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熱力学から始まるエネルギーの理解 -1-


まえがき

微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。

今回は高校物理から登場する「熱力学」について、大学(理工学分野)で扱う範囲まで拡大して、その考え方を見ていきます。

私たちの身の回りでは「熱」に関係する現象が絶えず起きています。温かい飲み物を机の上に置けば、やがて冷めます。反対に、冷蔵庫から取り出した飲み物は、時間が経つにつれて周囲の温度に変化します。

こうした現象を扱う学問が「熱力学」です。熱を起点にこれまで連載してきた「力学」の話を取り込んだ内容です。


  1. 熱の移動と熱平衡 →【今回】

  2. 状態方程式と熱力学第一法則

  3. 気体の状態変化

  4. エントロピーと熱力学第二法則


初回では、熱力学を扱う際の出発点である「温度」「熱」について、そこで発生する現象のひとつである「熱平衡」を説明します。

温度と熱の定義と両者の違い

普段の生活では、往々にして「温度」「熱」は近い意味で使われます。しかしながら、物理学では両者を明確に区別しています。

  • 温度:物体の「熱さ」または「冷たさ」を表す状態量

  • 熱:温度差がある物体の間を移動するエネルギー

熱(熱量とも呼ばれます)とは、力学的・電磁気的な「仕事」に含まれない形でエネルギーの移動を取りまとめたものであり、原則的に高温から低温へ流れるとされています。

例えば、温度の高いコーヒーと、それより温度の低い周囲の空気を考えてみます。

時間が経過すると、コーヒーから周囲へエネルギーが移動するため、コーヒーの「温度」は低下します。このとき、移動したエネルギーを「熱」と言います。

物体の内部に存在するエネルギーは「内部エネルギー」と言います。日常では「物体が熱を持っている」と表現することがありますが、これは、熱力学で扱われる「熱」とは、明確に意味が異なります。

こうした区別は、次回で扱う「熱力学第一法則」を理解する際にも、非常に重要になります。

熱力学における用語(熱・温度・内部エネルギー)の差異

温まりやすさは物質ごとに違う

物体に同等のエネルギーを与えたとして、全ての物体が同様に温まる訳ではありません。コーヒーを淹れる容器(材質)が違うだけでも、温まり方に差異が生じます。

これを定量的に表すために、物体の材質に応じた「比熱」「熱容量」が決められています。

質量mの物体に熱量Qを与えて、温度が$${\Delta{T}}$$だけ変化したとき、下記の関係式が成り立ちます。cは比熱です。

$${Q=mc\Delta{T}}$$

比熱は、単位質量の物質の温度を1$${K}$$(または1$${\rm\degree{C}}$$)だけ増加させるために必要な熱量を意味します。比熱が大きいほど、温度は上昇しにくいことになります。

また、質量mと比熱cの積を「熱容量」と言います。

比熱が物質固有の性質を表すのに対して、熱容量は物体の質量にも左右されます。例えば、コップ一杯分の水と浴槽全体の水では、水の比熱は等しくても熱容量は異なることから、温度を1$${\rm\degree{C}}$$上昇させるために必要なエネルギーは、自ずと異なるのです。

熱の移動から収束する熱平衡

温度差のある2つの物体を接触させると、熱は高温側から低温側へ移動するため、高温側の温度は下がり、低温側の温度は上がります。

十分な時間が経つと、両者の温度は等しくなります。このように、物体間で熱の移動が発生しなくなった状態を「熱平衡」と言います。

例えば、熱い飲み物を室内に長時間置いておけば、飲み物の温度は最終的に室温に近づきます。反対に、冷たい飲み物を置いた場合でも、同様に室温に近づきます。

ポイントは、いずれの場合も「周囲との温度差が解消される方向」へ状態が変化していることです。熱力学では、平衡状態をひとつの基準として、物体がどのように状態を変容するのかを考えます。

熱の移動の仕組み(現象)には、熱伝導・対流・放射などがあります。これらの詳細は「伝熱工学」の領域です。今回はあくまで「温度差が存在する場合に、熱は移動する」というところまでを押さえておきます。

おわりに

今回は熱力学の入口として、温度と熱の違い、比熱や熱容量の意味、そして熱平衡の状態について説明しました。

重要なのは、熱を単に「物体の温かさ」と考えるのではなく、温度差に基づいて移動するエネルギーとして捉えることです。そして、温度の異なる物体同士で熱が移動することで、熱平衡状態に近づきます。


  1. 熱の移動と熱平衡

  2. 状態方程式と熱力学第一法則 →【次回】

  3. 気体の状態変化

  4. エントロピーと熱力学第二法則


ところで、物体に与えられた熱は、どのようなエネルギーとして存在するのでしょうか。また、気体が膨張して外部へ仕事をしたとき、エネルギーはどのように変化するのでしょうか。

次回は、理想気体の状態方程式を入口として、内部エネルギーの考え方を示しながら、熱力学に関するエネルギー保存則である「熱力学第一法則」について考えます。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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