を迎えたところで放たれた、文字通りの起死回生、会心の一打となりました。
COMPLEXの結成に際して、大方の注目を集めたのはこの年の4月に解散したBOØWYのカリスマギタリスト・布袋さんの方でした。10月にリリースした初のソロアルバム「GUITARHYTHM」が大ヒットを記録している中での発表だっただけに、驚きとともに違和感を感じたファンは私も含めて多かったはず。なぜ今、吉川さんと組むのか?と。
当時の吉川さんは完全なアイドル路線で、ずば抜けて格好良くて人気も絶大だったけれどもミュージシャンやアーティストとしては世間に認知されておらず、ボーカリストとしての評価もしかり。それがいきなり布袋さんと組むということは1曲だけのユニット、何かの企画かタイアップかなと思いました。
結成発表後の雑誌やスポーツ新聞などの記事は吉川さんのイメージチェンジ戦略だとの声がほとんどだったと思います。ただ、そう言いながら「これはいいチャンスだ」みたいな好意的な論評が多かった記憶があります。
そうした色々な声がささやかれる中で、待望の1stシングルが発売されたのは翌年の4月8日。曲は「BE MY BABY」。
これはたまげましたね!なんと言ってもまずはあのミュージックビデオ!背景のない空間で吉川さんが歌い、布袋さんがギターを弾く。シンプルであるがゆえにお二人の格好良さが圧倒的に際立つ最高のMVは当時大きな反響と称賛を集めました。
曲自体も意表を突かれたというか、BOØWYの続きという感じは全くしなかったし、吉川さんのボーカルはそのままでも明らかにアイドル歌謡ではなくロックを感じた。全く新しいサウンド、斬新なデジタルロックに衝撃を受けました。もちろん発売と同時に大ヒット、街中に流れまくってましたね。
先行シングルで心を鷲掴みにされた私はすぐにアルバムを予約して発売日に購入。COMPLEXのデビューアルバム、その名も「COMPLEX」は圧巻の完成度でこちらも大ヒットとなります。どの曲も素晴らしく思い入れがあるけど、個人的には「恋をとめないで」が一番好きだったかな。
このアルバムに収録された全11曲のうち10曲の作詞を吉川さんが担当。さらに作曲も4曲手掛けるなど、あらためてアーティストとしての才能を見せつけると同時に高く評価され、これまでのアイドルとしてのイメージを一気に打ち破り、今に続くロックスターとして輝きと存在感を不動のものとしました。
空前の大ヒット、大成功のおかげもあってか、この1枚だけかもと噂されたCOMPLEXの活動はめでたく継続され、1年後の1990年4月には2枚目のアルバム「ROMANTIC 1990」がリリースされファンを歓喜乱舞させます。
このアルバムの中ではシングルカットされた「1990」が大好きです。カラオケでも本当によく歌わせていただきました。1990年という現実にありながら近未来を歌っているみたいなちょっと不思議な感じがとても気に入ってました。
あと「MAJESTIC BABY」もオシャレで気持ちいい曲ですよね。最後の「お前と一緒なら お前と一緒なら」のリフレインが超格好いい。
この年をもって2枚のフルアルバムをリリースしたCOMPLEXは残念ながら活動停止。評価は急角度を上がりっぱなしのままだっただけに続けて欲しかった気持ちは強かったけど、そもそもお二人がソロでも十二分な大物同士なので絶頂のうちに幕を引くの花だし、継続を求める方が野暮な気もしました。
とにかく吉川さんにとってはソングライターとしての確固たる地位と評価、ロックスターとしての華と輝きを余すところなくみせつける大成功のプロジェクトとなりましたね。ファンにとってもカタルシスしか残らない最高の2年間でした!
