質点&剛体系の振動問題 -4-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回は、前回の話題「質点と剛体の運動学」の続きで「振動問題」をテーマに取り上げます。
振動を数学的に考えると「物体が同じ経路を周期的に行き来する事象を三角関数や指数関数を組み合わせて表現すること」に行き着きます。
力学は原則的に「ニュートンの運動法則」に従うことを踏まえて、物体運動を数学的に記述する。その流れは同じです。
1質点系の単振動問題
減衰を考慮した1質点系振動
外力を考慮した1質点系振動
単一剛体系の振動問題 →【今回】
♦️前回記事(再掲)
前回は1質点系のバネマスモデルに関する強制振動を扱いました。こちらは単振動や減衰振動とは異なり、運動方程式が「2階定数係数非斉次常微分方程式」という形でした。
これまでは1次元(1質点)のバネマスモデルが対象でしたが、今回は単一剛体系の振動モデルを考えます。ここでは「剛体振り子」を取り上げることにします。
運動方程式も回転運動を踏まえた形です。剛体の運動学については、以前の投稿(説明)を確認頂ければと思います。

剛体振り子の運動方程式
質点とバネによる質点系の振動を前回まで見てきました。今回は、剛体棒の回転揺動を単純に模した「剛体振り子」を取り上げます。
質量mの剛体棒(回転支持端)があり、振り子の要領で剛体棒が揺れ動くものとします。
剛体棒が鉛直方向から角度$${\theta}$$だけずれた位置にあるとき、重力に準じた復元力(トルク)が働きます。ここで、角度は時刻tの関数です。

原点を基準に反時計回りを正とします。重力は剛体棒の重心(中央)に生じます。剛体棒に関する回転の運動方程式は、次の通りです。
$${I\ddot{\theta}=-\frac{1}{2}mgl\textrm{sin}\theta}$$
ここで、Iは慣性モーメントです。復習になりますが、慣性モーメントは物体が回転軸(支点)から離れているほど大きいです。剛体を構成する微小質量と質量の回転軸からの距離(2乗)の積の足し合わせです。
$${I=\sum_{I}{m_i}{r_i}^2}$$
物体の質量は連続的に分布することから、微小質量$${dm}$$の足し合わせ(積分計算)で考えます。
$${I=\int{r^2{dm}}}$$
端部を回転支持とする剛体棒の慣性モーメントについて、微小質量$${dm}$$は微小長さ$${dr}$$と全長$${l}$$の1次元的な比率$${dm=(dr/l)m}$$で置き換えられますので、次の通りに求められます。
$${I=\int{r^2{dm}}=\frac{m}{l}{\int_0^l{r^2{dr}}}=\frac{1}{3}ml^2}$$
以上を踏まえて運動方程式を整理すると、次の通りになります。
$${\frac{1}{3}l\ddot{\theta}=-\frac{1}{2}g\textrm{sin}\theta}$$
上記は角度$${\theta}$$による「2階定数係数斉次常微分方程式」です。引き続き、同方程式から剛体振り子の運動の実態を明らかにします。

剛体振り子の数学的解法
今回の運動方程式(微分方程式)は、これまで取り上げてきた線形方程式とは性質が異なる「非線形方程式」です。
一般的に、非線形方程式はそのままの形で解くことは困難です。今回は振り子の揺動が微小量と限定して、運動方程式の解を求めます。
微分方程式には「線形」と「非線形」の2種類に分類されます。線形方程式とは、未知変数やその微分形が四則演算的に「1次結合」で現れます。これに対して、非線形方程式は未知変数を2乗で表記したり、三角関数の中に入り込むような場合を指します。線形の場合は「重ね合わせの原理」が成立するため、複数の解を足し合わせた形もまた解として成立します。非線形の場合は同原理が成立せず、解が複雑になることが特徴です。
角度$${\theta<<1}$$を仮定すると、正弦関数$${\textrm{sin}\theta}$$は次の通りに近似できます。
$${\textrm{sin}\theta\,{\approx}\,\theta}$$
これより、運動方程式を整理することで、線形方程式に落とし込みます。
$${\frac{1}{3}l\ddot{\theta}+\frac{1}{2}g\theta=0}$$
この形は以前に取り上げた「単振動」の運動方程式に類似します。
$${\ddot{\theta}+\omega^2\theta=0}$$ , $${\omega=\sqrt{\frac{3g}{2l}}}$$
ここで、$${\omega}$$は剛体棒の固有角振動数です。以前に倣い、一般解は次の通りになります。
$${\theta=A\textrm{cos}(\omega{t})+B\textrm{sin}(\omega{t})}$$
ここで、AとBは積分定数です。今回も初期条件として、質点の初期配置を有限の値で規定し、初速度はゼロです。これより、積分定数を求めます。
初期条件:$${t=0}$$で$${\theta=\theta_0}$$ , $${\dot{\theta}=0}$$
角度(特殊解)は次の通りです。
$${\theta=\theta_0\textrm{cos}(\omega{t})}$$
以上が、剛体振り子(揺動は微小量と仮定)の運動の力学的記述です。
今回は揺動が微小量である剛体振り子を考えました。これは「線形近似」と呼ばれる方法です。角度が微小ではない場合は、挙動が複雑になり、周期も僅かに長くなります。数学では「楕円積分」と呼ばれる表現を利用することになりますが、非常に計算が難解であるため、今回は割愛します。
実例では、理科実験でよく行われる「単振り子の周期測定」は、上記を利用しています。また、振り子時計も単振動の性質を利用することで、一定周期を保つように設計されています。

おわりに
今回のテーマは質点と剛体の運動学の話題から派生して、振動問題について考えました。
今回は主に剛体振り子の振動を扱いました。剛体運動の場合も基本的には質点系の振動問題の内容と本質は変わりません。非線形方程式を線形近似する行程を踏まえることで、初等力学の問題に置き換わります。
今回登場した2階定数係数斉次微分方程式・非斉次微分方程式について、詳細の解説を飛ばして進めた部分がありました。こちらは、別途改めて解説することにします。
今回のテーマはこれで終わりです。このマガジンでは様々な物理的に問題を数学を交えて、伝えていきたいと考えています。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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