2026年には老化のホールマークス(老化の生物学的プロセス・メカニズム)が12から2つ増えて14になる?!
老化の生物学的プロセス・メカニズムを分類する老化のホールマークスという概念が提唱されています。
これは2013年に『cell』という有名な科学誌にオランダの研究チームが発表した概念で、当初は9つの概念でした。
2023年の総説論文で9つに3つが追加され、現在は12となっています。
そして、2025年には新たに2つを追加するか検討し始めました。
2026年には老化のホールマークが正式に2つ増えて14になるかもしれませんね。
老化のホールマークとは、
・体のあちこちで起きる劣化ポイント
・年を取るときに共通して起こる重要な不具合を整理したリスト
だと考えられています。
この老化のホールマークに基づいて研究・開発している企業も現れました。
今回は検討中の2つを含めて14の老化のホールマークを1つ1つ説明していきましょう。
次のような構成でできるだけ、良く知っている人でもあまりよく知らない人でも理解できるように工夫したつもりです。
1.2.3……と老化のホールマークの日本語訳(原文)
に続いて……
a.一般的な説明
これだと難しくてイメージしにくいので、
b.一言で言うと
さらに
c.例え話
を使って分かりやすくしました。
1.ゲノム不安定性(Genomic Instability)
a.一般的な説明
細胞のDNAが時間とともに損傷し、修復機構の低下と共に変異が蓄積する状態。
これががんや細胞機能低下を引き起こす根本原因の一つです。
b.一言で言うと
DNAが壊れやすくなる。
c.例え話
DNAは「体の設計図」。
若い頃は多少の傷がついてもすぐ修理できますが……
しかし、年を取ると、 設計図に傷が増え、修理係が働かなくなり始めます。
その結果、設計ミスのある細胞が増え、 がんや細胞の働きの低下につながるのです。
2.テロメア短縮(Telomere Attrition)
a.一般的な説明
染色体末端のテロメアが細胞分裂ごとに短くなり、それが限界に達すると細胞が老化(分裂停止)します。
b.一言で言うと
細胞の寿命タイマーが減る。
c.例え話
テロメアは「細胞の回数券」。
細胞が分裂するたびに1枚ずつ減ります。
回数券が無くなると、その細胞はもう増えません。
つまり、細胞にも寿命があります。
分裂できない細胞が増えることは老化が進むことになります。
3.エピジェネティック変化(Epigenetic Alterations)
a.一般的な説明
DNAやヒストンの修飾などが変化し、遺伝子発現の調節が乱れることで、老化に関連した異常な細胞機能を引き起こします。
(ヒストンはDNAを折り畳むタンパク質)
b.一言で言うと
遺伝子の使い方が乱れる。
c.例え話
DNAは変わらなくても、「どの遺伝子を使うか・使わないか」のスイッチがあります。
年を取ると、本来ONの遺伝子がOFFになったり、逆にOFFのはずがONになったりして……
その結果、必要な働きが弱くなり、 体の調整がうまくいかなくなるのです。
4.タンパク質管理の破綻(Loss of Proteostasis)
a.一般的な説明
タンパク質の適切な合成・折り畳み・分解の調節が乱れ、変性タンパク質が蓄積して細胞機能を損なう状態。
b.一言で言うと
タンパク質の品質管理が崩れる。
c.例え話
体はタンパク質でできた工場。
若い頃は不良品はすぐ捨て、正しく折り畳んでいました。
老化すると、壊れたタンパク質が溜まり、ゴミが増えます。
アルツハイマー病なども、この問題と関係します。
5.オートファジー低下(Impaired Macroautophagy)
a.一般的な説明
不要物や壊れた細胞小器官を分解するオートファジー(自食作用)が低下し、細胞内の老廃物が蓄積することで老化が促進されます。
b.一言で言うと
細胞のゴミ回収が止まる。
c.例え話
オートファジーは細胞内の「掃除・リサイクル」システム。
年齢とともに掃除頻度が減り、壊れた部品が残り続けます。
その結果、細胞の中が汚れ、働きが鈍くなるのです。
6.栄養センサーの異常(Deregulated Nutrient Sensing)
a.一般的な説明
インスリン/IGFー1、mTOR、AMPKなどの栄養信号経路が乱れると、代謝制御が破綻し、老化関連疾患のリスクが高まります。
b.一言で言うと
栄養の感じ取り方がおかしくなる。
c.例え話
体には「今は食べ過ぎか?足りないか?」を判断するセンサーがあります。
老化すると、食べ過ぎでも「足りない」と誤認し、成長モードが止まりません。
それで、糖尿病・動脈硬化・老化の加速につながるのです。
