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「きちんと整理しない」という情報整理術-生成AI時代の、ズボラな知的生産

「知財情報を組織の力に®︎」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎篤志です。

先日、知財業界の若手の方々と飲む機会がありました。

知財実務の話からキャリア、勉強方法など、話題はさまざまな方向に広がったのですが、その中で、私が普段どのように情報を収集し、整理しているのかという話になりました。

私は昔から、情報収集や情報整理、知的生産に関する本が好きです。大学生の頃から、梅棹忠夫氏の『知的生産の技術』をはじめ、この分野の本をいろいろと読んできました。

カードを使った情報整理、ノート術、発想法、読書術、デジタルツールによる知識管理など、その時々で紹介されてきた方法に触れてきました。Evernoteをはじめとするデジタルツールも使っています(正確に言えば使っていました)。

では、それらの方法やツールを十分に使いこなして、体系的な知識データベースを構築しているのか。

残念ながら、答えは「いいえ」です。

結局のところ、きちんと整理しない

私の情報整理術を一言で表すとすれば、

「きちんと整理しない」

ということになるかもしれません。

もちろん、まったく整理していないわけではありません。必要な資料はフォルダに保存しますし、気になった記事やウェブページをEvernoteなどに残すこともあります。

ただし、すべての情報にタグを付け、テーマ別に分類し、定期的に見直し、いつでも取り出せる状態にしているわけではありません。

保存したまま、ほとんど見返していない情報も少なくありません。

情報整理に関する本を読むと、非常に美しく、合理的な仕組みが紹介されています。そうした仕組みに憧れて試してみるのですが、細かな分類やメンテナンスを長期間続けることができない。

おそらく、同じような方は少なくないのではないでしょうか。

情報を整理するための仕組みを整えたものの、いつの間にか、仕組みを維持すること自体が目的になってしまうこともあります。

ここで重要なのは、整理された状態をつくることではなく、必要なときに過去の情報を活用できることです。

その意味では、私の方法は「整理術」というよりも、必要になった段階で情報を探し直し、組み合わせ直す再整理術に近いのかもしれません。

発信することで、情報が再利用可能になる

生成AIが登場したことで、こうした私のズボラな方法にも、思いがけない利点が生まれました。

私はこれまで、知財情報分析、特許調査、IPランドスケープ、情報収集、仕事術などについて、書籍や論考、ブログ、SNSといったさまざまな媒体で情報発信を行ってきました。

発信した内容が、最初から一つの体系として整理されていたわけではありません。

その時々で考えていたこと、仕事を通じて得た気づき、読んだ本から着想したこと、セミナーで説明したことなどを、それぞれの媒体で断片的に発信してきました。

以前であれば、これらの情報を再利用するためには、自分で過去の記事や投稿を探し、読み返し、必要な部分を抜き出して再構成する必要がありました。

しかし、生成AIを使うことで、過去に発信した情報を横断的に検索し、要約し、別の観点から並べ替えることが容易になっています。

過去のブログ記事、講演資料、SNSへの投稿、原稿などを材料として与えれば、

  • あるテーマに関する過去の主張を整理する

  • 時系列で考え方の変化を確認する

  • 複数の記事に共通する論点を抽出する

  • 過去の内容を現在の問題意識に合わせて再構成する

  • セミナー、記事、書籍など、別の形式へ展開する

といったことが可能になります。

もちろん、生成AIの出力をそのまま利用できるわけではありません。内容の正確性を確認し、現在の自分の考えと一致しているかを検証する必要があります。

それでも、過去の情報へアクセスし、再整理するための負担は大きく下がりました。

私は以前、noteの記事でこれを「知の複利化」と表現しました。

一度考えたことを一度きりで終わらせず、文章や資料として外部化しておく。外部化された知識を、時間が経過した後に別の知識と組み合わせ、再び活用する。

その積み重ねによって、知識は単純に蓄積されるだけではなく、少しずつ別の価値を生み出すようになります。

情報収集で重要なのは、ツールよりも着眼点

若手の方々との飲み会で、伝え忘れたことがあります。

それは、情報をどのように保存するか以前に、どのような着眼点で情報を集めるかが重要であるということです。

情報収集というと、検索エンジン、ニュースアプリ、SNS、論文データベース、特許データベースなど、オンライン上の情報源を思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、オンラインでの情報収集は非常に有用です。特定のテーマを効率よく調べるのであれば、検索キーワードを工夫し、適切なデータベースを使うことが欠かせません。

