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構造力学と力のつり合いの理解 -2-


まえがき

微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。

今回は高校物理でお馴染みの「力のつり合い」から、構造力学の問題をテーマに取り上げます。力のつり合いを理解することで、物体(構造物)に作用する力の全容を明らかにします。


  1. 力のつり合いの定義と扱い方

  2. 構造物と自由物体図の実用例(1)→【今回】

  3. 構造物と自由物体図の実用例(2)


♦️前回記事(再掲)


前回は力のつり合いに関する基本的な定義から確認しました。また、自由物体図と呼ばれる手法にも触れました。

自由物体図は物体に作用するすべての外力と内力を矢印で示し、力のつり合いを解析するための図です。構造力学や材料力学において、物体の挙動を理解すると共に、力や変形を計算する上で重要なツールとなります。

自由物体図(FBD:Free Body Diagram)の概要

今回は物体(構造物)において自由物体図を書く手順を確認します。自由物体図は、高校物理の学習内容が社会に出てからの実務に直結する数少ない例でもあります。

自由物体図の基本的な作図手順

まずは、自由物体図の書き方を示します。何事も手順を意識することが大切です。

  1. 構造物を部材単位に分け、支点や接合部など各部材周りの接触を仮想的に切り離します。

  2. 外から作用する力を全て記述します。重力や支点反力など、力の方向も考慮します。

  3. 力のつり合いの式を立てます。構造物が静止状態ならば、生じる力の総和はゼロです。

上記で示した「物体を切り離す」「力を書き出す」という作業こそ、複雑な物体(構造物)を整理するための肝となります。

外力は前提条件として規定されますが、支点反力などは未知数です。そのため、力のつり合い式を通して未知数を求めます。そこから、各構成要素に作用する力を逐次的に求めます。

トラス構造の力学問題

代表例として「トラス構造」を考えます。トラス構造とは、橋や家屋の屋根などに用いられる、部材同士を三角形に組み合わせた構造物です。各部材の節点はピンやボルトで接合されます。

トラス構造が三角形である理由は、四角形は長さを保持したままの角度変化が容易であるのに対して、三角形は角度変化が困難であるためです。三角形で連結することで、構造全体の強度を維持します。

トラス構造の構成的特徴と理由

トラス構造の接合節点は基本的に回転運動に対する拘束が無いため、曲げ変形を誘起する「モーメント」は生じません。トラス構造の各部材に生じる力は、部材方向に限定された「軸力」だけであると考えます。

トラス構造で作られた構造物の実例(橋構造)

以上を踏まえて、トラス構造の自由物体図の作業の流れを考えます。トラス構造は「部材は引張または圧縮の力のみを受ける」と仮定します。自由物体図を書く際は「部材の端に作用する力」を漏れなく記述します。

  1. トラス構造の全体に対する自由物体図を作図します。全体の力のつり合いを踏まえて、支点反力を求めます。

  2. 各節点に注目した自由物体図を作図します。前回の行程を踏まえて、部材間に生じる力を順繰りに求めます。

各部材に生じる力は「引張」「圧縮」のどちらかであり、正確に示すことが重要です。これらは符号や矢印の向きで表現します。方向は最初は仮決めとして、計算結果(数値)の正負で状態を判断します。

トラス構造の例題と解法

トラス構造の問題を取り上げます。今回の解法は「節点法」と呼ばれる手法であり、節点に注目して力のつり合い式を立て、各部材に生じる力(引張または圧縮)を求めます。

節点aは「回転支点」で、水平方向(x軸)と垂直方向(y軸)の並進運動が拘束されます。回転運動は自由です。すなわち、節点aでは水平方向と垂直方向の反力が発生します。

節点eは「移動支点」で、垂直方向(y軸)の並進運動が拘束され、水平方向(x軸)の並進運動と回転運動は自由です。すなわち、節点eでは垂直方向の反力が発生します。

トラス構造の例題(節点aと節点eは支点)

