『食欲の攻略書ーなぜ私たちは食べ過ぎてしまうのか』体重のセットポイント理論を解説
今回は肥満減量外科手術の世界的権威アンドリュー・ジェンキンソン医師が書かれた『食欲の攻略書ーなぜ私たちは食べ過ぎてしまうのか』を紹介しましょう。
本書は11ヶ国以上で刊行し、世界的ベストセラーとなりました。
また、本書のテーマの体重のセットポイント理論で、短期的なダイエットが必ずリバウンドすることも解説します。
私はアマゾンキンドルで購入しました。
本書は紙の本だと471ページとかなりボリュームがあります。
私は以前に書いた記事で『医者が教える最強の不老術 細胞レベルで若返る食事と習慣のすべて』を紹介しました。
こちらは紙の本で460ページですから、同じくらいあります。
ちなみにアマゾンキンドルの価格は『食欲の攻略書』が1,940円、『医者が教える最強の不老術』が1,980円です。
あまりにも膨大かつ網羅的でありますので、まず全体として各章の概要を書きます。→A
次に本書のテーマである体重のセットポイント理論について第10章を中心にまとめました。→B
本書を読むきっかけとなった本書紹介の動画がありますので、最後にリンクしています。→C
興味のあるところだけでも、ツマミ読みして下さい。
A 全体の概要
第1部 体が太る仕組み
第1章 初心者のためのメタボロジー
体重は意思ではなく、視床下部を中心とする神経系とホルモン(レプチン・インスリン)によって制御されている。
脂肪細胞から分泌されるレプチンが体脂肪量を脳に伝え、エネルギー消費と摂食行動を調整する。
この恒常性機構があるため、体重は一定範囲に戻ろうとする。
第2章 肥満をめぐるタブー
体重や肥満傾向は遺伝的要因の影響を強く受け、レプチン感受性やインスリン反応性にも個人差がある。
肥満は怠惰ではなく、生物学的特性と環境の相互作用の結果である。
社会的偏見・差別が問題の理解を妨げている。
第3章 『ザ・ビゲスト・ルーザー』※で痩せた人たち
※超肥満者のダイエットドキュメンタリー
急激な減量はレプチン低下とグレリン上昇を引き起こし、強烈な空腹感を生む。
同時に基礎代謝が低下し、インスリン感受性も悪化する。
その結果、リバウンドは生理学的にほぼ必然となる。
第4章 なぜ私たちは食べるのか
食欲はグレリン(空腹ホルモン)とペプチドYY・GLP-1(共に満腹ホルモン)のバランスで決まる。
これらは意思では制御できず、腸と脳のシグナルで調整されている。
満腹感の障害は肥満の中心的問題である。
第5章 大食いの正体
肥満ではレプチン抵抗性が生じ、脂肪が十分あっても脳が満腹を認識しない。
TNF-αなど炎症性サイトカイン(タンパク質)がレプチンシグナルを阻害する。
その結果、過食が慢性化する。
第6章 最後の手段
減量手術は胃を小さくするだけでなく、グレリン低下やペプチドYY・GLP-1増加をもたらす。
これにより食欲制御ホルモン環境が根本的に変化する。
手術の成功はホルモン再設定による。
第2部 肥満をもたらす要因
第7章 偉大なるシェフたち
伝統的な料理は血糖値を急上昇させにくい構成になっていた。
加工食品の普及によりインスリン分泌が過剰になった。
食文化の変化が肥満を加速させた。
第8章 問題の核心
カロリー理論中心の栄養学はホルモン制御を軽視してきた。
インスリンの役割を無視した結果、食事指導は失敗した。
肥満は量でない、質とホルモンの問題である。
第9章 オメガ脂肪酸の真実
オメガ6過剰とオメガ3不足は炎症とインスリン抵抗性を高める。
これによりTNF-αやIL-6(インターロイキン6)という炎症性サイトカインが増加する。
脂肪酸バランスは体重調節に深く関与する。
第10章 血糖値ジェットコースター
高GI食は血糖値急上昇とインスリン過剰分泌を引き起こす。
血糖値低下時にグレリンが上昇し、再摂食を促す。
この繰り返しが体重のセットポイントを上昇させる。
第11章 フレンチパラドックス
フランス人はインスリンを過剰刺激しない食事様式を持つ。
食事時間と量がペプチドYYやGLP-1分泌に影響する。
文化がホルモン環境を作る。
第12章 奇跡のダイエット本
短期ダイエットはレプチン低下とコルチゾール上昇を招く。
これが脂肪蓄積を促進する。
ダイエット文化そのものが肥満を生む。
第13章 太る国と痩せる国
社会環境は食欲ホルモン分泌パターンを規定する。
睡眠不足やストレスはインスリン抵抗性を悪化させる。
個人努力より環境要因が支配的である。
第3部 体重管理の攻略
第14章 準備開始:自分でやろう
食環境を整えることで、グレリン刺激を減少させる。
視覚・嗅覚刺激が食欲ホルモンに影響する。
意志力に頼らない設計が重要である。
第15章 しっかり食べてしっかり睡眠
睡眠不足はレプチン低下とグレリン上昇を引き起こす。
コルチゾール増加がインスリン抵抗性を悪化させる。
睡眠は最重要の代謝調整因子である。
第16章 あなたのブルーゾーン
筋肉量増加はインスリン感受性を改善する。
ミトコンドリア活性化が脂肪燃焼を促進する。
結果として体重のセットポイントが徐々に低下する。
おわりに なぜ食べ過ぎてしまうのか
