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ざっくり学ぶ、CII(船舶炭素強度指標)のきほん|#225

── 船の「環境成績表」が物流調達を変える

2026年、海運業界では「CII格付け」という言葉が実際のビジネス判断に影響を与える段階に入っています。船舶の二酸化炭素排出量を年間実績で評価し、A〜Eの5段階で格付けするこの制度は、2023年1月にIMO(国際海事機関)によって本格導入されました。2026年の削減目標は2019年比11%と、制度開始時の5%から大幅に引き締められています。D・E評価を受けた船は入港拒否や用船料の割引交渉を迫られるなど、船社経営への影響が現実のものとなりつつあります。今回は、物流に関わる全ての方が知っておきたいCIIの基本をざっくり解説します。


CIIとは何か

CII(Carbon Intensity Indicator:炭素強度指標)は、船舶が1年間の運航で輸送量あたりどれだけのCO₂を排出したかを数値化して格付けする制度です。IMOが採択したMARPOL条約の改正を受け、2023年1月から適用が始まりました。対象となるのは総トン数5,000トン以上の国際外航船で、コンテナ船・タンカー・バルクキャリアーなど主要な商船が広く該当します。毎年1月〜12月の実績データ(燃料消費量・航行距離)から炭素強度の計算値が算出され、旗国当局が確認する仕組みです。「船の環境成績表」と捉えると、イメージしやすいでしょう。

A〜Eの格付けと2026年の基準

格付けはA(優良)〜E(不良)の5段階です。船種と積載量ごとに設定された基準値と実績値を比較し、どの区分に属するかが決まります。削減目標は年々厳しくなる設計で、2023年は2019年比−5%、2026年は−11%の削減が基準です。2027年以降の削減率はIMOで議論中ですが、2030年までに40%削減という大目標に向けて段階的に引き締められていく見通しです。この「毎年厳しくなる基準」のため、前年と同じ運航方法を続けていると、自動的に格付けが下がるリスクがあります。船社にとっては継続的な燃費改善が必須となっています。

D・E評価を受けた船はどうなるか

D評価を3年連続で受けた船、またはE評価を1年で受けた船は、改善計画(SEEMP Part III)を策定・提出し、旗国当局の承認を得る義務があります。具体的な改善措置を取らなければ、翌年の航行が制限される可能性があります。市場への影響も深刻です。D・E評価船は荷主から敬遠されるため、積荷獲得が困難になり、運賃の値下げ圧力を受けやすくなります。さらに、環境格付けの低下は融資条件にも影響し、E評価船は船価下落と資金調達コスト上昇という二重の打撃を受けます。一方、A・B評価を維持できる船社は、環境対応の優位性を武器にプレミアム運賃の交渉が可能になります。

荷主・フォワーダーへの波及効果

CIIは船社だけの問題ではありません。荷主やフォワーダーにとっても、使用船舶のCII格付けはScope 3排出量の算定に直結するため、無関心ではいられない指標です。欧州を中心に、企業のサプライチェーン排出量開示が義務化される流れが加速しており、「どのグレードの船を使っているか」が、物流調達の新たな評価軸となりつつあります。実務的には、船社への問い合わせ時にCII格付けの開示を求めるケースが増えています。また、D・E評価船を使用した場合、荷主自身の環境報告書に悪影響が出るリスクもあります。中長期的には、A・B評価船を優先的に確保する「グリーン調達」が標準となる可能性が高く、物流購買担当者にとってもCIIの基礎知識は必須となっていくでしょう。

おわりに

CIIは船舶の炭素効率を可視化し、海運・物流業界全体のグリーントランスフォーメーションを加速させる重要な仕組みです。2026年の現時点で、すでに格付けがビジネス判断に影響を与え始めており、今後その重要性はさらに増していくでしょう。荷主・フォワーダーの立場からは、利用する船社のCII状況を把握し、調達戦略に組み込む準備を始めることが求められます。環境規制を「コスト」ととらえるのではなく、競争力の源泉と位置づけられるかが、今後の海運・物流業界の分かれ目になっていくでしょう。

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