質点&剛体系の振動問題 -3-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回は、前回の話題「質点と剛体の運動学」の続きで「振動問題」をテーマに取り上げます。
振動を数学的に考えると「物体が同じ経路を周期的に行き来する事象を三角関数や指数関数を組み合わせて表現すること」に行き着きます。
力学は原則的に「ニュートンの運動法則」に従うことを踏まえて、物体運動を数学的に記述する。その流れは同じです。
1質点系の単振動問題
減衰を考慮した1質点系振動
外力を考慮した1質点系振動 →【今回】
単一剛体系の振動問題
♦️前回記事(再掲)
前回は1質点系のバネマスモデルに関する減衰振動を扱いました。減衰振動は単振動と同様に運動方程式が「2階定数係数斉次常微分方程式」という形でした。
今回はステップアップして、1質点系の強制振動問題を扱います。運動方程式も複雑になるため、丁寧に解説をしていきたいと思います。

強制振動の運動方程式
今回は質点に外力が常時作用する場合を考えます。例えば、地震の揺れを受ける建物や、未舗装で凹凸を含む路面を走る車両などは、強制運動としてモデル化する流れが一般的です。
これまでと同様に1質点系のバネマスモデルを示します。物理定数は質点の質量mとバネ定数kと減衰係数cの3個です。また、初期条件は前回までを踏襲します。

周期的に変化する強制外力fを仮定します。ここで、定数$${\omega}$$は正弦波外力の角振動数です。
$${f(t)={F_0}\textrm{cos}(\omega{t})}$$
これより、強制振動に関する運動方程式は次の通りです。変数xの上部にあるドットは時刻tによる微分を意味します。
$${m\ddot{x}+c\dot{x}+kx={F_0}\textrm{cos}(\omega{t})}$$
運動方程式は右辺が非ゼロであ理、こうした形を「2階定数係数非斉次常微分方程式」と言います。

強制振動の数学的解法
非斉次微分方程式を解く手順として、斉次方程式の一般解と非斉次方程式の特殊解の和算する、というものがあります。
強制振動の話においては、基本的に解は2種類の項で構成されます。
自由振動解:減衰作用で時間経過に伴い消える振動因子
定常解:強制外力と同じ角振動数で保持される振動因子
つまり、初期段階は自由振動解と定常解を足し合せた形ですが、十分に時間が経つと定常解だけが残るということです。
自由振動解は前回の解説を流用します。非減衰振動に関する角振動数(固有角振動数)を$${\omega_0}$$、減衰振動に関する角振動数を$${\omega_d}$$と仮定します。
$${\omega_0=\sqrt{k/m}}$$(固有角振動数)
$${\omega_d=\omega_0\sqrt{1-\zeta^2}}$$ , $${\zeta=\frac{c}{2\sqrt{mk}}}$$
$${\zeta}$$は減衰比であり、弱減衰振動では$${\zeta<1}$$が成立します。自由振動解は次の通りです。
$${x=e^{-\zeta\omega_0{t}}\big\lbrace{A\textrm{cos}(\omega_d{t})+B\textrm{sin}(\omega_d{t})}\big\rbrace}$$
次に今回の本筋である定常解を求めます。右辺の内容を踏まえて、方程式として成立し得る次の形を仮定してみます。
$${x=R_1\textrm{cos}(\omega{t})+R_2\textrm{sin}(\omega{t})}$$
ここで、各三角関数の未定係数$${R_1\,,R_2}$$を求めることで、最終的な定常解とします。微分形を求めて運動方程式に代入し、各三角関数の係数同士を比較することで、未定係数が求まります。
$${R_1=\frac{(k-m\omega^2)F_0}{(k-m\omega^2)^2+(c\omega)^2}}$$ , $${R_2=\frac{c\omega{F_0}}{(k-m\omega^2)^2+(c\omega)^2}}$$
三角関数の合成法を踏まえて、定常解は次の通りになります。
$${x=\frac{F_0}{\sqrt{(k-m\omega^2)^2+(c\omega)^2}}\textrm{cos}(\omega{t}-\phi)}$$
$${\phi}$$は位相差で、物理定数から自ずと決まります。
$${\phi=\textrm{tan}^{-1}\Big(\frac{c\omega}{k-m\omega^2}\Big)}$$
強制振動の一般解は先述した通り、自由振動解と定常解を足し合せで構成されますので、次の通りになります。
$${x=e^{-\zeta\omega_0{t}}\big\lbrace{A\textrm{cos}(\omega_d{t})+B\textrm{sin}(\omega_d{t})}\big\rbrace+\frac{F_0}{\sqrt{(k-m\omega^2)^2+(c\omega)^2}}\textrm{cos}(\omega{t}-\phi)}$$
なお、積分定数は初期条件から求まりますが、今回は計算が煩雑であり、本質的な議論から逸れるため、ここでは割愛します。

強制振動と共振現象
減衰係数が非常に小さいとき、強制外力の角振動数$${\omega}$$が固有角振動数$${\omega_0=\sqrt{k/m}}$$に近づくとします。
このとき、定常解の分母は同様に微小値になるため、逆に振幅は非常に大きくなります。このような現象を「共振」と言います。
例えば、ブランコを揺れるタイミングに合せて押すと、極端に揺れが大きくなることがあります。橋や建物などの構造物も同様で、構造物の状態で決まる固有角振動数に近い角振動数の振動が加わると、構造物が大きく揺さぶられます。こうした現象は、構造物の安全性の観点で非常に危険です。
定常解(定常振動)の振幅Xは次の通りです。
$${X=\frac{F_0}{\sqrt{(k-m\omega^2)^2+(c\omega)^2}}}$$
ここで、角振動数$${\omega}$$はパラメータです。角振動数の値に応じて定常解の振幅の変化するかを示すグラフ(振幅応答曲線)を用いて、振動特性を評価することがあります。

一般的に、振幅応答曲線は横軸(目盛)が対数表記の片対数グラフが用いられます。振幅応答曲線に関しては、主に次の特徴が見られます。
固有振動数の付近で急激なピークを発現
減衰係数が大きいほどピークは抑制傾向
つまり、減衰係数は共振の鋭さ(ピーク値の大きさ)を抑える役割を持つと言えます。これは感覚的にも納得できる話だと思います。

おわりに
今回のテーマは質点と剛体の運動学の話題から派生して、振動問題について考えました。
今回は主に強制振動を扱いました。微分方程式の解法は複雑ですが、本質的な議論が常に特殊解を求めることであるとは限りません。
次回は質点から対象を離して、剛体系に関する振動問題を考えます。
1質点系の単振動問題
減衰を考慮した1質点系振動
外力を考慮した1質点系振動
単一剛体系の振動問題 →【次回】
運動方程式や微分積分の背景知識については、前回の連載「質点と剛体の運動学」で説明していますので、合せて参照頂ければと思います。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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