【発達育児と私②】奪われた「自分」を少しずつ取り戻す
発達障害のある子どもを育てていると、自分の楽しみや自分のペースは、
音を立てて崩れ、失われていく。
気づいたら一日中「子ども優先」で動いていて、自分のことはいつも後回し。
「自分」という人間が消えて、ただの「ケア要員」になってしまったような感覚。
同じ立場の人なら、きっと分かってもらえると思う。
けれど、私の心の揺れがそのまま息子のメンタルに直撃する以上、
私のメンタルが安定していないと、この家の誰も落ち着けない。
私は、意識的に自分を取り戻す作業を始めた。
■ 「食」の喜びを再発見する
まず思い出したのが「食」のこと。
息子には強い偏食がある。だから私は、いつの間にか「食べたいものを食べる」ことを諦めていた。
子どもを産む前は食べ歩きが趣味だったのに。料理が好きだったのに。
いつの間にか「とりあえず空腹が満たせればいい」という食事ばかりになっていた。
そこで、ひとつ決めた。
「お昼ぐらい、自分のためだけに好きなものを作ろう」
息子が学校に行っている間、自分だけのために、自分が今一番食べたいものを作る。
それを温かいうちに、ゆっくりと味わう。
たったそれだけで、カサカサに乾いていた自分の気持ちが、少しずつ潤っていくのが分かった。
■ 読書で「ここではないどこか」へ逃げる
それから読書だ。
かつては小説が大好きだったのに、本棚に並ぶのは育児本や発達障害の解説本ばかりになっていた。
知識を得るためとはいえ、これでは心が休まるはずがない。
私は久しぶりに小説を手に取った。ストーリーの中に数十分だけ逃げ込む。
家事をしながら、読み上げ機能で物語を聞く。
これが驚くほど効いた。現実のしんどさから一時的に切り離されることで、心がふっと軽くなった。
■ “自分の時間を少しだけ戻す”という生存戦略
別に豪華なことはしていない。たった数分、数十分、自分のために使っただけだ。
でも、その「自分を大切にする時間」を持てた日は、ちゃんと息子にも優しくなれる。
もちろん、根本的な不安が消えたわけではない。
でも、母親だって人間だ。自分のペースで生きる時間を意識的に作らなければ、消耗して枯れ果ててしまう。
自分を大切にすることは、わがままじゃない。
家族を支え続けるための、最も大切な「投資」なのだ。
次回は進路の話です。
この連載のバックナンバーは、こちらのマガジンにまとめています。
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