7.ミトコンドリア機能不全(Mitochondrial Dysfunction)
a.一般的な説明
細胞のエネルギー供給源であるミトコンドリアの機能が低下し、エネルギー不足や酸化ストレスが増加します。
b.一言で言うと
エネルギー工場が老朽化。
c.例え話
ミトコンドリアは細胞の発電所。
年を取ると、発電量が減り、排気ガス(活性酸素)が増えます。
そうなると、疲れやすい・筋力低下・老化が進行するのです。
8.細胞老化(Cellular Senescence)
a.一般的な説明
分裂能力を失った老化細胞が増え、周囲の正常細胞にも悪影響を与える炎症性シグナル(SASP)を放出します。
b.一言で言うと
働けなくなった細胞が居続ける。
c.例え話
老化細胞はもう働かない、しかし、死にません。
しかも、周囲に炎症物質をばらまく結果、周りの健康な細胞まで調子を崩します。
9.幹細胞枯渇(Stem Cell Exhaustion)
a.一般的な説明
組織修復や再生の担い手である幹細胞が減少し、損傷組織の補修能力が低下します。
b.一言で言うと
修理するものが足りなくなる。
c.例え話
幹細胞は体の修理係。
年齢とともに、数が減り、元気が無くなります。
それで、傷が治りにくくなり、筋肉や皮膚が再生しにくくなるのです。
10.細胞同士の連絡不良(Altered Intercellular Communication)
a.一般的な説明
サイトカインやホルモンなどのシグナルネットワークが乱れ、慢性炎症や機能調整の障害につながります。
b.一言で言うと
体内の連絡ミス。
c.例え話
体はホルモン・神経・免疫で情報をやり取りしています。
老化すると、指示が届かない、間違った命令が出る結果、全体の調和が崩れるのです。
11.慢性炎症(Chronic Inflammation)
a.一般的な説明
低レベルの長期的な炎症が進行し、全身の組織機能を損ねる状態。
加齢関連疾患の共通因子です。
b.一言で言うと
体がずっと軽い火事の状態。
c.例え話
本来、炎症はケガを治すための一時的反応です。
老化はずっと弱火で燃え続ける状態。
これが動脈硬化・がん・認知症の共通原因になります。
12.腸内細菌の乱れ(Dysbiosis)
a.一般的な説明
腸内や他の微生物バランスが崩れ、免疫・代謝・炎症の制御が悪化します。
b.一言で言うと
腸内環境のバランス崩壊。
c.例え話
腸内細菌は消化・免疫・炎症制御に関与します。
老化で良い菌が減り、悪い菌が増え……
全身の老化を進めます。
以上の12が現在の老化のホールマークです。
次に拡張を検討している2つを紹介しましょう。
13.細胞外基質の劣化(Changes in ECM)
a.一般的な説明
細胞の足場であるECM(Extracellular Matrix=細胞外マトリックス、例:コラーゲン)が劣化し、細胞の支持・シグナル伝達が歪むことで器官レベルの老化が進みます。
b.一言で言うと
体の骨組みが硬くなる。
c.例え話
ECMは細胞を支える足場。
年を取ると、硬くなり、しなやかさが失われます。
すると、血管が硬くなり、肌の張りが無くなるのです。
14.心理社会的孤立(Psychosocial Isolation)
a.一般的な説明
社会的孤立や慢性的なストレスが免疫・代謝・神経系に悪影響を与え、老化プロセスを加速させる要因として新たに提案されています。
b.一言で言うと
孤独・ストレスが老化を進める。
c.例え話
近年注目されている新しい視点です。
孤独や慢性的ストレスは炎症・免疫低下・脳の老化を引き起こします。
以上をまとめますと……
老化は1つの原因で起きるのではありません。
体のあちこちで起きる不具合の積み重ねで、それを整理したのが、老化のホールマークです。
だから、運動・食事・睡眠・人間関係が全て重要になるのですね。
最後に老化についてのオーディブルを2つ紹介しましょう。
2つとも老化・アンチエイジングの分野でバイブル的な存在です。
『LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界』
『医者が教える最強の不老術 細胞レベルで若返る食事と習慣のすべて』
『LIFESPAN』は以前の記事で内容を説明し、著者のシンクレア教授の最新の研究内容も紹介しました。
『医者が教える最強の不老術』については次回、紹介しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は1月8日(木)午前10時です。
今回からは月・木(月が祝日の場合、火・金)の週2回の予定です。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
