見出し画像

運動学とエネルギーの因果関係 -1-


まえがき

微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。

今回は「運動学と仕事の関係」を考えます。物体を動かすとき、その物体には何かしらの「力」が加わります。そこで生じる運動を数学的に定量化した指標のひとつが「仕事」です。

似た意味を持つ物理量に「エネルギー」があります。物理学で扱うエネルギーとは、仕事を行うための能力(可能性)を表す物理量です。単位はジュール(J)が用いられます。

仕事とエネルギーの意味と違いについて

力学を扱うので、物理法則は「ニュートンの運動法則」に従うことは、これまでと同様です。


  1. 仕事・エネルギーの定式化 →【今回】

  2. ポテンシャルエネルギーの安定性

  3. エネルギーの保存則

  4. エネルギーと運動方程式の変換


初回は仕事およびエネルギーの定義について示します。これらは、高校物理を理解する上でも重要な単元でもあります。本流である微分積分の話も交えて、解説したいと思います。

仕事の物理的意味と定式化

物体に力を加えた時の力の方向に沿う運動を表した物理量を仕事と定義します。ベクトル量の力Fと変位xの内積(スカラー)で表現します。

$${W=\bm{F}\cdot\bm{x}}$$

物体の運動経路を踏まえると、仕事は経路の微小要素と対応する力の内積を逐次求めて、それを積分することで計算されます。

$${W=\int{\bm{F}}\cdot{\bm{dx}}}$$

高校数学の復習ですが、任意のベクトルaとbの内積は次のように計算されます。2つのベクトルのなす角度$${\theta}$$を含みます。

$${\bm{a}\cdot\bm{b}=|a||b|\textrm{cos}\theta}$$

つまり、力(ベクトル)が実際に運動経路に寄与した分を抽出して、運動経路の長さと積算したものが仕事となります。

仕事のイメージ(2次元以上に拡張する場合は成分ごとに考えます)

続けて、仕事の時間変化を「仕事率」と定義します。運動の変位xの時間微分は速度vに対応することを踏まえると、仕事率Iは物体に働く力Fと運動経路の微小要素の速度vの内積を同様に逐次積分して求めます。

$${I=\int{\bm{F}}\cdot{\bm{dv}}}$$

仕事率の単位はワット(W)です。定義から分かる通り、力と速度のベクトルが直交するとき、その仕事率はゼロになります。

例えば、摩擦を考えない滑らかな斜面に置かれた物体の運動を考えます。速度(ベクトル)は斜面の接線方向、垂直抗力(ベクトル)は斜面の垂直方向に働きます。すなわち、物体の速度と垂直抗力は常に直交するため、仕事率はゼロです。

力と運動に紐付く仕事

冒頭で示した通り、エネルギーは仕事を行うための能力(可能性)を意味します。エネルギーは対象の物理現象で性質が異なりますが、主に「運動エネルギー」「位置エネルギー」が一般的に挙げられます。また、位置エネルギーは「ポテンシャルエネルギー」とも呼ばれます。

ポテンシャルエネルギーとは、物体がある位置に存在することで、その物体に蓄えられるエネルギーを意味します。高校物理の範囲では、主に物体の標高やバネの伸縮量に伴う物理量として扱われます。

物理学におけるポテンシャルエネルギーの意味

これより、各々のエネルギーの成り立ちなどを説明します。

運動エネルギー

物体に外力が作用すると、物体は相応した運動をしますので、それに準じたエネルギー(運動エネルギー)が規定されます。物体の質量mと速度vより運動エネルギーKは計算されます。

$${K=\frac{1}{2}m|\bm{v}|^2}$$

速度はベクトルの大きさ(ノルム)の2乗を用います。この形を運動方程式より導出します。加速度は速度の時間微分であることを利用して、運動方程式を次のように記述します。

$${\bm{F}=m\frac{d\bm{v}}{dt}}$$

運動方程式の両辺で速度vの内積を取ります。

$${\bm{F}\cdot\bm{v}=m\frac{d\bm{v}}{dt}\cdot\bm{v}=\frac{m}{2}\frac{d}{dt}(\bm{v}\cdot\bm{v})=\frac{d}{dt}\Big(\frac{1}{2}m|\bm{v}|^2\Big)}$$

導出過程は下記を参考にしています。

$${\frac{d}{dt}(\bm{v}\cdot\bm{v})=\frac{d\bm{v}}{dt}\cdot\bm{v}+\bm{v}\cdot\frac{d\bm{v}}{dt}=2\frac{d\bm{v}}{dt}\cdot\bm{v}}$$

左辺($${\bm{F}\cdot\bm{v}}$$)は仕事率であり、運動エネルギーは前述した通りであることが分かります。

ポテンシャルエネルギー

ポテンシャルエネルギーUの本質は、物体に作用する外力Fの積分です。

$${U=-\int{\bm{F}}\cdot{\bm{dx}}}$$

ポテンシャルエネルギーUから外力Fを逆算で求める方法もあります。ここでは、3次元空間における偏微分で示します。

$${\bm{F}=-\textrm{grad}(U)=\Big(\frac{\partial U}{\partial x}_,\frac{\partial U}{\partial y}_,\frac{\partial U}{\partial z}\Big)}$$

複数の変数で構成される関数に対して、ひとつの変数だけに注目して変化を調べる操作を「偏微分」と言います。例えば、$${x}$$と$${y}$$の2変数で構成される関数$${f(x,y)}$$において、変数$${x}$$に対する変化を調べるには、他の変数$${y}$$は定数と仮定して微分を行います。これは「$${x}$$に関する偏微分」を意味します。

偏微分の意味と手順

高校物理で多く登場する「重力」「バネ」に対するポテンシャルエネルギーを導出します。

重力およびバネによるポテンシャルエネルギーの導出

質点の質量mと重力加速度gの1次元問題を考えます。ポテンシャルエネルギーを求める際の積分範囲は原点(ゼロ)から標高hです。また、被積分関数である重力は負方向です。

$${U=-\int_0^h{(-mg)dy}=mgh}$$

次に、バネ定数kの弾性力のポテンシャルエネルギーを同じく1次元問題として考えます。バネが自然長より伸びxを与えられることで、バネには反発する形で弾性力が作用します。

ポテンシャルエネルギーを求める際の積分範囲は、原点からの伸び量lで決まります。また、被積分関数である弾性力は負方向です。

$${U=-\int_0^l{(-kx)dx}=\frac{1}{2}kl^2}$$

詳細は次のエネルギー保存則で話しますが、摩擦を考えない場合は、原則的に運動に伴う全体のエネルギーは変わりません。

頂上では重力によるポテンシャルエネルギーが最大値を取り、物体が斜面を下るに連れて速度(運動エネルギー)は増加します。これは、ポテンシャルエネルギーが次第に運動エネルギーに変換されることを意味します。

おわりに

今回のテーマは運動学と仕事の関係と題しまして、物理学における仕事やエネルギーの取り扱い方を考えました。

初回は仕事の概念説明から行いまして、高校物理で扱う単元に沿って導出まで示しました。次回はポテンシャルエネルギーに着目して、安定性の考え方を中心に説明します。


  1. 仕事・エネルギーの定式化

  2. ポテンシャルエネルギーの安定性 →【次回】

  3. エネルギーの保存則

  4. エネルギーと運動方程式の変換


仕事やエネルギーに関する考え方は、高校物理でも頻出に分野です。基本的な高校の知識に留まらず、少しながらも発展的な考え方を加えられたらと思います。

-------------------------
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
-------------------------

⭐︎⭐︎⭐︎ プロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集