見出し画像

質点&剛体の運動学について -3-


まえがき

微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。

今回のテーマは「質点と剛体の運動学」です。

私たちが物体の動作を認識する現象の見え方は様々です。例えば、コップがテーブルから落ちる、車が坂を下る、人が歩くなど、個別で基本動作がありますが、力学ではこれらをシンプルなモデルとして扱います。

すなわち、高校物理でも習う「運動方程式」を用いて、物体運動を数学的に記述すること。今回は質点や剛体の運動に焦点を絞り、基本的な物体運動モデルを考えることにします。


  1. 質点&剛体と運動学の概要

  2. 質点の運動方程式

  3. 剛体の運動方程式 →【今回】


♦️前回記事(再掲)


前回は質点を対象に、運動方程式から物体の運動を解説しました。また、物体の自由落下と水平放射を扱いました。

今回は剛体を対象として、運動方程式から物体運動を扱います。剛体は物体の質量に加えて、物体の形状も一緒に考慮します。前回と同様に、簡単な剛体運動の事例を考えていきます。

剛体の運動方程式

運動方程式とは、物体の運動を「運動と力の因果関係」を踏まえて、数学的に表現します。

$${\bm{F}=m\bm{a}=m\frac{d^2\bm{x}}{dt^2}}$$

質点の運動方程式は上記の通りですが、運動の自由度は並進運動に限られます。一方、剛体は並進運動と回転運動の両方を考えます。つまり、3次元空間では6自由度を考えます。

3次元空間における剛体運動(並進&回転)の概要

回転運動の運動方程式は、角変位$${\bm{\theta}}$$を変数と仮定します。

$${\bm{M}=I\bm{\alpha}=I\frac{d^2\bm{\theta}}{dt^2}}$$

定数Iは質量に対して「慣性モーメント」と言います。また、回転運動に対応する力は「モーメント」または「トルク」と言います。

並進運動と回転運動の変数ごとの対応関係

質点の運動方程式における質量は、大きいほど物体は動きにくいことを意味します。一方で、慣性モーメントに関しては、大きいほど物体は回転しにくいことを意味します。

慣性モーメント

慣性モーメントの考え方のひとつに、物体(質量の集合)が回転軸から離れているほど、物体は回転しにくいことが挙げられます。

このことから、慣性モーメントは剛体を構成する微小質量と、質量の回転軸からの距離(2乗)の積の足し合わせとして定義されます。

$${I=\sum_{I}{m_i}{r_i}^2}$$

剛体運動を計算する場合は、上記を連続的に考えますので、次の通り積分計算に置き換えます。ここで、$${dm}$$は微小質量です。

$${I=\int{r^2{dm}}}$$

例えば、下図のように半径Rの円盤の中心軸に対する慣性モーメントを導出してみます。

円盤の中心軸に対する慣性モーメントの計算

微小質量$${dm}$$は、半径rで括れるリング状の周回領域で考えます。

$${dm=\frac{M}{\pi{R^2}}dA=\frac{2Mr}{R^2}dr}$$

こうすることで、積分の中で微小面積を微小半径の形に持ち込みます。慣性モーメントの定義を踏まえて、最終的に公式が導かれます。

$${I=\int{r^2{dm}}=\frac{2M}{R^2}\int_{0}^{R}{r^3{dr}}=\frac{1}{2}MR^2}$$

同じ物体の形状でも回転軸の位置が変われば、回転する微小質量の分布も変わります。つまり、慣性モーメントも変動します。

斜面を転がる円柱剛体

今回は例題として、円柱形状の剛体が斜面を転がる様子について、並進運動と回転運動による運動方程式から考えます。円柱の半径はRとします。

斜面には静止摩擦力が作用します。この摩擦力が回転の運動方程式におけるモーメントの定式化に寄与します。

斜面を転がる円柱(剛体)の運動問題

まずは、並進運動の運動方程式を記述します。剛体の重力を斜面方向成分に分解します。なお、斜面の下り方向を正の変位方向とします。

$${M\frac{d^2x}{dt^2}=Mg\textrm{sin}\,\alpha-f}$$

次に、回転運動の運動方程式を記述します。角変位は反時計回りを正とします。なお、慣性モーメントは前節の結果を流用します。

$${\frac{MR^2}{2}\frac{d^2\theta}{dt^2}=Rf}$$

ここで、剛体運動は純転がり$${x=R\theta}$$として、静止摩擦力$${f}$$を決めます。

$${f=\frac{M}{2}\frac{d^2x}{dt^2}}$$

上記を先述した並進運動の運動方程式に代入することで、並進運動の加速度が決まります。

$${\frac{d^2x}{dt^2}=\frac{2g}{3}\textrm{sin}\,\alpha}$$

並進運動の加速度は上記の通り、定数扱いですので、前回の解法を流用できます。

初期条件:$${t=0}$$で$${x=0}$$ , $${v=0}$$

上記の初期条件(初期変位と初速度はゼロ)を踏まえて、並進運動における変位(微分方程式における特殊解)を求めます。

$${x=\frac{g}{3}\textrm{sin}\,\alpha\cdot{t^2}}$$

続けて、回転運動における角変位を求めます。今回は純転がりであることを前提とします。

$${\theta=\frac{x}{R}=\frac{g}{3R}\textrm{sin}\,\alpha\cdot{t^2}}$$

今回は純転がりを想定しましたが、本来は転がりに抵抗するためのモーメント(回転運動に対する摩擦力)を運動方程式に追加します。

これは、物体の接触面に生じる法線反力と物体の中心線のズレから求められるモーメントに相当します。例えば、自転車のタイヤに生じる変形や摩擦損失の問題が実際に挙げられます。

おわりに

今回のテーマは質点と剛体の運動学について。第3回は剛体運動に関する運動方程式を解くまでの過程を示しました。

今回は機械力学の内容を起点に、質点と剛体に関する運動学を例題を用いて整理しました。高校物理は質点力学が中心ですが、暗記に依存しがちな公式の背景を微分積分を利用して示しました。

今回のテーマはこれで終わりです。このマガジンでは様々な物理的に問題を数学を交えて、伝えていきたいと考えています。

引き続き、よろしくお願いいたします。

-------------------------
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
-------------------------

⭐︎⭐︎⭐︎ プロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集