トラスに生じる軸力については、各部材を切り離した地点に対して引張であれば正、圧縮であれば負と規定します。

構造全体の力のつり合い

トラス構造全体で力のつり合い式を立てます。水平方向(x軸)は外力が作用しないこと、反力も節点aに限られることから、ゼロであることは明らかです。

垂直方向(y軸)は上向きを正とします。トラス構造自体は静止状態であるため、力の総和はゼロになります。

$${R_a+R_e-2P=0}$$

節点aを起点にモーメントの総和を考えます。反時計回りのモーメントを正とします。静止状態であることから、モーメントの総和も前述と同様にゼロとなります。

$${2P{\cdot}L-R_e{\cdot}2L=0}$$

以上の2式を整理して、支点反力を求めます。

$${R_a=R_e=P}$$

これより、節点cに作用する集中荷重は2箇所の反力に均等に分配されることが分かります。

各部材に生じる軸力

構造全体の力の作用を確認しました。続いて、各部材の軸力を求めます。ひとまず、トラス構造の下側にある3節点に着目します。

トラス構造の下側(3節点をそれぞれ切り離した結果)

まず、節点aについて、水平方向(x軸)と垂直方向(y軸)の力のつり合い式を立てます。

$${N_{ab}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree+N_{ac}=0}$$
$${R_a+N_{ab}\cdot\textrm{sin}{\,}60\degree=0}$$

以上の2式を整理して、軸力を求めます。

$${N_{ab}=-\frac{2}{\sqrt{3}}P}$$ , $${N_{ac}=\frac{1}{\sqrt{3}}P}$$

節点aと節点bで構成される部材の軸力は、符号が負なので圧縮力と判断できます。また、節点aと節点cで構成される部材の軸力は、符号が正なので引張力と判断できます。

続けて、節点eについて、水平方向(x軸)と垂直方向(y軸)の力のつり合い式を立てます。

$${N_{ed}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree+N_{ec}=0}$$
$${R_e+N_{ed}\cdot\textrm{sin}{\,}60\degree=0}$$

以上の2式を整理して、軸力を求めます。

$${N_{ed}=-\frac{2}{\sqrt{3}}P}$$ , $${N_{ec}=\frac{1}{\sqrt{3}}P}$$

上記の結果は、先述した節点aと節点bで構成される部材と節点aと節点cで構成される部材の軸力(結果)と同様であり、節点cを起点に左右対称であることが分かります。

続けて、節点cについて、水平方向(x軸)と垂直方向(y軸)の力のつり合い式を立てます。

$${N_{cd}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree-N_{cb}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree+N_{ce}-N_{ca}=0}$$
$${N_{cb}\cdot\textrm{sin}{\,}60\degree+N_{cd}\cdot\textrm{sin}{\,}60\degree-2P=0}$$

水平方向(x軸)の部材は以前の結果を流用します。一対の関係性から、符号を含めて値は同様です。以上を整理して、軸力を求めます。

$${N_{ca}=N_{ce}=\frac{1}{\sqrt{3}}P}$$ , $${N_{cb}=N_{cd}=\frac{2}{\sqrt{3}}P}$$

節点cと節点bで構成される部材、節点cと節点dで構成される部材の軸力は、符号が正なので引張力と判断できます。

節点bと節点dで構成される部材を取り出して、これまでと同様に各部材の軸力を求めます。

トラス構造の上側(2節点をそれぞれ切り離した結果)

下側の3節点に向かう部材に関しては、一対の関係性を前提に先述した結果を流用します。節点bと節点dで構成される部材の軸力は、片方の節点に着目する流れです。

節点bに着目して、水平方向(x軸)の力のつり合い式を立てます。

$${N_{bd}-N_{ba}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree+N_{bc}\cdot\textrm{cos}{\,}60\degree=0}$$

以上を整理して、軸力を求めます。

$${N_{bd}=-\frac{2}{\sqrt{3}}P}$$

節点bと節点dで構成される部材の軸力は、符号が負なので圧縮力と判断できます。以上より、各軸力の正負を整理します。

トラス構造の問題の計算結果(引張と圧縮の整理)

これより、自由物体図を通じてトラス構造の力学的なバランスを可視化する過程を示しました。

おわりに

今回は力のつり合いと自由物体図の作図までの流れについて、トラス構造の問題を通して確認しました。

物体(構造物)がどこで荷重を受け、どの部材を通じて内力となり、最終的にどこへ逃げていくのか。この流れが頭の中で描けるようになると、構造物は一気に「意味のある形」に見えてきます。


  1. 力のつり合いの定義と扱い方

  2. 構造物と自由物体図の実用例(1)

  3. 構造物と自由物体図の実用例(2)→【次回】


次回は、引き続き別の例題を用意して、自由物体図を踏まえた構造力学の理解に取り組みます。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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