見出し画像

書くという自己演出


『文藝 2023年秋季号』

◎創作

【舞台(、、)は、戦争―。長編580枚一挙掲載】
町屋良平「生きる演技」
魂だって、演技だろ誰にも本心を見せない元天才子役の生崎と、空気の読めない凡才俳優の笹岡。高校一年生のふたりは、性格は真逆だが、同じように親を憎み、家族を呪い、家族を大事にというこの国が許せない。やがてふたりは「立川米軍捕虜虐殺事件」を文化祭で上演することを決意するが――。「自己演出」がデフォルトの現代を生きる者たちのきらめきを描き、この国の空気に潜む暴力をあぶりだす、芥川賞、野間文芸新人賞の二冠に輝く著者による新たなる代表作。

【文藝賞受賞第一作】
安堂ホセ「迷彩色の男」
〈怒りは屈折する〉。―二〇一八年の冬、都内のクルージングスポットで二十六歳の男が暴行された姿で発見される。事件の背後に浮かびあがる〝迷彩色の男〟を描いた、最注目作家の第二作。

【文藝賞受賞第一作】
日比野コレコ「モモ100% 」
破滅的で自堕落で無計画な日常から一粒の宝石を探し出そうとする「モモ」のあくなき冒険と恋愛。「生き残り方は知っていて、生き方を知らない」十代がこんがらがる、愛すべき文体で綴られたデビュー第二作。

山下紘加「煩悩」
安奈に対して確信めいた感情を持ちたかった。友達でも恋人でもないけれど、私たちはほとんど一つだったから。それなのに―。過剰に重ねる描写が圧倒的熱量を捻り出す、破壊的快作。


◎特集・WE LOVE 藤本和子

【座談会】
岸本佐知子×くぼたのぞみ×斎藤真理子×八巻美恵
「片隅の声に耳を澄ませる 藤本和子と、同時代の女たちの闘い」

【エッセイ】
柴田元幸「お寿司を食べる人 」
井戸川射子「塩は喉を、叫びが喉を」



【短篇】
尾崎世界観「電気の水」
ネット検索に魅入られた少年・藪内賢作。「とんでもなく気持ちいい」検索=脳うがいを中毒的に繰り返すうちに、自分という沼に溺れてゆくのだが……。

滝口悠生「恐竜」
うららかな五月、子どもを保育園に送っていくももちゃんのパパと、ふいちゃんのパパ。ふいちゃんは「恐竜はいない」ことがどうしても腑に落ちなくて―。



◎創刊90周年連続企画3

【鼎談】
村田沙耶香×柴崎友香×西加奈子「どの年齢や時間にも、初めて見える景色がある」
二〇〇〇年前後の同時代にデビューし、それぞれ活躍を続けてきた三人の作家たち。価値観が日々刻々と変化する時代の中で最前線の書き手が見てきた、この二〇年の景色とは。

◎連載

絲山秋子「細長い場所」 【第2回】気配と残像
古川日出男「京都という劇場で、パンデミックというオペラを観る 」【第3回】
山内マリコ「マリリン・トールド・ミー 」【第4回】
朝吹真理子「ゆめ」 【第5回】
島本理生+岩崎渉 「トランス」【第7回】
柳美里 「JR常磐線夜ノ森駅 」【第5回】
町田康「ギケイキ」【第41回】

【季評】 たったひとり、私だけの部屋で 「閉ざされた壁の中」2023年4月~6月 水上文
文芸的事象クロニクル 2023年3月〜2023年5月 山本貴光

◎書評

金原ひとみ『腹を空かせた勇者ども』【評】山崎ナオコーラ
桜庭一樹『彼女が言わなかったすべてのこと』【評】竹田ダニエル
王谷晶『君の六月は凍る』【評】児玉雨子
朝比奈秋『あなたの燃える左手で』【評】皆川博子
若竹千佐子『かっかどるどるどぅ』【評】八木詠美
カレン・ラッセル 松田青子 訳『オレンジ色の世界』【評】谷崎由依
市川沙央『ハンチバック』【評】伊藤亜紗

第61回文藝賞応募規定


安堂ホセ『迷彩服の男』

安堂ホセが読みたいと思って借りた。『迷彩服の男』はすでに読ませる小説だった。 前回の芥川賞候補作『迷彩色の男』が掲載されていたので読んだ。同性愛小説なのだが千葉雅也が書いた作品よりは肉体派というような、千葉雅也の現代思想的な部分を社会的な事件(ニュース)として描いているので彼よりも描写もかなりハードだと思う。そこに殺人事件も絡むからだろうか。小説としてはリアリティを感じるものの喜劇性がないので、それほど好みではなかった。三島由紀夫とか好きな人は面白いかも知れない。

外部性といことではリービ英雄に近いのかもしれない。同性愛と外人であることという主体性のテーマが重なるのでテーマとしては面白い作家性みたいなものはある。もしかしたら芥川賞あるかもしれない(次作で芥川賞)、とこの作品では思わせるのだが、これで取れなかったんだよな。同性愛小説も在日小説も珍しくなくなったからか?(2024年12月28日)

特集・WE LOVE 藤本和子

岸本佐知子×くぼたのぞみ×斎藤真理子×八巻美恵「どの年齢や時間にも、初めて見える景色がある」。現在の世界文学ブームを引っ張る三人の翻訳家と一人の編集者が 藤本和子の再評価を目論む「塩の会(『塩を食う女たち』)」を作ったとか。その成果が藤本和子ブームを呼ぶ。藤本和子は翻訳者だけではなくエッセイでも弱者の立場を聞き書きから語るというエッセイで、今のフェミニズムの走りのような翻訳者だったか。藤本和子のその文体の魅力というか、ブローティガンの翻訳も藤本和子ならではもので、その翻訳文体が村上春樹を生み出し、現在では韓国の作家までに影響を与えているポップさなのだ。それは軽いようで深い。重いのではなく深いのだった。それは『ブルースだってただの唄』というようなブルースの大衆性とアメリカ黒人の中にある根源性に触れたエッセイで感じられる。

若手作家特集

村田沙耶香×柴崎友香×西加奈子「どの年齢や時間にも、初めて見える景色がある」。三人の現代女性作家の鼎談。西加奈子が面白かった。村田沙耶香のナイーブな性格を励ますような大阪のおばさん作家という感じか?柴崎友香はクールビューティーの作家という感じがする。三人三様の作家の鼎談は文学の女子会のような会話だった。

町田康「ギケイキ」は連載小説で、『ゲキイチ1』は読んでいた。現代の憑依文学というような騙りで源義経を引っ張り出す。

町屋良平「生きる演技」若手作家の大作だった。全部読むのは避けた(長編580枚)のだが、時間があれば読んでも面白いか?自己演出という「書く」ということとかYouTubeの過剰演出とか、そういうネット世代の若者の暴力性の姿を捉えた小説か。



いいなと思ったら応援しよう!