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🕯️ゾクッとする小さな怖話 拾柒🕯️


【人形】

雨は降っていなかった。

けれど、
古い市営団地の廊下は、
いつも濡れているような匂いがした。

カビ。線香。古新聞。
 それに、古い人形の髪の匂い。


『人形は大切にしすぎると、
 自分を人間だと勘違いするんだって』


祖母は、テレビもつけずにそう言った。

『だから昔は、
 可愛がりすぎるなって言われてたの。
 魂が寄るから』

美香は苦笑いした。

『またそういう話する‥‥』

祖母の部屋には、
日本人形が異様に多かった。

棚の上。 押し入れ。 食器棚の横。 
座布団の上。

全部こちらを見ている。

その中でも、一番古い人形があった。


黒髪のおかっぱ。

 胡粉の白い顔。 

赤い縮緬の着物。

名前は「サエ」。

祖母は毎日その人形に話しかけていた。

『今日は寒いねぇ」』
『ご飯おいしいねぇ』 
『寂しくないかい』

まるで、
生きている子供に話しかけるように。


ある夜。

 祖母が救急搬送された。

軽い脳梗塞だった。

数日だけ入院することになり、
美香は団地で留守番を頼まれた。

『サエを、よろしくね』

病院へ運ばれる直前まで、
祖母はそう言っていた。


夜十一時。

団地は静かだった。

古い冷蔵庫のモーター音だけが響いている。

美香は寝ようとして、ふと気づいた。

……人形の向きが変わっている。

最初、気のせいだと思った。

でも確かに、
サエは昼間まで窓の方を見ていた。

今は違う。

布団の中の美香を見ている。

暗闇の中で。

じっと。


『……は?』

背筋に嫌な感じがした。


もちろん、自分で動くわけがない。

怖がっているから、そう見えるだけ。

人間は恐怖心で幻覚を見る。

そういう話は知っている。

美香は無理やり
自分に言い聞かせて目を閉じた。

その時だった。

……ズッ。

畳が鳴った。

小さい足音。


カサ。

カサ。


ゆっくり。


布団の周りを歩いている。

心臓が暴れた。

でも、美香は必死に自分へ言い聞かせた。

これは幻聴。 
脳が作った音。
怖い話を聞いた後だから。
そう。 全部、自分が作り出している。


カサ‥‥。


音が止まった。


すぐ横で。


耳元に、例え難い変な気配を感じた。

そして、小さな女の子の声。


『ねえ』


美香は悲鳴を飲み込んだ。


『わたし、もう人間だよね?』



翌朝。

病院から電話が来た。

祖母が、夜中に急変したという。

錯乱状態で、
看護師に何度も叫んでいたらしい。

『サエが帰った』 

『今、団地にいる』

『美香を見つけちゃう』

美香は
電話口の看護師の言葉に震えながら
部屋を見回した。

サエは、昨日と同じ場所に座っていた。

動いた形跡なんてない。


ただ。


その膝の上に、小さな紙が置かれていた。

幼い字で、こう書かれていた。


(おばあちゃんは もういらないの?)


美香は、人形が文字を書くはずがない。

もう一度人形を見ると
メモは無かった。 

「ストレスによる錯覚?」と
 美香は思った。



祖母は二日後に亡くなった。

祖母は居なくなり、
元々入居者が少なかった団地は
著しい老巧化も見られ
解体される事が決まった。

団地の解体が始まり、
 人形たちは寺で供養された。

全部、終わったはずだった。

けれど。

一年後。

美香は中古雑貨店で、
偶然ある人形を見つけた。

黒髪のおかっぱ。 

赤い着物。

値札にはこう書かれていた。

『市松人形 サエ』

店員が笑う。

『変な話なんですけどね。
 この人形、持ち主のところに
 戻るみたいで‥‥』

美香は青ざめた。

『……どういう意味ですか』

『みんな言うんですよ』

店員は、人形の髪を撫でながら続けた。

『夜中に、
 この子が廊下を歩く音がするって。
 時々、小さなメモも持っている時が
 ある、という事で、買っていった人が
 気持ち悪くて、また売りに来るんですよ』

