海の日に考える、日本の物流と海──明治丸から150年、私たちの暮らしを支える航路 |#207
今日、7月20日は「海の日」です。青い海と晴れた空を思い浮かべる方も多いと思いますが、物流に関わる立場から見ると、この一日は少しちがった意味を持ちます。私たちの手元に届くほぼすべての品物は、どこかで必ず海を渡ってきているからです。今年は明治天皇が明治丸で横浜へ還幸された日から、ちょうど150年という節目の年でもあります。海の日を機に、日本の物流と海の関係を静かに整理してみたいと思います。

海の日のはじまり──明治丸と1876年7月20日
1876年(明治9年)、明治天皇は東北・北海道の巡幸を終え、灯台巡視船「明治丸」で青森から横浜港へ7月20日に無事お帰りになりました。この日にちなみ、1941年に「海の記念日」が定められ、1996年に「海の日」として国民の祝日となります。2003年からはハッピーマンデー制度により7月の第3月曜日となり、海の日を国民の祝日とするのは世界で日本だけと言われます。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」という主旨は、今もまったく古びていません。
貿易量の99.6%を海が運ぶ国
日本の輸出入は、重量ベースで99.6%が海上輸送によって運ばれています(国土交通省)。原油、LNG、鉄鉱石、穀物、自動車、家電、日用品──私たちの生活を支える資源と製品のほとんどは、コンテナ船、タンカー、バルカー、自動車専用船に載って、太平洋やインド洋を渡ってきます。世界第6位の面積を誇るEEZ(排他的経済水域)を持つ島国として、海を前提にしない産業や生活は、そもそも成立しません。
日本商船隊と内航海運の現在地
外航を担う「日本商船隊」は約2,300隻、2億重量トン規模を維持し、世界の船腹量のおよそ10%を占めます。中核をなす日本郵船・商船三井・川崎汽船の3社は、コンテナ定期船部門を統合してOcean Network Express(ONE)を2018年に設立し、船腹量ベースで世界6位に位置しています。国内輸送に目を向ければ、内航海運は国内貨物輸送のトンキロベースで約4割を担う大動脈です。トラック運転手不足や2024年問題を背景に、モーダルシフトの受け皿としての期待も年々高まっています。
揺れる海運──紅海危機とパナマ運河
一方で、2026年の海運環境は決して穏やかとはいえません。紅海ではフーシ派の商船攻撃が続き、6月には「イスラエル関連船の紅海通航を全面禁止」との声明も出されました。多くの船社は喜望峰迂回を継続し、リードタイムと燃料コストの上昇を織り込みつつあります。パナマ運河は雨量回復により通航数が持ち直しつつあるものの、エルニーニョ再来時の水位低下リスクは残り、リオ・インディオ新ダム構想など長期対策が動き出しています。海運は、地政学と気候変動の最前線にあります。
海の日に、あらためて考えたいこと
海の日は、単に夏を楽しむ祝日ではなく、「サプライチェーンの原点」を見つめ直す日でもあると思います。船員の高齢化と若手不足、外国人船員への依存、脱炭素燃料(LNG・メタノール・アンモニア・水素)への移行、自動運航船(MASS)や港湾DXなど、海運は静かに、しかし確実に姿を変えています。今年は東京国際クルーズターミナルで「海の日記念行事2026」も開催され、7月は全国で「海の月間」として多くのイベントが行われています。荷主、物流事業者、行政、そして生活者。それぞれの立場から少しだけ海に目を向けてみる。明治丸から150年の節目の海の日に、そんな時間を持てたらと願っています。
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