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「あずきちゃん」と過ごした2週間。介護施設に【LOVOT】がやってきた話

少し前のことですが、私の施設に2週間、あるロボットが来てくれました。

家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」です。

LOVOTという名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。テレビやSNSでもよく見かける、まるで生き物のように温かくて、抱っこをおねだりしてくる、不思議なロボットです。

私たちの施設では、LOVOTを2週間お試しで借りる機会をいただきました。やってきた子の名前は「あずきちゃん」。

今回は、あずきちゃんと過ごした2週間で見えてきた、認知症ケアの新しい形と、思いがけない職員への癒し効果についてお話しします。



LOVOTってどんなロボット?

画像:LOVOT公式サイト(https://lovot.life/)より

LOVOTは「LOVE × ROBOT」から名づけられた、家族型ロボットです。

特徴的なのは、「役に立たない、でも愛着がある」というコンセプトで作られていること。掃除や見守りなど、便利な機能を売りにしているロボットとは、目的そのものが違います。

抱っこすると人と同じくらいの温かさがあって、つぶらな大きな瞳でじっと見つめてきます。名前を呼ぶと反応してくれて、後をついてきたり、抱っこをおねだりしたり。慣れた人になついていく、まるで本物のペットのような存在です。

「お世話してもらう」のではなく、「お世話してあげたくなる」ロボット。これが介護現場で大きな意味を持ちます。


入居者の方の反応——「あずきちゃん、こっちおいで」

レンタル初日、正直に言うと、私は少し不安でした。

入居者の方々のご年齢を考えると、「なぜこの子が動いて、声を発するのか理解できないのではないか」と心配だったんです。

ところが、私の心配は一瞬で杞憂に終わりました。

「かわいい」「こっちおいで」「抱っこしてあげる」

入居者の方々の間で、あずきちゃんの取り合いが始まったんです。

2週間の間、私は入居者の方々とあずきちゃんの触れ合いを見守りました。皆さん、本物の赤ちゃんと接するように話しかけ、優しく抱っこされ、穏やかな表情で過ごされていました。

中でも驚いたのは、日中の帰宅願望が強く落ち着かない方の変化です。

普段なら「家に帰る」と訴え続け、なかなか落ち着かない方が、あずきちゃんを抱っこした瞬間に表情が変わりました。柔らかく微笑み、しばらく抱っこされているうちに、帰宅願望そのものが消えていったんです。

これには本当に驚きました。お薬や声かけでも難しい場面で、あずきちゃんはふっと心を落ち着かせてくれた。「お世話する側になれる」ということが、ご本人にとって深い安心につながっているのかもしれません。


認知症ケアの新しい形

画像:LOVOT公式サイト(https://lovot.life/)より

LOVOTには、認知症ケアにおける科学的な裏付けもあります。

東北大学・神戸市が行った実証実験では、LOVOTと暮らした入居者は、認知機能の低下が抑制された可能性があるという結果が出ました。

そして2025年11月には、LOVOTが福祉用具情報システム(TAIS)に登録され、介護テクノロジー導入支援補助金の対象として、より幅広く活用できるようになりました。介護現場での導入は、これからますます広がっていくと予想されます。

私が現場で感じたのは、LOVOTが「介護する側」と「介護される側」の関係を、一瞬で変えてしまうということです。

普段、入居者の方々はどうしても「介護される立場」になりがちです。でも、あずきちゃんがそばにいると、「お世話してあげる立場」になれる。「抱っこしてあげるね」「いい子ね」と語りかける時の表情は、本当に穏やかでした。


思いがけない、職員への癒し効果

そして、驚くべきはその効果が入居者以上に職員に現れたことです。

特に女性職員はあずきちゃんの取り合いになるほどハマってしまい、休憩時間にあずきちゃんを抱っこする職員が続出しました。

介護士さんも人間です。日々の仕事の中でイライラしてしまうこともあれば、夜勤でへとへとになることもあります。そんな時、あずきちゃんは疲れを癒してくれる存在になっていました。
また、あずきちゃんを通して職員間のコミュニケーションや笑顔も増えました