一方で、オンライン検索には、基本的に「自分が検索しようと思ったものしか見つからない」という限界があります。

検索するためには、検索語を入力しなければなりません。検索語を入力するためには、少なくとも、その対象の存在や概念をあらかじめ知っている必要があります。

つまり、検索は自分の既存の関心や知識の範囲に影響されます。

そこで私は、リアルの書店へ足を運び、特定の本を探すだけではなく、書棚をぼんやりと眺めるようにしています。

目的の棚だけではなく、その周辺の棚を見る。仕事に直接関係する分野だけではなく、経営、歴史、社会科学、テクノロジー、デザイン、教育などの棚も眺める。

そうすると、自分が検索しようとも思わなかったテーマや、自分の問題意識を別の角度から捉えるための本に出会うことがあります。

私にとってリアル書店は、本を購入する場所であると同時に、世の中の論点がどのように配置されているのかを眺める場所でもあります。

どのようなテーマの本が増えているのか。隣り合う棚にはどのような分野があるのか。同じテーマが、経営書、技術書、社会科学書では、それぞれどのように扱われているのか。

棚を眺めること自体が、情報収集のためのアンテナを調整する作業になっています。

周辺領域へのアンテナが、新しい問いを生む

知財情報の仕事でも、これは同じです。

特許情報を調べる際、直接的な技術テーマだけを見ていても、十分な示唆が得られないことがあります。

ある技術が、どのような社会課題と関係しているのか。どのような市場や産業へ展開する可能性があるのか。規制、標準化、ユーザー行動、人口動態などの変化から、どのような影響を受けるのか。

こうした問いを考えるためには、特許情報だけではなく、学術文献、企業情報、市場情報、政策、統計、ニュース、書籍など、複数の情報源を組み合わせる必要があります。

一方で、どの情報源を見るべきかは、最初から明確になっているとは限りません。

周辺領域について日頃からアンテナを立てておくことで、調査や分析を始めた際に、

「この技術は、あの業界の変化と関係するのではないか」
「別の分野で議論されていた考え方を応用できるのではないか」
「技術分類では離れているが、解決しようとしている課題は共通しているのではないか」

といった仮説が生まれます。

情報収集の価値は、単に多くの情報を持っていることではありません。

情報と情報の間に、どのような関係を見いだせるか。そこから、どのような問いや仮説をつくれるか。

そのための着眼点を増やすことが重要です。

「整理してから使う」から「使うときに整理する」へ

従来の情報整理では、情報を収集した時点で、分類、タグ付け、要約などを行い、将来使いやすい状態にしておくことが理想とされてきました。

これは現在でも有効な方法です。日頃から丁寧に整理できる方であれば、その方が望ましいと思います。

一方で、すべての情報をあらかじめ適切に分類することは簡単ではありません。

なぜなら、ある情報が将来どのような目的で使われるかは、保存した時点では分からないからです。

現在は「特許情報分析」に関する情報として保存したものが、数年後には「人材育成」や「生成AI活用」を考える材料になるかもしれません。

情報の意味は固定されているのではなく、後から生じた問題意識や、別の情報との組み合わせによって変化します。

生成AI時代には、収集時点ですべてを完璧に整理するのではなく、

  1. 気になった情報を残す

  2. 自分なりに考え、できれば発信する

  3. 必要な場面で検索する

  4. 生成AIも活用しながら再整理する

  5. 自分で内容を確認し、新たな用途へ展開する

という進め方も、現実的な選択肢になります。

ただし、生成AIがあるから何も整理しなくてよい、ということではありません。

元の情報が保存されていなければ、後から検索することはできません。また、出典や作成時期が分からなければ、情報の信頼性や文脈を確認することも難しくなります。

最低限、原典、日付、タイトル、URLなど、後から一次情報へ戻るための手掛かりは残しておくべきでしょう。

私の方法は、あくまでズボラな人向けである

ここまで書いてきた私の方法は、情報整理の模範解答ではありません。

むしろ、きちんと分類したり、定期的にメンテナンスしたりすることが苦手な人が、それでも過去の知識を活用するための方法です。

Evernote、Notion、そのほかの情報管理ツールを使いこなし、継続的に知識を整理できるのであれば、その方がよいでしょう。

ツールを使いこなせる人が、わざわざ整理しない方法へ切り替える必要はありません。

一方で、情報整理が続かないからといって、情報収集や知的生産そのものを諦める必要もないと思います。

分類が不完全でも、考えたことを文章にして残す。

体系化されていなくても、ブログやSNS、講演資料として外部化する。

そして、必要になったときに検索し、生成AIの支援も受けながら再整理する。

完璧な整理ではなくても、外部化された知識が一定量蓄積されれば、後から活用できる可能性は高まります。

整理の仕組みをつくることに疲れてしまうよりも、まずは自分が気になったこと、考えたこと、誰かに伝えたいことを残す。

それが数年後、別のテーマを考える際の材料になるかもしれません。

情報整理とは、情報を並べることではなく、意味を与え直すこと

情報整理というと、フォルダ、タグ、分類表などを使って、情報を所定の場所へ格納する作業を想像しがちです。

しかし、実際に価値を生むのは、情報をきれいに並べた状態そのものではありません。

過去に集めた情報を、現在の問題意識に照らして読み直す。別々の時期に得た知識を組み合わせる。以前とは異なる問いを立て、情報に新しい意味を与える。

こうした再解釈と再構成こそが、情報整理の重要な役割だと考えています。

私の情報収集・整理術は、かなりズボラです。

ただ、生成AIが利用できるようになったことで、ズボラに残してきた大量の断片が、再びつながり始めました。

大切なのは、最初から完璧な知識体系を構築することではないのかもしれません。

気になった情報に触れ、自分なりに考え、何らかの形で残しておく。そして、必要なときに探し直し、組み合わせ直す。

情報を収集する。発信する。時間を置いて再整理する。そして、また新たな問いや発信につなげる。

この循環を続けることが、私なりの「知の複利化」なのだと思います。


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