WeldOne 世界的ショコラティエと現代の名工の二刀流 「溶接職人がチョコレート業界で革命」
溶接ショコラティエ、無双する小西栄二さん
製造業、飲食業、医療などの各分野では、上達に10年が必要とされる高度な技能が数多く存在し、溶接もその一つだ。
しかし、そんな常識を覆すかのようなパラレルキャリアで注目を集めるのが、溶接士の小西栄二さんである。
小西さんは、京都府の溶接技術競技会で優勝を重ね、国内技能者として最高峰の称号「現代の名工」に認定された。その後、持ち前の溶接技能を生かして独自の焙煎技術を考案し、ショコラティエとしても世界的な評価を獲得、世界2位に輝くという偉業を成し遂げた。
溶接とチョコレート、異なる二つの世界で頂点を目指す小西さんの軌跡を追った。

京都の溶接競技会に6回参加・6回優勝し独立
「順位をつけたがる性格」と自称する小西さん。
学生時代に「1番難しい」と聞いた圧力容器の分野で溶接士を志し、その一環で参加した京都府の溶接技術競技会で優勝。その後、小西さんは製缶、造船の分野で溶接技術を習得しながら、京都府の競技会に6回出場し、6回の優勝を果たした。
溶接技能を武器に独立した小西さんは、さらなる高みを求めて「最も奥が深い」とされるチタン溶接の道へ進んだという。独立後、小西さんが代表を務めるWeldOneでは、チタン製のカスタム自転車を製造し始めた。

入熱時にチタンが魅せる特有のブルーカラーが特に海外で注目を集め、事業は順調に拡大していった。さらに、京都府の依頼で近隣の学生に溶接技術を指導したことが評価され、2015年には「現代の名工」に選ばれた。
しかも、その間にも京都府溶接競技会で4回優勝しているため、小西さんは現在、計10回の優勝経験(全国入賞は6回)を持つ。

凄腕溶接士、世界2位のショコラティエ
そんな小西さんがショコラティエとして世界に君臨するきっかけとなったのは、2019年に始めた「焙煎機(ばいせんき)」の販売だった。
小西さんは、持ち前の溶接技術を活かし、1・2ミリと6ミリのチタンを用いた焙煎機を開発。

販促のために試作したチョコレートを配っているうちに、チョコレートづくりに魅了されていったという。
小西さんは「『美味しい』と喜ぶお客様の顔を見ているうちに、『一番美味しい』と言われたいという気持ちが湧いてきた」と当時を振り返る。
ふとした気分で最高のチョコレートを追求し始めた小西さんは、「微細な味のトレンドは毎年変わり続けており、数万のフレーバーを試し続けて時代に合わせるのでは、最高のチョコレートとはいえない」と感じるようになったのだという。
結果的に小西さんは、「オーブンでの焙煎」や「火で炙る」といった従来の方法では、カカオの内部まで均一に熱を通すのが難しく、どうしても苦みが生じることに気づいた。
そこで「焙煎法」に着目したのだという。

焙煎に絞って数々の試作を積み重ね、小西さんは、セラミックの遠赤外線を活用することで、カカオ内部に苦みを生じさせることなく焙煎する技術を確立した。
そして、これこそが小西さんを世界的なショコラティエに押し上げた、世界的に類を見ない革新的な焙煎法となったのだという。これについて、「カカオ本来の味を100%引き出すには、苦みが邪魔だと判断したのが良かった」と語る小西さん。
苦みを極限まで抑え、カカオが持つレーズンのような甘酸っぱさを最大限に引き出したチョコレートを武器に、2022年のインターナショナルチョコレートアワードに出場。
世界14ヵ国のショコラティエを抑え、堂々の2位に輝いた(23年度・24年度は3位)。

溶接は作りたいものがあってこそ輝く技能
「溶接を突き詰めていくうちに、溶接技能とは作りたいものを実現するための手段の一つに過ぎないことに気づいた。製造技術はすべて、目的を達成するための手段でしかない」と小西さんは語る。

異なる分野に見える溶接とチョコレートづくりだが、溶接条件を試行錯誤し、最適な手法を探る過程は、チョコレートの焙煎技術の追求にも通じるという。
現代の名工としての華々しいキャリアすら、一つの武器として活用する小西氏。その目には、ショコラティエとして「世界一」を目指すという静かな情熱が宿っている。
【小西さんの気になる溶接技能者はいますか?】
「溶接を始めてから得た多くの出会いに感謝しています。私と同じように、多くの人と出会い腕を磨く溶接技能者を紹介してください」
