リードとネクラスの名前の元ネタ|アークナイツ
焔影リードの新コーデかわいすぎ
前置き
サイドストーリー「灯火をもう一度」はターラー関係のおはなし
ターラー(ヒロック郡)は現実のアイルランドがモチーフ
主要人物である双子のリードとネクラスの設定も、元ネタとしてアイルランド文化を深く参照している
意外とこれについて世間で説明されていない
ので、簡単にまとめて記事にしておく
白Wikiにも似たような記述があるけど、書いたの私なので、転載ではないです
ネタバレを含みます
本名の由来
双子の本名
リード:ラフシニー・ダブリン(Loughshinny Dublinn)
ネクラス:エブラナ・ダブリン(Eblana Dublinn)
ダブリン(Dublinn)は、エブラナとラフシニーの氏
二人はドラコ王族の末裔であり、つまりダブリンは旧王族の家名である
過激派組織ダブリンは、その家名を名乗っていることになる
ダブリン/エブラナ/ラフシニー
いうまでもなく、アイルランドの首都ダブリン(Dublin)が由来
古くからアイルランドの中心を担う、東部の港町
古ゲール語ではdubh linn(ドゥヴ・リン、「黒い沼」)という
9世紀頃の集落の名前
もっと遡ると、2世紀の学者プトレマイオスによる記録がある
アイルランド島東部にエブラナ(Eblana)という集落があったという
これに基づき、長らくエブラナが発展して後のダブリンになったと考えられていた
しかし近年の研究では、エブラナは現在のダブリンぴったりの位置ではないとされている
ダブリン近郊に別の港町ラフシニー(Loughshinny)があり、むしろこの前身であったようである
この説によればエブラナ=ラフシニーである
そしてラフシニーのほうが新しい(→妹)
「ダブリン王家の末裔である2人は瓜二つの双子」という設定は明らかにこの集落名の歴史的関係性を下敷きにしている
コードネームの由来
アイルランドの葦と泥炭
アイルランドには沼地が多い
ボグ(bog)と呼ばれる
ゆえにボグとそれにまつわるものはアイルランドの自然と文化の中で重要な位置を占める
その一つが葦(あし)
ボグに生える草といえばとにかく葦
沼を囲むようにして生い茂る
葦は枯れて死ぬと沼底に沈殿して泥炭(ピート)を形成する
植物の遺骸が分解されずに蓄積された地層
不純物も多いが炭素を多く含有しており、乾燥させれば燃料となる
アイルランドでは今でも日常的な燃料とされる

一つの植物、二つの相
二人のコードネームはこの二つからとられている
リード(Reed)はとりもなおさず葦のことである
ネクラス(Necrass)は死(necro)+芒(grass)の造語と思われる
死せる草、それはこの文脈においては泥炭にほかならない
葦と泥炭は、同じものの二つの姿である
生きている間は葦であり、死ぬと泥炭になる
この【葦‐泥炭】が孕む生と死の二面性が、リードとネクラスのキャラクターの基層を構成している
ありふれたもの

まず葦も泥炭もアイルランドにおいてはありふれたもの
リードにおいては、取るに足らない、力なき者の表象である
ネクラスにおいては、際限なく利用可能な名もなき死者である
私を助けたのは……キミたち? 私の名前……? 「リード」でいい……水辺の葦のような、どうなってもいい存在……。
燃えるもの

次に、泥炭は燃料、炎の源である
リードのアーツは、命の炎で病者を癒す
家庭に暖をもたらし生活を支える、泥炭の生の側面を表す
ネクラスのアーツは、死の炎で死者を燃やして活動させる
死骸を燃料とするという、泥炭の後ろ暗い本質を表象する
命は枯れて消え、残滓のみが徘徊する。
異界との境界
アイルランド神話においては、葦原は彼岸と此岸の境界である
停滞した水と泥に満ちたボグは人の住める場所とはいいがたい
ゆえに「あの世」のイメージを仮託されている
リードにおいては、現世から死者の声を聞く詩人としての役割を表す
リードは物語中で明確に詩人であると設定されている
これはおそらく、アイルランドの大詩人W・B・イェイツの詩「葦間の風(The Wind among the Reeds)」を参照している
この詩では、葦原を吹き渡る風を、死者や精霊といった「あちら側」からの呼び声の象徴として描く
葦は、その声を言葉として伝える媒体、つまり詩人のことである
ネクラスにおいては、死者を操り現世に干渉しようとする
あの世からこの世に出てこようとする流れを象徴する
これは生者の側から死者の声を聞こうとするリードと対比的である一方で、二人は境界に立っているという点で同一である
二人は同じ境界に立ち、反対の方向を向いている

イモルグ祭
イモルグ祭(Imbolg)は2月あたまに行われる春の始まりを寿ぐまつり
祭りを通じて夏の女神ブリギッドが力を取り戻し、冬の魔女カラッハが眠りにつく
このまつりでは、葦を編んで作る聖ブリギッドの十字架を護符として玄関に飾る習わしがある
その際、昨年の古いものを燃やして新しいものをかけ直す

「挽歌が灰に還る時」のクライマックスはこの儀式の構造を踏まえている
ネクラスが倒されてリードが代わりに復活するプロットは、古い葦が燃やされ新しい葦に代替わりする流れそのものである
もしかすればリードがブリギッド、ネクラスがカラッハと重ねられているかもしれない
短絡的にキリスト再臨とかを想起してはいけない

命の炎と死の炎
ここまでの描写を踏まえると、作中で分かりにくい設定も少し分かる
命の炎、死の炎って何
ネクラスはなぜ妹に座を譲ったのか
死の炎は、泥炭から生まれる炎
すでに命を失った抜け殻から燃え上がる
寒さに凍えた人を温め、そして敵を焼き殺すことができる
つまり、死の炎とは物理的で熱を持つ現実の炎の象徴である
しかし、人は温かい家のみに生きるのではなく、敵を滅ぼしてのみ生きていくわけではない
人は、他人を受け入れ、つながりをもち、慈しむ心を互いに持たなければ、本当の意味で生きているとはいえない
仁愛、寛容、融和、共感……
つまり命の炎とは、このような人の心をあたためる優しい気持ちの象徴である
言い換えれば精神の炎
あるいは愛と言ってもいい
ネクラスは死の炎を用いて死者の軍隊を率い、ターラーの独立という現実的な政治的達成を成し遂げた
しかしこれだけではターラー人は生きることはできない
ターラー人が形式だけでなく本質的に自らの足で立つためには、政治的勝利につづいて、(愛もてるリードの導きによる)精神的勝利がもたらされねばならなかったのである
まとめ
アイルランドの独立は、(革命やIRAみたいな)武力闘争が注目されがちだが、しかしむしろ文学や演劇を通じた精神的な闘争の存在感が大きい
それをきちんと理解してプロットに落とし込むライターの手腕に脱帽
モチーフを超解像度で換骨奪胎してキャラを作る手法がうますぎる
たぶん他のストーリーも同じくらいの熱量で書かれているんだろうな
私はアイルランドにしか詳しくないから分からないけど
みんなももっと元ネタ解説してくれよな!
あ、新しい焔影リードの着てるセーターは、たぶんアイルランドの特産品アランニットだよ
女の子が着るとゲボかわいいね
もともとは漁師のおっさんの服だけどね
アイルランド関連の小ネタをときどき白Wikiに書いているので見かけたときは読んでみてね
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