私たちはホルモンと環境に従って行動している。
過食は意志の失敗ではない。
体の仕組みを理解することが解決への第一歩である。
B.体重のセットポイント理論
ここでは本書の本書のテーマである体重のセットポイント理論について第10章を中心にまとめます。
短期的なダイエットは体重のセットポイントが上昇するため、必ずリバウンドするというのが本書の主張です。
その前に、第10章を読んでいて、意外に感じたことがありますので、その部分だけ引用します。
ほとんどの人の体内をめぐっている血液の量は5リットルだ。そのうち糖分はどれくらいだろう。(中略)5リットルもの血液の中にはたった小さじ1杯分の糖しか含まれていない。
血液中の糖分が小さじ1杯ってこんなに少ないの!と驚きました。
コーラ500mLが角砂糖14個分ですから、5Lで140個分であることを考えると、本当に少ないです。
少し脱線しましたので、元に戻ります。
それでは体重のセットポイント理論の解説に進みましょう。
(セットポイントというのはサーモスタットの温度設定のように脳が設定した体重で、減っても増えても結局はセットポイントの体重になるというものです。)
最初に一文でまとめると……
血糖値とインスリンが「体重のセットポイント(設定値)」を決めている。
体重のセットポイントは、意志の強さや摂取カロリーの単純な多寡によって決まらないもので、血糖値とインスリン(ホルモン環境)によって調整されています。
肥満は「食べ過ぎの結果」としてではなく、「血糖とホルモン制御が乱れた状態」として理解する必要があります。
炭水化物を含む食事を摂ると、血液中のブドウ糖が増加し、血糖値が上昇します。
これに反応して膵臓から分泌されるのがインスリンです。
インスリンは血糖を細胞内に取り込ませる役割を担うと同時に、余剰エネルギーを脂肪として蓄える指令を出すホルモンでもあります。
本来は必要不可欠な仕組みですが、現代の食生活ではこのインスリン分泌が一日に何度も過剰に繰り返される傾向があります。
精製された炭水化物や砂糖を多く含む食品を摂取すると、血糖値は急激に上昇し、その後に急降下します。
この大きな変動が、いわゆる「血糖値ジェットコースター」と呼ばれる状態です。
血糖値が急降下すると、脳はそれをエネルギー不足、つまり生命の危機として認識し、強い空腹信号を発します。
その結果、体内に十分な脂肪エネルギーが蓄えられているにもかかわらず、再び食べる行動へと駆り立てられます。
このような状態が慢性的に続くと、体は高インスリン環境に適応し、脂肪を蓄える状態が通常であると認識するようになります。
体重のセットポイントは体脂肪量でなく、インスリンが支配する代謝環境によって形成されます。
インスリンが頻繁に高い状態では、脳はその体重を安全で適正な状態と学習し、セットポイントを高い位置に固定してしまいます。
さらに、インスリンが慢性的に高いと、脂肪細胞はエネルギーを外へ放出しないようになります。
その結果、体脂肪は十分に存在しているにもかかわらず、脳や筋肉は使えるエネルギーが不足していると誤認します。
このため、空腹感が持続しやすくなり、肥満者ほど常に食欲を感じるという矛盾した状況が生じます。
体重を下げるために重要なのは、単純に摂取カロリーを減らすことではなく、血糖値の変動を穏やかにし、インスリン分泌を安定させることです。
血糖値の乱高下が抑えられることで、脳はエネルギーが十分にあると判断できるようになり、結果として体重のセットポイントも徐々に引き下げられるようになります。
体重管理の本質は、脂肪と闘うことではなく、ホルモンと脳の誤作動を修正することにあります。
C.『食欲の攻略書』の要約動画の紹介
私が本書『食欲の攻略書』を読むきっかけとなった動画を紹介します。
この本書を要約した動画が素晴らしい内容でしたので、動画を視聴した直後にアマゾンキンドルで購入して、読み始めました。
読もうと決めて1分後には読むことができて、アマゾンキンドルは本当に便利です。
また、事前にこの動画を視聴していたことが、本書の理解を深めてくれたと感謝しています。
ひまわり健康チャンネル
【健康長寿の天然薬 この凄い一冊であらゆる老化が止まります!】について現役医師がわかりやすく解説します
私の解説よりも数倍も分かりやすくまとまっていますので、せひ視聴してみて下さい。
私はアマゾンキンドルで買いましたが、紙の本が良い人はキンドルよりも40円しか高くありませんので、本書は紙の本で買うのもお得かもしれません。(他の本は紙の方がキンドルよりも1割ほど高いので)
本記事は健康に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断、治療、予防を目的とするものではありません。
体調に不安がある場合は、医師等の専門家にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は2月16日(月)午前10時です。
体重のセットポイント理論について詳しく解説します。
少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。
