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質点&剛体の運動学について -2-


まえがき

微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。

今回のテーマは「質点と剛体の運動学」です。

私たちが物体の動作を認識する現象の見え方は様々です。例えば、コップがテーブルから落ちる、車が坂を下る、人が歩くなど、個別で基本動作がありますが、力学ではこれらをシンプルなモデルとして扱います。

すなわち、高校物理でも習う「運動方程式」を用いて、物体運動を数学的に記述すること。今回は質点や剛体の運動に焦点を絞り、基本的な物体運動モデルを考えることにします。


  1. 質点&剛体と運動学の概要

  2. 質点の運動方程式 →【今回】

  3. 剛体の運動方程式


♦️前回記事(再掲)


前回は物体の運動学の基礎事項として、質点と剛体のモデル化の違いについて、物理的観点から説明しました。

今回は主に質点の力学について、運動方程式から説明します。続けて、簡単な質点運動の事例を考えていきます。

ニュートンの運動法則

物体運動を表す物理量である「変位・速度・速度度」の基本的な関係は、下記の通りです。数学の「微分積分」による相互関係が成り立つことが、ここでのポイントです。

質点の並進運動における「変位・速度・加速度」の関係(再掲)

運動と力の因果関係を体系化しながら、物体運動を表現します。これは力学の本質であり、起点となる数学的手法こそ「運動方程式」なのです。

これは物理学者「アイザック・ニュートン」が提唱した、物体運動における3つの基本法則のひとつです。現在も様々な工業分野の基礎として、大いに活用されています。

  • 第1法則:物体は新たに外力が与えられない限り、その運動の状態を保持します。慣性の法則とも呼ばれています。

  • 第2法則:物体に生じる加速度は、物体に与えられた力に比例します。また、物体の質量に反比例します。

  • 第3法則:物体Aから物体Bに力が加えられると、物体Bには同じ大きさで反対方向の力が作用します。作用・反作用の法則とも呼ばれています。

なお、第2法則で示される運動方程式を別の言い方にするならば、物体の運動量の時間変化は、物体に作用する力と等価と言えます。

力と加速度はいずれもベクトル量です。先述したことを踏まえると、運動方程式の次の通りに記述されます。

$${\bm{F}=m\bm{a}=m\frac{d^2\bm{x}}{dt^2}}$$

この形式は「微分方程式」と呼ばれます。物体運動を詳細に求めるには避けて通れませんが、微分積分の計算に慣れていない高校課程では、困難とされる側面も現実にあります。

ただし、単純な物体運動の問題については、現行の高校数学の範囲で十分に対応できます。ここでは、2種類の実例を考えます。

1次元の自由落下運動

まずは、物体を質点(単体)とみなした、1次元の自由落下運動について取り上げます。外力は重力(場)に限定します。

独立変数は時間tだけですので、変位xは時間tによる1変数関数で表現されます。ここで、力や変位・速度・加速度はベクトル量ですが、1次元問題であるため、これらの変数もスカラー量で扱うことにします。

1次元の質点の自由落下問題

外力Fは重力(場)に限られます。物体に作用する重力は、物体の質量と重力加速度の積です。これより、鉛直下向きを正とすると、運動方程式は次の通りに表現されます。

$${m\frac{d^2x}{dt^2}=mg}$$ → $${\frac{d^2x}{dt^2}=g}$$

つまり、物体に生じる加速度は時間に依存しない定数です。

$${a=g=const.}$$

運動方程式(微分方程式)を起点に、物体の速度や変位を求めます。速度は加速度を積分することで求められます。

$${v=\int{a\,dt}=g\int{dt}=gt+C_1}$$

上記は不定積分ですので、積分定数(Cと表記)を伴います。続けて、速度を積分して変位を求めます。

$${x=\int{v\,dt}=\int{(gt+C_1)\,dt}=\frac{1}{2}gt^2+C_1{t}+C_2}$$

こうして、2個の積分定数を伴う一般解が求められました。物理では、初期条件や境界条件などの制約条件を利用して、積分定数を求めます。

微分方程式で求められる解は、独立変数(今回は時間)の関数で表現されます。積分の過程で現れる積分定数を含めた解は「一般解」と呼ばれます。また、制約条件を利用して積分定数を特定した解は「特殊解」と呼ばれます。