その瞬間。

カタ。

店の奥で、小さな足音がした。

店員は首を傾げた。

『今、聞こえました?』

美香は答えられなかった。

なぜなら。

ショーケースのガラスに映っていたから。

自分のすぐ後ろに。

赤い着物の小さな女の子が、
こちらを覗き込んでいるのが‥‥‥。


おしまい



             著作 安桜芙美乃
             協力 ChatGPT
☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
あとがき

人は、強い恐怖を感じた時、存在しない音や気配を「補完」してしまうことがあります。

夜中の足音。 視界の端の影。 誰もいないはずの場所から聞こえる声。

脳は不安や緊張によって、曖昧な情報に意味を与えようとするからです。

特に人形のように「顔」を持つものは、人間の脳が感情や意思を読み取ろうとするため、実際以上に「生きているように」感じられることがあるそうです。

だからこの話も、 美香が恐怖心によって見た幻覚や幻聴だったのかもしれません。

祖母の言葉が無意識に残り、 静かな団地の空気や孤独感が、 彼女の想像を膨らませてしまっただけなのかもしれません。

……ただ。

もし本当にすべてが思い込みだったのなら。

あの中古雑貨店の店員は、 どうして同じ話を知っていたのでしょう。

そして。

供養されたはずの人形が、 なぜ一年後、別の場所に現れたのでしょうか。

人形は、人に愛されるほど、 人の記憶を映すと言います。

それが単なる錯覚なのか。

それとも、 人が見つめ続けたことで、 人形のほうもこちらを見返すようになるのか。

答えは、たぶん。

夜の廊下を歩く、 あの小さな足音だけが知っています。


               安桜芙美乃

可愛い市松人形
photo AC

☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆
SUNO AI MUSIC
【硝子の瞳】Dark Tango
作詞 作曲 編曲 Echo.EXE

【歌詞】
[Verse 1]
押し入れの奥で
埃をかぶったまま
抱きしめた手の温度を
まだ覚えている

髪をとかすたび
小さな指が震えて
目を合わせるたびに
胸がざわめいた

[Pre-Chorus]
守りたいだけだった
壊したくなかった
なのに静かな夜ほど
何かが近づく

[Chorus]
あの子は笑う
硝子の瞳で
あたしを見てる
人間みたいに

あたしが怖い
怖いと思うほど
あの子は少しずつ
息をするみたい

[Verse 2]
眠れない夜は
足音が増えていく
誰もいない廊下に
名前を呼ばれた

壁の向こうで
かすかな声がして
振り向いた先には
ただ古い人形

割れた記憶が
影を引きずって
心の隙間から
幻が育つ

[Pre-Chorus]
見たはずのないものを
見た気がしてる
聞いたはずのない声が
耳の奥にいる

[Chorus]
あの子は笑う
硝子の瞳で
あたしを見てる
人間みたいに

あたしが怖い
怖いと思うほど
あの子は少しずつ
息をするみたい

[Bridge]
大切にした分だけ
境目が溶けて
守っていたのか
閉じ込めていたのか

指先に残る
冷たいぬくもり
本当は誰が
こちらを見ていた

[Final Chorus]
あの子は笑う
硝子の瞳で
あたしを見てる
人間みたいに

あたしが怖い
怖いと思うほど
あの子は深く
あたしになるみたい

あの子は笑う
硝子の瞳で
あたしを見てる
人間みたいに

フランス人形の舞踏会
AI生成
🎵 Music created with Suno AI (Pro Plan)   
©️2025 Echo.EXE / Suno AI

今回も、最後までお付き合いくださり
ありがとうございました(#^^#)

また来てね(@^^)/~~~💕

安桜芙美乃

Yasuhito Morimotoさま♪

いつもありがとうございます🙇


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