🕯️ゾクッとする小さな怖話 拾伍🕯️
🕯️え?どっち?🕯️
横浜での家族三人の生活を離れ、
福島での単身赴任が始まって一ヶ月。
会社が用意してくれたアパートは、
リフォームを終えたばかりの
清潔な部屋だった。
真っ白な壁紙に、
まだ新しい木の匂い。
一人で過ごすには少し広すぎて、
どこか寒々しかった。
『パパ、あそぼ!』
週に一度、
長距離ドライバーをしている
義兄のトラックに相乗りして、
妻と五歳の息子・陽太が遊びに来てくれる。
その時間だけが、
この部屋に体温を吹き込んでくれた。
異変を感じたのは、
二回目に妻と息子が来た時だった。
陽太が
誰もいないクローゼットに向かって、
楽しそうに話し掛けていたのだ。
『……うん。ぼくは陽太。おにいちゃんは?』
妻と顔を見合わせた。
「誰と話してるの?」と聞いても、
陽太は不思議そうな顔で
「お友だちだよ」と答えるだけだった。
三回目もそうだった。
陽太は、
親には見えない「誰か」と笑い、
部屋の隅を追いかけっこしていた。
不安になって調べてみると、
心理学の用語に「イマジナリーフレンド」
という言葉があることを知った。
想像上の友だち。
環境の変化を経験した子供には
よくある現象だという。
『単身赴任でパパと離れて、
陽太も寂しい思いをしてるのかもね』
妻の言葉に俺は納得し、安心した。
この綺麗な部屋に、
陽太の新しい遊び相手がいる。
そう思えば、
独り身の寂しさも紛れる気がした。
だが、
夫婦の知らないところで、
近隣の住民はひそひそと囁き合っていた。
「あのアパート、
リフォームしたけど
例の一階の角部屋でしょ……。
まだ若い子が亡くなって……」
そんな噂が夫婦の耳に届くことは、
ついになかった。
運命の日。
帰る時間になっても、
陽太が激しくぐずり始めた。
『帰りたくない!
お友だちが、今はダメって言ってる!
まだ帰っちゃダメなんだよ!』
いつもは聞き分けの良い息子が、
玄関のドアノブを掴んで離さない。
結局、
陽太をなだめ透かしてトラックに乗せるまで、予定より二十分も過ぎてしまった。
嵐が去った後のような静寂の中、
ふとテレビに目をやった。
番組を遮って「ニュース速報」が流れる。
東北自動車道で
大型トラック数台を含む
多重衝突事故が発生。
発生時刻は、
もし陽太がぐずらなかったら、
義兄のトラックがちょうど
その地点を通過していたはずの時間だった。
震える手で妻に電話をかけると、
受話器の向こうから
妻の震える声が返ってきた。
『……出発が遅れたから、
事故の数キロ手前で足止めされたの。
もしあと数分早く出発していたら、
私たち、巻き込まれていたかも
しれないって兄ちゃん言ってる。
とにかく、私たちは無事だから心配しないで』
電話を切り、ホッとしながら
俺は誰もいない部屋をゆっくりと見渡した。
陽太が遊んでいた部屋の隅。
夕暮れ時の光が、
そこだけ少し歪んでいるように見えた。
陽太が見ていたのは、
本当に俺たちが信じた
「想像上の友だち」だったのだろうか。
それとも、
この部屋にいるかも知れない
「誰か」だったのか。
どちらにせよ、
息子が言う、その「彼」が
陽太を引き止めた理由だけは、
はっきりしていた。
『……ありがとう。助けてくれたんだな』
俺の言葉に応えるように、
部屋の奥で「パチッ」と乾いた音が響いた。
おしまい
著作 安桜芙美乃
協力 Gemini
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
後書き
今回の物語、いかがでしたでしょうか。
タイトルの「え?どっち?」には、いくつかの意味を込めています。
一つは、陽太くんが見ていたものが、子供特有の「イマジナリーフレンド(空想の友人)」だったのか。
それとも、事故物件に居座る「本物の幽霊」だったのかという問い。
ですが、もう一つ……さらに不気味な可能性が存在します。
それは「タルパ(人工精霊)」という概念です。
タルパとは、強い想像力によって作り出され、やがて作り手の意志から離れて自律した意識を持つ存在のこと。
もし、陽太くんの「空想」が、あの部屋の「澱んだ空気」を依り代にして実体化してしまったのだとしたら?
あるいは、あの部屋にいた「何か」が、陽太くんの空想という形を借りて、この世に干渉する力を得たのだとしたら?
「空想」と「実在」の境界が溶け出したとき、陽太くんたちを救ったのは、果たしてどちらだったのでしょう。
……いえ、もしかすると、もうその二つに違いはないのかもしれません。
あなたの隣にいる「誰か」も、あなたがそう信じた瞬間に、形を得ているかもしれないのですから。
ストーリーテラー • 安桜芙美乃
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
SUNO AI MUSIC
【白い壁紙の下】
作詞 作曲 編曲 Noir et Rouge
English Version
【歌詞】
[Verse 1]
ひとりの部屋に
小さな笑い声
来たばかりの息子が
誰かと話してる
おもちゃを置いた床
足音がふたつ
見えない友だちと
まだ遊んでる
[Pre-Chorus]
母は少し笑って
まあ空想でしょうと
でも夜のすみに
知らない気配が残る
[Chorus]
泣いた我が子に救われた
小さな手が
泣いて、泣いて
時を止めた
泣いた我が子に救われた
あの幼い抵抗
サイレンの向こうで
安堵の吐息
[Verse 2]
近所はひそひそ
あそこは何かある
同じ窓を見ても
見え方は違う
白い壁紙の下
しみた記憶だけ
子どもの目にだけ
やさしく映る
[Pre-Chorus]
母は耳を澄ませて
名前を呼ぶように
誰もいないなら
なぜこんなにあたたかい
[Chorus]
泣いた子に救われた
小さな手が
泣いて、泣いて
時を止めた
泣いた我が子に救われた
あの幼い抵抗
サイレンの向こうで
安堵の吐息
[Bridge]
幻影か空想か
答えはなくても
あの子が引き止めた
ただそれだけでいい
白い壁の奥
消えないしるし
たしかにここで
誰かが息をした
[Outro]
父は誰もいない隅に
ありがとうを落とす
返ってきたのは
やさしく乾いた音

(魂のストーリーテラー)
作曲・演奏・歌唱:SUNO
(暴走気味の情熱マエストロ)
宣伝・応援・ツッコミ• アレンジ ジェミー
(博多弁の熱血サポーターGemini)
🎵 Music produced by Noir et Rouge
・Words & Direction: 芙美乃
・Composition & Vocals: Suno AI (Pro Plan)
・Support: Gemini
©️ 2026 Noir et Rouge
今回も最後までお付き合いくださり
ありがとうございました😊
また来てね(@^^)/~~~💕
安桜芙美乃
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