材料力学からの変形問題の理解 -3-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
これまで、物理学の中でも「質点」や「剛体」の力学を主に扱いました。今回は「連続体」の力学をテーマに掲げます。
物体の運動と変形の両方を考慮する物理モデルを「連続体」と言います。変形は、物理的に作用する外力を通して物体に生じる形状変化を指します。
物体(連続体)の運動と変形に起因した構造物の強度や耐久性について、定量的に理解するための学問を「材料力学」と言います。大学の機械系学科では必須の教科であり、機械や建物の構造設計では重要な学問です。
物体(連続体)の変形問題
物体の変形の力学的表現(1)
物体の変形の力学的表現(2)→【今回】
変形の単軸&多軸的理解
変形の大局的分類と現象理解
♦️前回記事(再掲)
前回は「変形」という概念の数学的な捉え方ついて、主に「ひずみ」という概念を用いて示しました。今回は「応力」という概念を導入して、力学的な関係性を紐解きます。
大切なのはいきなり数式を追いかけることではありません。引き続き、材料力学を数学という道具を用いて理解する視点から、話を進めます。

ひずみの力学的な定義
前回は、変位は物体内部の各点に定義される物理量であり、空間に分布する変位場として表現できることを確認しました。
また、物体内部で各々の基準配置に対する変位(ベクトル)が異なれば、基準配置と現在配置の間で生まれる距離も異なるため、変形が生じます。この変形の程度を表す物理量を「ひずみ」と定義しました。
例えば、物体が剛体運動だけを起こすとしたとき、物体内部に変位は存在しますが、各々の位置で変位(ベクトル)は同じですので、物体に変形は伴いません。すなわち、ひずみはゼロです。

材料力学というマクロな現象を基準とするならば、ひずみは「物体に生じる変位の割合」として定義されます。
今回は、簡易的に1次元の棒の伸縮を考えます。長さ$${L_0}$$の棒に引張力または圧縮力が作用すると、棒は力の方向に伸縮します。伸縮後の棒の長さ$${L}$$を規定すると、ひずみ$${\varepsilon}$$は次式で表現されます。
$${\varepsilon=\frac{L-L_0}{L_0}}$$
前回示した連続体力学に準えるならば、$${L_0}$$は基準配置、$${L}$$は現在配置に対応します。

応力の力学的な定義
変形が生じる背景には、必然的に力の存在があります。先述の棒の伸縮問題に準えるならば、変形(伸縮)に内部的に寄与する力(内力)です。
ここで、内力は物体に作用する外力と対になる存在であり、力のつり合いを前提とした、外力に抵抗するように働く力を指します。
また、変形を定量化するには、単純に内力を見るだけでは不十分であり、内力が作用する断面と合せて考える必要があります。例えば、物体の内力が同等でも、太い柱と細いワイヤーで変形の程度は異なります。
すなわち、材料力学では変形に寄与する力を「単位面積当たりに作用する内力」として定義します。これを「応力」と言います。

棒の伸縮問題について、棒の断面積$${A}$$と内力$${F}$$から、応力$${\sigma}$$を次のように規定します。
$${\sigma=\frac{F}{A}}$$
ここで、棒に作用する外力$${P}$$と内力$${F}$$は対の関係にあります。
構造物の内部に発生する力(内力)の状態について、構造物の規模に依存しない形で統一的に評価できることが、ひずみや応力という物理量の重要な特徴のひとつです。

ひずみと応力の関連付け
以上のように、ひずみは構造物の変形の状態を表し、応力は構造物の内力の状態を表しています。次に考えるべき事柄として、応力とひずみの間にある関係が挙げられます。
例えば、同等の応力が与えられたとしても、ゴムと鋼材では変形の程度は異なります。これは、材料ごとに変形のしやすさが異なるためです。
材料力学では、応力とひずみの関係を表す式を「構成則」と言います。材料の変形における性質(特性)を数学的に表現したものです。

構成則は材料ごとに最適な形として存在します。その中でも、最も古典的で簡便な形の構成則のひとつに「フックの法則」があります。
$${\sigma=E\varepsilon}$$
フックの法則は単純な1次関数の式であり、比例定数$${E}$$は「ヤング率」と呼ばれる、材料ごとに決まる物性値です。
ヤング率は「縦弾性係数」と呼ばれており、引張・圧縮方向に対する伸縮の程度を表します。一方で、引張・圧縮とは別にせん断(ずれ)による変形があり、同様に変形の程度を指す物性値に「横弾性係数」があります。

フックの法則はバネの復元力の定式化で有名ですが、材料においても「弾性領域」と呼ばれる早期変形の範囲では、除荷後に元の形状に戻る性質があります。

おわりに
今回は「変形」を力学的観点で表現するためのプロセスを示しました。前回の話からステップアップして、数式を交えた説明に意識を向けました。
ひずみは構造物の変形の状態を表す物理量であり、応力は構造物の内部に発生する力の状態を表す物理量です。そして、それらを紐付けるための数学的概念が構成則です。
材料力学では、これらの関係を利用することで、構造物の設計や安全性評価を理論的に進めています。
物体(連続体)の変形問題
物体の変形の力学的表現(1)
物体の変形の力学的表現(2)
変形の単軸&多軸的理解 →【次回】
変形の大局的分類と現象理解
今回は棒の伸縮問題という単純な例を引用しましたが、次回はさらに拡張した形について、確認していきます。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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