見出し画像

夜のブランコ

あらすじ
青葉小学校、新三年生のクラスに一人転校生が編入してきた。
算数の得意な男子、鈴木孝太郎くん。
知り合いのいない、新しい町、新しい家、新しい友達。
担任の柏木紘子はある時、鈴木くんがいちばん苦手としていることを気がつく。
明るく、元気な鈴木くんにどんな秘密があるのか。
学校ってね、
勉強するだけじゃないんだよ。
大事なことを学ぶ場なんだよ。

二年三組の担任をしている柏木紘子は、教頭先生に呼び止められた。
授業も終わり放課後終了のチャイムも鳴り、校庭で遊ぶ生徒も居なくなり、あとは居残りの教師たちが明日の準備などを始める夕方4時。
教室に忘れ物をして、職員室に戻る途中であった。
「柏木先生。」
教頭は50歳も半ばで、人当たりもよく教師たちから頼りにされる働きモノだった。
「希望調査票、三年生でしたよね?」
調査票とは、教師達が次の年度は何年生の担当になりたいか、担任を持ちたいか希望を書いて年度末に提出する書類だ。

そういえば、何年生かに転入生があるって言ってたけど。

柏木紘子は、教頭の声に昨日母親と学校に訪れた少年の後ろ姿を思い出した。

「昨日、来られた親子さんですがね。男の子。新三年生なんです。」

紘子はうなづいた。
教頭は廊下よりはいいだろうと、手近な教室に紘子を呼び寄せ話始めた。
とくにいじめや体罰で学校が嫌になったわけではなく、ただ単に父親の仕事の関係で青葉町に家を買ったので引っ越してきただけのことらしい。
母親も問題のありそうな感じではないし、もちろん本人も子どもらしい子どもであったと教頭は言った。

「柏木先生は二巡目でしたね?転入生ははじめてですかな?」

紘子は教員採用試験に受かったあと、今暮らしている祖母の家で生活するために青葉町近辺で職場である小学校を探した。
通常教育実習に行った学校に空きがあれば、すんなりその空きに収まることができるが昨今なかなか都合のいい話はない。
一年契約の講師の道をたどり、出来れば翌年から正式採用されればいいなあと思っていた所、実習中にベテランの教師が介護離職すると話が出て、こう言ってはなんだが運良く青葉小学校に採用されることになった。
あれから一巡して、今二巡目の二年生が終わろうとしている。
もうすぐ、丸八年だ。

「早いですなあ。九年目なんですなあ。」

紘子はうなづいた。

「どうですかな?三年三組。鈴木孝太郎くんを受け入れてもらえますかな?」

と、
言うとは。

私はまた、あのこ達と成長していくんだな。紘子はそう思った。

「教師先生、ぜひ私のクラスで転入生を受け入れたいと思います。」


青葉小学校に通う同じ学年の子ども達は、ほぼ全員が知り合いで皆が友達と認識している。
新三年生は人数もギリギリ三組に分けているくらいで、一組23名、二組21名、三組21名だ。
担任一人で把握しやすい人数で、誰がどの組に入っても「はて?この子どこの子だったかな?
」とはならない。
幼稚園や保育園から友達の子ども達。
もしくは、母親同士が子どもがおなかにいるときから病院で知り合いになっていて、生まれた時から顔見知りな子どももいるくらいだ。
そこへ、転入生が来ればクラスは撹拌され難しい事態になる場合もあるかもしれない。
そこをとりなすのが私の役目だ。
クラスをまとめ、キーパーソンになる生徒をそれとなく見守り転入生がすんなり受け入れられるように仕向けなければならない。
鈴木孝太郎くんの性格にもよるけれど、頼りになる男の子が二人、頭に浮かんだ。
片方の男子といつも一緒にいる女子二人も頼りになる。

三年生の一年間を楽しく乗り切るために、柏木紘子は頭を回転させて新しいクラスのメンバーを一人、一人思い出していた。

つづく

第2話へ

#新学年
#新三年生
#転入生





いいなと思ったら応援しよう!