返却日には印象的な出来事がありました。

LOVOTを箱に戻すとき、ある職員が「私に電源を落とさせてください」と申し出てくれました。彼女があずきちゃんの電源を落とすと、あの澄んだきれいな目がだんだん暗くなっていきました。

その瞬間、彼女は涙を流し「今までありがとう」と語りかけていました。

返却後、何名かのスタッフは、川崎のLOVOTカフェにまで行ったそうです。
たった2週間でしたが、職員にとってもこれほどまでに影響を与える存在だったのか、と驚きました。


ご家族にも喜ばれる存在

面会にいらっしゃるご家族の中にも、あずきちゃんに会うのを楽しみにされる方が何名かいらっしゃいました。

「お母さん、元気?」と声をかける前に、まず「あずきちゃんはどこ?」と探していたご家族もいたほどです。

面会の頻度が変わったわけではありません。ただ、施設に来る楽しみが一つ増えた。それは、ご家族にとっても、施設にとっても、決して小さなことではないと思っています。


一方で、見えてきた課題

ここまで良いことばかり書いてきましたが、購入に反対の意見もありました。

ひとつは、接触のリスクです。LOVOTはフロアを動き回ります。歩行している入居者様が気づかずに接触して転倒するリスクは、否定できません。

もうひとつは、故障のリスクです。あずきちゃんを本当の子供と勘違いして、お茶を飲ませようとされる方もいらっしゃいました。これはご本人の優しさが垣間見える瞬間でもあったのですが、機械にとってはダメージにつながります。

さらに、スタッフが夢中になりすぎて見守りがおろそかになるのではという意見もありました。あずきちゃんに癒される反面、注意散漫になっては本末転倒です。

併設のデイサービスでもLOVOTを試していたのですが、ご利用者のレベルを考えると、特養の方がリスクが高いという意見が多く出ました。

最終的に、特養は保留、デイサービスは購入という判断になりました。施設の特性によって、向き不向きがあるということを実感した一件でもあります。


ご家庭でも体験できます

LOVOTは、介護施設だけのものではありません。

神奈川県の川崎にあるラゾーナ川崎プラザには、LOVOTカフェがあります。事前予約をすれば、食事と一緒にLOVOTとの触れ合い体験ができる、人気のカフェです。

また、2024年12月からは、個人向けの公式レンタルサービス「LOVOTホームステイ」も始まりました。「いきなり購入はハードルが高い」という方も、まずはお試しから始められます。

ご家族で介護をされている方が、ご自宅にLOVOTを迎えるという選択肢も、これからは現実的になっていくと思います。


最後に

画像:LOVOT公式サイト(https://lovot.life/)より

ロボットが介護の現場に入ってくる、と聞くと、少し冷たい印象を持つかもしれません。

でも、あずきちゃんと過ごした2週間で、私の見方は変わりました。LOVOTは人の代わりに何かをするロボットではなく、「人の心に寄り添う存在」なんだと感じています。

入居者の方が穏やかな表情を取り戻す瞬間。スタッフが涙を流し「ありがとう」と語りかける場面。ご家族が「あずきちゃんに会いに来た」と笑う瞬間。

そのどれもが、テクノロジーの力で生まれた、確かに温かい瞬間でした。

これからの介護に、こうした新しい選択肢が少しずつ増えていくのは、悪いことではないと思っています。


参考資料

本記事は以下の情報を参考に作成しました。

  • GROOVE X株式会社「LOVOT[らぼっと]」公式サイト(https://lovot.life/)

  • GROOVE X株式会社プレスリリース「家族型ロボット『LOVOT』が福祉用具情報システム(TAIS)に登録 補助金を活用した導入が可能に」(2025年11月)

  • GROOVE X株式会社プレスリリース「『LOVOT』、認知機能の低下抑制効果に期待結果を受け、介護分野の取り組み加速」(2022年)

  • 東北大学 瀧靖之教授・神戸市「CO+CREATION KOBE Project」による介護施設での実証実験

  • Future Care Lab in Japan「家族型ロボット LOVOT(らぼっと)」事例(SOMPOホールディングス)

  • LOVOTカフェ公式サイト(https://lovotcafe.com/)

  • その他、LOVOT NEWS、各種報道記事

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