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幼稚園や習い事先に“交渉に回った日”

診断を受けてから、私が「まず最初にやらなければならない」と心に決めたこと。
それは、息子にとっての“味方”を増やすことだった。
家という安全地帯を一歩出た外の世界で、息子が少しでも呼吸をしやすくするために。

私は、息子と接する時間の長い人から順番に、診断内容や今の彼の状態を、
できるだけわかりやすく、簡潔に伝えて回ることにした。

最初の関門、幼稚園の先生へ

正直、怖くてたまらなかった。
「面倒な親だと思われるのではないか」「先生に余計な負担をかけて、迷惑がられるのではないか」──。

そんな不安で胸が押しつぶされそうだった。

それでも、「話してみないと何も始まらない」と勇気を振り絞って打診すると、
担任の先生は驚くほど穏やかな表情で、快く時間をとってくれた。

検査の結果や特性の話をひと通り伝え終えると、先生は真っ直ぐに私を見て、こう言ってくれた。
「教えていただけて、本当に良かったです。私にとっては全く知らない知識でした。
すぐに勉強して、明日からの保育にどう活かせるか、私も考えてみますね」

その瞬間、張り詰めていた心の糸がふっと緩み、救われたような気持ちになった。

「知らないより、知っているほうがずっと保育しやすいですから」

そう言って笑った先生の懐の深さと、息子をひとりの人間として大切にしようとする姿勢。
その日から卒園まで、先生はずっと息子の最強の味方でいてくれた。
今の息子があるのは、間違いなくあの先生のおかげだ。その感謝は、何年経っても消えることはない。

現実の壁。習い事先での「惨敗」

一方、外の世界はそれほど甘くはなかった。
当時通っていた3つの習い事へも同様に説明に行ったが、結果は──惨敗だった。

● 大手ロボットプログラミング教室

息子が何よりも楽しみにしていた場所。しかし、当時の担当講師は「大会で実績を出すこと」
に執着し、子供が思い通りに動かないとすぐに怒鳴り散らすタイプだった。

特性を説明すると、返ってきたのは心ない言葉だった。
「そんなに状態が悪いなら、薬は飲ませないんですか?」
「落ち着きがないなら、親御さんが後ろで“見張って”いてください」

息子はプログラミング自体は愛していたが、怒鳴られるたびに萎縮し、傷ついていった。

高い月謝を払って、息子が心を削られる場所へ通わせる意味とは何だろう。
悩み抜いた末、私は辞める決断をした。

本部に退会理由を伝えると、電話口の方は非常に丁寧に謝罪してくれた。
「特性のあるお子さんにこそ、未来への架け橋になりたいと思っていたのに……」
理念は立派でも、現場のたった一人の言動でその橋は無惨に崩れる。その現実に、切なさが込み上げた。

● サッカー教室とデイキャンプ

ここでも、理解の壁は厚かった。
「低緊張で姿勢を保つのが難しい」と何度説明しても、現場には浸透しない。

「座る姿勢がだらしない! シャキッと座れ!」
何度も何度も怒鳴られる息子。
どれだけ丁寧に伝えても、届かない。

“理解してほしい”という私の願いだけが空回りし、削られていく感覚に疲れ果ててしまった。
結局、これらも卒園と同時に辞めることになった。

「場所を選ぶ」という親の役割

幼稚園の先生のように、知ることで即座に寄り添ってくれる人がいる一方で、
どんなに言葉を尽くしても、理解しようとしない場所も、確かに存在する。
その冷たい現実にぶつかったとき、胸が締め付けられ、独りぼっちになったような気がして、少しだけ泣いた。

けれど、この「惨敗」の経験が、私に大事なことを教えてくれた。
どんな場所なら、息子は安心して笑えるのか。
どんな環境なら、息子の良さが死なずに伸びるのか。

それをシビアに見極めることが、親である私の重要な役割なんだと。

「理解されない場所」で戦い続ける必要はない。
息子にとって本当に大切な「味方になってくれる場所」を探し、そこへ彼を導くための、これは大きな一歩だったのだ。


あわせて読んでほしいエピソード
「環境」を整えるための交渉を続けた結果、息子は自分のペースで力を発揮し始めました。あの日、あんなに絶望していた私が、今の彼の姿を誇らしく思っている。希望を込めて綴った記録です。

▶︎ 自分で育てたピーマンなら、食べてみたくなった日

この連載のバックナンバーは、こちらのマガジンにまとめています。


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