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女のひとり旅 念願の軽井沢 -気まぐれな日誌(2026年3月22日)

昼過ぎ到着!

 新幹線を降りると,一瞬にしてひんやりとした空気に包まれました。 
 到着早々,無意識のうちに,思いっ切り深呼吸。
 (ああ,冷たくて気持ちがいい)

 ついに軽井沢,そう文学少女(いまは少女ではない(*^_^*))にとっての憧れの地。
 今,私はそこに立っているのです。

 大気は冷たく,しかも限りなく澄んでいます。東京の美味しくない空気とは大違い。不純物が何一つ混ざっていません。

 私は東北出身ですが,東北の寒さとは明らかに違っています。東北の寒さが日本古来のそれだとすると,ここのはエレガンスな冷涼さと言えるでしょう。

 ホームから上階の改札に向かうエスカレータの前には,新幹線から降りてきた人たちで長い行列ができていました。列に並ぶと,周囲から聞こえてくるのは中国語ばかり。噂には聞いていましたが,インバウンドで賑わっているようです。

軽井沢駅前にて

 とにかく宿へ直行。荷物を置いて身軽になります。


どうしても行きたいところ

 軽井沢で行きたいところと言えば,まずは軽井沢銀座界隈。
 芥川龍之介など多くの文豪が逗留したつるや旅館は外せません。それから,万平ホテル。ハッピーバレー。いずれも文学の聖地です。
 あとはジョン・レノンがフランスパンを買いに来てきていたというフランスベーカリーさん。少し足を伸ばして堀辰雄文学記念館も行ってみたい。

 そもそも軽井沢にあこがれたのは,堀辰雄の数々の小説がきっかけです。
 特に『風立ちぬ』。

【風立ちぬのあらすじ】
 
どういう小説かというと,有名なのでご存じの方も多いと思いますが,簡単に言えば,主人公の「私」が「節子」という女性とK村(モデルは軽井沢)で知り合い,婚約。しかし節子は肺病を患い,F(じつは信州富士見高原)のサナトリウムで療養生活をします.その間も「私」と節子は愛を深めていきますが,節子はこの世を去ってしまいます.その後,主人公は節子と出会ったK村に滞在し,節子を追想しつつ,自らを見つめる,といったものです。精確なことは原作をご覧ください。
  

 思い出話になりますが,この小説を読んだときは,丁度,私自身高校2年生で,遺伝性の心臓病が発症し,相当なショックを受けていたときでした。節子と自分が重なり合ってしまい,涙まみれになって,ぐしゅぐしゅ鼻をすすらせながら本を読み進めました。

 不安と悲しみで,いてもたってもいられなくなり,我慢ができず,東京にいる姉に電話をしました。当時,私は東北の実家にいて,姉は東京の大学の学生でした。
 こう言っても到底理解されないでしょうが,妹なのに私は3歳年上の姉に密かなる片思いの恋心をもっていたのです(過去形).

 姉にも私の病のことは知らされていて,電話口で鼻水をすすって話している私に,

 『冬ちゃん,今,そんなもの読んじゃダメ。あんたはそうでなくともネガティブ指向なんだから。お医者さんの言うとおりにしていれば,全然問題ないんだよ。心配ないよ。お姉ちゃんが保証する。』

 姉は医学の専門家ではありません。しかし姉の根拠のない「お姉ちゃんが保証する」という言葉で,それまで胸を圧迫していた重石が消えたかのように,急に気持ちが軽やかになりました。


まずは軽井沢駅前散策

 暗い話になってしまったので,話を元に戻します。

 行きたいところは数多(あまた)ありますが,お楽しみは明日にして,今日はとりあえず,軽井沢駅周辺を散策しました。

 職場の同僚に軽井沢に行くと話したら,

 『駅前に T-SITE という新しい商業施設が3月にオープンしたから,どんなものか見てきてね

と宿題を出されてしまいました。
 行先なんか言わなければよかった,と思いましたが後の祭りです。

 とりあえず,気になる宿題を最初に片づけておこうと思い,T-SITE に。


できたてのほやほや,T-SITEを散策

 T-SITE は,面白そうなお店がいっぱい並ぶエリアでした。その中でひときわ凄い行列のできている店がありました。何だろうと思って店を覗き込むと,「I'm donut ?」とあります。「ドーナッツ屋さん?」と思いきや,案の定,ドーナッツ屋さんでした。

 帰りに買っていこう,とミーハーな私は考え,とりあえずスルー。

 他の店をつらつら眺めていると,「わざマート軽井沢店」が目に入りました。なかなか面白そうです。全国のめずらしいものがいろいろと陳列されているようです。そこで,店に入り,夜ちょっとつまめそうな菓子「薪窯ラスク」を購入。

 さらにいろいろな店を探索しました。

 しかし,ずっと頭に引っかかっているのが同僚からの宿題です。

 (うーん。同僚には何てレポートしよう。)

 頭の中でレポート文を作成しつつ,さっきのドーナツ屋さんに向かいました。

(あれ行列がなくなっている)

 今がチャンスとばかり,早足で店先に急ぎました。しかし,何という事でしょう。売り切れで閉店です!

 帰りに買おうとしたのが判断ミスでした。ちょっと後悔しつつも

(まあ,ドーナッツだからいいか)

と自分を慰めて,T-SITE を後にしました。


夜,『風立ちぬ』を再読

 その後,駅の反対側の軽井沢・プリンスショッピングプラザを散策。帰りにその中の「デリフランス」というパン屋さんで夕食にするサンドイッチを調達して,宿に帰りました。

 そのパンで夕食を済ませてしまうと暇になったので,姉から差し止められている禁書『風立ちぬ』をおそるおそる開きました(電子書籍ですが)。

 今なら大丈夫。私には確信がありました。

 そして,風立ちぬの主人公の「私」が軽井沢の宿で,リルケの鎮魂歌を読んだように,私は『風立ちぬ』を読み始めました。

 しかし,早速,序曲の中のあの有名な言葉に出くわします。


風立ちぬ、いざ生きめやも

 そう,そのとおりなのです。

 すると,昔この本を読んでいた自分自身の姿が,まるで映像のように頭に思い浮かびました。過去の自分を今の自分が横で眺めているのです。

そのころの不安な自分を思い出して,もう目に涙があふれていました。

 姉の言うこと守って,私にとっての禁書を開くべきではなかったのかもしれません。でも,禁書の誘惑には勝てませんでした。

 それから少し読んでいたのですが,だるくなってきたので,もうそろそろ寝ます。

 明日は早起きして,軽井沢銀座界隈を散策。たのしもう。


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前回とこれまでの日誌:



挿絵は Adobe Firefly + Gemini2.5 +Veo3.1Fast を使って作成したイメージ画像です。なお軽井沢駅の写真(筆者撮影, 2026/3/22)も使用.
本作品の登場人物は実在のものと関係ありません。


© Copyright 冬魅 Aequus, Mar., 22, 2026.
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