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【交々草 ~銀色鯨の叙情詩エッセイ~】第十二段 『傷を癒す命や心』

【銀色詩】 ウジ虫合唱曲

 愚痴愚痴 陰口 悪口 聞こえる言葉の刃物が
 ぼくをめった刺しにしてくるよ あちこち傷だらけだ
 特別取り柄などないのに 「きみはきみらしく」って言われても
 なんか胡散臭く思えるよ ごめんね こんなぼくで

 重ねて 連ねて 編み込んだ猜疑の網が
 いつの日も ぼくの足をとるから ぼくを絡めとるから

 明日が来なければ 苦しくもないけど
 昨日を生きてきた 意味も死んでしまう
 それだけの理由で おめおめと生きてる
 くだらない命を 認めてくれますか


 無視無視 弱虫 泣き虫 助けを求める悲鳴を
 わたしは見殺しにしてきたよ うじうじ腐りかけだ
 心底ろくでもないのに 「どうぞお大事に」って言われてさ
 なんか申し訳ない気分だよ ごめんね わたしなんかで

 重ねて 続けて 犯してきた罪の縄が
 いつまでも わたしの手を縛るから わたしの首絞めるから

 諦めてしまえば 悔しくもないけど
 幸せじゃないなら 死んだも同然だ
 それをわかりながら しがみついて生きる
 醜いウジ虫を 赦してくれますか


 重ねて 束ねて 紡いできた意地の絹が
 いつの日か ぼくを包み込むなら わたしを抱きしめるなら

 昨日を生きてきた 幸せじゃないまま
 明日が来なければ 諦めてしまえば
 考えてるうちに 追いつめられてくよ
 だけどそんな日々も かけがえがないなら
 くだらなくてもいい しがみついて生きよう
 命の輝きを ぼくも わたしも もってる
 かろうじてもってる

【解説交々】 傷を癒す命や心

 わたしは、この詩のなかで、「ウジ虫」という言葉や存在を、とても尊いイメージで扱っているつもりです。

 わたしが「ウジ虫」という生き物のことを知ったのは、子どもの頃……『はだしのゲン』というマンガで、でした。
 戦争によってひどい火傷を負った犠牲者が、その包帯の下で「ウジ虫」をわかせて、医者や家族がその「ウジ虫」をピンセットで毎日まいにち摘まんでとる……というシーンを見て、筆舌に尽くしがたい感情になったのを覚えています💦

 しかし、大人になって、きちんとした文献を読み……「マゴットセラピー(Maggot Therapy)」という、特定のハエの幼虫(=ウジ)を創傷部位に投与して治療する方法があることを知りました。
 とくに壊死組織がある慢性創(糖尿病性潰瘍、褥瘡など)に対して、選択的に壊死組織だけを分解・除去(デブリードマン)してくれるという特徴があるらしいです。

① 選択的壊死組織除去
 壊死した皮膚や組織だけを溶解し、生きた組織を傷つけずに除去する能力がある。これはマゴットの口から出される消化酵素によって実現される。

② 抗菌作用
 ウジの分泌液には抗菌ペプチドやリゾチームが含まれており、細菌の増殖を抑制する効果があることが確認されている。

③ 創傷治癒促進
 マゴットが傷に刺激を与えることで、線維芽細胞の増殖や肉芽形成が促進される。

④ 生体清掃(バイオクレンジング)
 壊死組織だけでなく、異物や感染性物質の除去にも寄与する。

 コウモリやムジナなどの擁護派になる頭のおかしいわたしは、「ウジ虫」も擁護したい……。(まぁ、わたしが擁護しなくても「ウジ虫」は医療界で名誉を挽回しているようですが……)
 見た目に「ウッ……」と拒絶反応を示してしまいそうな「ウジ虫」も、精一杯生きている。そして、すごい力をもっている。

——あなたの目に映る命ある生き物は……いま、正しい評価がなされているだろうか……。

 そんな風に、問い/問われるような事例だと思います。

 この、『ウジ虫合唱曲』という詩は、わたしの頭のなかで、誰かが切なくも元気に歌っている「曲」を、そのまま文字にしたものです。
「一番」は男性? 男の子? 少年? が歌っていて。
「二番」は女性? 女の子? 少女? が歌っていて。
 その後の「大サビ」は、その二人が交互に……または、声をそろえて歌っています。
 その二人の姿を見ながら、ライブ会場みたいなところで観客(?)が手をあげて左右に大きく振っている光景が、頭に浮かんでいます。わたしにはその手の動きが、精一杯に生きようとする「ウジ虫」に見えたので、『ウジ虫合唱曲』と名付けました。

 一部の世間や社会では、忌避されたり、無価値のように思われたりするような存在であっても……精一杯生きていて、だれかの傷を癒す、すごい力をもっているかもしれない……。そうして助けられた命や心が、また別の命や心を助けていくことができたら……それは、とても素敵な世界ではないかな……と思ったりします。

 どうでしょうか。これを読んでくださったみなさんは……どんな色の草を生やしてくれますかね。

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 According to 三和大悟(銀色鯨) 
#創作大賞2026 #エッセイ部門

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三和 大悟(銀色鯨) この「お話」や詩のなかで、 言葉にならなかったなにかが残ったとき、 その置き場所として、そっと置いてくださって構いません。