「これ、何の意味があるの?」――無意味だと思っていた療育が、線でつながった日
息子が通っていた幼稚園には、園を休んで決まった曜日に「療育」に通っている子が一定数いた。
療育って、なんだろう?
気になって園ママに聞いたこともあるが、返ってきたのは
「うーん……ほとんど遊んでる感じだけどね」という、少し濁した答え。
当時の私には、そこが具体的に何をする場所かも分からず、ただぼんやりとした、
どこか遠い世界の話のように感じていた。
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診察室で投げられた、聞き慣れないアルファベット
療育センターで、医師から息子に発達障害の診断を告げられた直後。
「じゃあ、STとOTの予約を取りますか?」と言われた。
聞いたことのない言葉に、思わず「それは何ですか?」と聞き返した。
それが、私と療育の、本当の出会いだった。
なるほど、これが必要なのか。
そう自分を納得させ、始まった療育。
けれど、実際に通い始めて感じたのは、猛烈な「違和感」と「虚無感」だった。
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無になって眺めていた、40分間の「遊び」
療育センターでの時間は母子同伴だ。
専門家がついてくれているはずなのに、そこで行われているのは、ただの「遊び」にしか見えなかった。
ブランコに乗り、先生とジャンプをし、かくれんぼをする。
塗り絵をして、トランポリンを跳ぶ。
言語聴覚士(ST)の時間にいたっては、ウォーリーを探せや、神経衰弱のようなゲーム。
CDから流れる問題を聞いて、用紙の中から答えを選ぶ。
「……これ、家でもできるんじゃないか?」
「わざわざ幼稚園を休んで、ここまで来てやることなのか?」
正直、頭の中はずっとそんな疑問でいっぱいだった。
意味が分からないから、私はただ無になって、うまくできない息子を眺めるだけ。
期待していた「魔法のような指導」はどこにもなく、ただ時間だけが過ぎていく。
それは、救いを求めていた私にとって、あまりにも頼りなく、しんどい時間だった。
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あの時、私が「無意味だ」と切り捨てそうになっていた時間。
それが実は、数年後の息子を守る「緻密な計算」の上に成り立っていたことを、当時の私は知らなかった。
今だからわかる、OT(作業療法)とST(言語聴覚療法)の本当の狙い。
そして、これから療育を始める方に、私と同じ後悔をしてほしくなくて、この記事を書こうと思う。
【点と線がつながった、ママ友の一言】
療育センターを一区切りとし、放課後デイサービスへ移行してしばらく経った頃のことだ。
同じように悩んできたママ友とお茶をしていたとき、私はつい、当時の愚痴をこぼした。
「あの療育さ、正直なんの意味があったのか分からなかったよね。ただ遊んでただけじゃない?」
すると、彼女は意外そうな顔をして言った。
「え? あのウォーリーを探せは、ビジョントレーニングだよ」
……ビジョントレーニング?
慌てて調べてみて、私は愕然とした。
それは、放課後デイで「この子は目の動きが少し苦手だから、
取り入れますね」と言われていた、まさにそれだったのだ。
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遊びの皮を被った「生存戦略」
目の動き(眼球運動)がスムーズにいかないと、将来、黒板をノートに書き写すことや、
文章を一行飛ばさずに読むことが、子供にとって凄まじい負担になるらしい。
つまり、先生たちは、まだ幼稚園児だったあの頃
すでに息子の「将来の学習のつまずき」を予見し、
遊びの中でさりげなく、でも確実にトレーニングしてくれていたのだ。
ブランコやトランポリンも、ただの遊びではなかった。
それは「感覚統合」。
自分の体の位置や、重力を感じる力を養うことで、椅子にじっと座り続ける力や、
集中力の土台を作っていた。
――全部、意味があった。
無意味だと思っていた時間は、息子が社会で戦うための「基礎」だったのだ。
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最後に:これから療育を始める方へ
今ならはっきりと言える。
療育は、目に見える「成果」がすぐに出るものではない。
だからこそ、親は不安になり、「これに意味があるのか」と疑いたくなる。
でも、専門家が見ているのは「今」ではなく「数年後の自立」だ。
もし、今のあなたが「ただ遊んでいるだけに見える」と絶望しているなら、こう考えてみてほしい。
「これは、将来の困難を先回りして潰している、緻密な投資なんだ」と。
ちなみに、療育センターでSTやOTに繋がれるのは、実は奇跡に近いほどの幸運だということも後で知った。
当時は気づけなかったが、私は最強のチケットを手に入れていたのだ。
あの頃の私のように、無力感の中で息子を眺めている誰かに、この気づきが届くことを願っている。
この記事の続き
療育が「線」でつながったあの日。私はただ悩むのをやめ、息子の未来を守るための「具体的な戦略」を立て始めました。幼稚園や習い事とどう交渉し、どうやって「働けなくても生きていける備え」を作ったのか。次は、私が取った具体的なアクションについてお話しします。
この連載のバックナンバーは、こちらのマガジンにまとめています。
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