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特別編 : 構造物に作用する力と変形の因果関係


まえがき

今回のテーマでは「力のつり合い」に基づいた構造力学の話をしました。これまでは質点や剛体の運動学が中心でしたが、今回は並進運動と回転運動に加えて変形まで考慮する「連続体」が対象でした。

連続体の変形問題は「材料力学」と呼ばれる科目で扱う訳ですが、連載記事ではその辺の理論には触れていませんでした。


♦️当該記事(再掲)


今回の記事では特別編と題して、材料力学で扱う物体(連続体)の変形問題の序盤に当たる内容を中心に説明します。

内力と外力の考え方

物体のモデル化として、質点や剛体を紹介してきました。いずれも運動に関する範囲(自由度)を規定する訳ですが、変形は考慮しません。

これに対して、運動と変形の両方を考慮するような物体(モデル)を「連続体」と言います。物体に何かしらの力が作用すると、物体は何かしらの形状の変化(変形)をもたらします。

物体(連続体)が変形に関する過程を定量的に扱う学問を「材料力学」と言います。材料力学は「軽くて丈夫な構造物を設計すること」を最たる目的としており、構造設計においてコストの制約範囲で構造物の耐久性を担保することを目指します。

材料力学に関する概要説明

変形の発生には物体に対する力の作用が必要です。高校物理では、力は「外力」を指すことが多く、物体の内部に発生する「内力」は聞き慣れていないと思います。

材料力学の考え方に則ると、物体に外力が作用する際に、物体の内部では反作用的に外力に抵抗する形で内力が発生します。結果として、物体は変形を引き起こします。

高校物理と材料力学の考え方に関する違い

物体に外力が作用しても、一見すれば、何も変化していないように感じられます。これは、物体の変形を通じて、外力と内力が最終的につり合うためです。物体に内力が存在しないならば、物体は抵抗なく自由に変形することになります。

変形は多くの場面で観察されますが、その挙動はシンプルに次の5種類に分けられます。また、現実に発生する変形は、これらの挙動を複合した形と言えます。

物体(連続体)の変形に関する5分類

特に、引張・圧縮・せん断は基本的な変形挙動であり、引張と圧縮を合わせた「垂直力」とせん断力に分けて考えます。

また、曲げは垂直力が不均一である場合、ねじりはせん断力が不均一である場合に発生する変形挙動です。

応力とひずみの関係性

材料力学では変形を関連付けるための基本的な物理量として「応力」「ひずみ」があります。いずれも「テンソル量」と呼ばれる物理量です。材料力学をはじめ、数値計算では重要な考え方のひとつです。

ベクトル量に対して、方向依存性まで考慮した物理量を「テンソル量」と言います。任意の物理量に対して「どの方向に、どの方向の影響が、どれほど現れるか」を表します。

テンソル量の概要説明

例えば、物体(材料)の性質次第では、縦と横に引張力を加えた際に、変形に違いが現れる場合があります。このように、方向次第で変わる性質を正しく表現するために、テンソル量が用いられます。


応力とひずみの間には、物体(材料)ごとに「構成式」として因果関係が定義付けられます。最も簡便な構成式のひとつに「フックの法則」と呼ばれるものがあります。

構成式で定義付けられる力と変形の関係性

フックの法則は、高校物理の範囲では「ばねの伸縮はばねに印加した力に比例する」という意味で取り上げられますが、これを物体(連続体)の変形問題に拡張し、内力を指す指標「応力」と変形を指す指標「ひずみ」と比例の関係で表します。

$${\sigma=E\varepsilon}$$

こうした性質を伴う変形は「弾性変形」と呼ばれます。一般的に、金属材料では弾性変形を指す領域があり、力(応力)を解放すると変形(ひずみ)は元の状態に戻るという「可逆性」も存在します。

物体(連続体)の弾性変形と可逆的性質

弾性変形の特性を決めるところとして、ヤング率と呼ばれる材料定数があります。材料の硬さを表すもので、フックの法則による構成式では比例定数の役割を果たします。

弾性変形と塑性変形

金属材料については、弾性変形が進行するとあるタイミングで可逆的性質が限界を迎えます。これは「弾性限界」と呼ばれており、これを超過した状態で応力を解放しても、物体は元の形状に戻らず「永久変形」として残ることになります。

また、材料次第ではあるタイミングで応力降下を見せることがあります。この現象は「降伏」と呼ばれ、前述と同じく弾性変形とは異なる挙動を示します。永久変形が現れることを「塑性変形」と言います。

応力とひずみの関係性(構成式)で変形を表現すること自体は、塑性変形も同様です。但し、塑性変形に対する構成式は非線形であり、数値解析の観点でもその表現は複雑です。

単軸引張試験と応力ーひずみ線図(金属材料)

材料の力学的性質を調べる手段(材料試験)のひとつに「単軸引張試験」があります。試験片が破断するまで一方的に引張力を載荷し、荷重(応力)と変形量(ひずみ)の履歴を「応力ーひずみ線図」として記録します。

金属材料の非線形な塑性変形は「硬化則」で規定されます。これらは金属材料に関する複雑な物理と数学的背景が解明されており、数値解析では「ひずみ増分理論」をはじめ、多用されています。

おわりに

今回は特別編と題して、物体(連続体)を対象とする変形問題を扱う「材料力学」について説明しました。

材料力学は高校物理と重複する部分こそありますが、基本的に大学で履修する科目であり、機械工学系(四力)の中でも微分積分を利用する場面が多いことから、比較的に難易度の高い科目でもあります。

ただ、構造解析をはじめとするシミュレーションの分野では何かと重要な考え方です。自分がこれまで専攻してきた分野でもあります。

物理現象の性質次第では、常に連続体のモデル化が必須であるとは限りません。状況に合わせて、質点や剛体で簡素化しながら、複合的に問題を見ていくことが大事だと思います。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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