微分方程式における「一般解」「特殊解」の違い

今回は制約条件として、原点を物体の初期配置として、初速度もゼロであると仮定します。

初期条件:$${t=0}$$で$${x=0\,{,}\,v=0}$$ → $${C_1=C_2=0}$$

これより、変位と速度(特殊解)は次の通りに求められます。

$${x=\frac{1}{2}gt^2}$$ , $${v=gt}$$

なお、初期配置や初速度を考慮する場合は、制約条件(初期条件)が変わるため、それに応じて特殊解も変わります。

2次元の水平投射運動

次に物体を水平方向に投射した場合について考えます。質点運動の2次元問題として、前節と同様に外力は重力(場)に限定します。

  • 水平方向(変位)をxとして、重力は作用しません。物体の推進方向を正とします。

  • 落下方向(変位)をyとして、重力が働く鉛直方向を正とします。

今回は2次元問題です。基本的には、各軸方向について個別に運動方程式を立てて、それぞれに対して特殊解を求めます。

2次元の質点の水平投射問題

水平方向の外力は存在せず、落下方向は重力のみです。運動方程式は次の通りになります。

$${m\frac{d^2x}{dt^2}=0}$$ , $${m\frac{d^2y}{dt^2}=mg}$$

前節と同様の流れに則り、水平方向について、積分計算から速度と変位の一般解を求めます。

$${v_x=\frac{dx}{dt}=C_1}$$ , $${x=C_1{t}+C_2}$$

落下方向については、前節の流れと同様です。

$${v_y=\frac{dy}{dt}=gt+C_3}$$ , $${y=\frac{1}{2}gt^2+C_3{t}+C_4}$$

制約条件(初期条件)は次の通りとします。水平方向と落下方向のそれぞれについて、特殊解を求めます。

  • 水平方向:$${t=0}$$で$${x=0\,{,}\,v_x=v_0}$$

  • 落下方向:$${t=0}$$で$${y=0\,{,}\,v_y=0}$$

これらの初期条件から、積分定数を求めます。

$${C_1=v_0\,{,}\,C_2=0\,{,}\,C_3=0\,{,}\,C_4=0}$$

変位と速度(特殊解)は次の通りです。2次元問題であることから、これらの解は、ベクトル量として見たときの「成分」に相当します。

  • 水平方向:$${x=v_0{t}}$$ , $${v_x=v_0}$$

  • 落下方向:$${y=\frac{1}{2}gt^2}$$ , $${v_y=gt}$$

例えば、速度を本来のベクトル量(表記)で記述するならば、次の通りになります。

$${\bm{v}=(v_x,v_y)=(v_0,gt)}$$

また、ベクトルの定義に倣って、ベクトル量である速度を大きさ(スカラー表記)に変換することも可能です。

$${|\bm{v}|=\sqrt{{v_x}^2+{v_y}^2}=\sqrt{{v_0}^2+(gt)^2}}$$

今回は外力を重力(場)に限定して話を進めました。ただし、現実は物体の落下速度が単調に増加する訳ではありません。一般的に、流体的作用のひとつとされる「粘性抵抗」により、落下の加速度がゼロに収束します。

おわりに

今回のテーマは質点と剛体の運動学について。第2回は質点運動を運動方程式を解くことで、解析的に求める過程を実例を通して示しました。

次回は剛体の力学について、今回と同様に運動方程式を数学的に記述することから、確認をしていきます。


  1. 質点&剛体と運動学の概要

  2. 質点の運動方程式

  3. 剛体の運動方程式 →【次回】


高校物理で必修的に登場するものとして、質点の等加速度直線運動の問題があります。公式として扱われることも多いですが、その背景には今回で紹介したような微分積分の知識があります。

次回は大学レベルの話題に突入することになりますが、引き続き、よろしくお願いいたします。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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