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夢を売る

モノ作りの仕事は儲からないもの…だったと思うんです。これまでは。

 それでも多くの人が目指すのは、そこに夢があるからでしょう。やがてそれが続けられなくなるのは、生活が出来ないからであり、生活する為に他の仕事をして…やがて戻れなくなる。
「いつか戻ろう」
「いつかもう一度」
 そんな想いが遠い昔の話になってしまいます。

 ボクもそんなことを何度も繰り返しました。
 絵描きを夢見てデッサン教室に通いながら画材店に勤めていた時期が一番純粋に夢を追いかけていたかも知れません。その時に知り合うことが出来た大家と呼ばれる絵の先生に「絵描きになりたいんです」と話したことがありました。
 すると先生は言いました。
「止めておいた方がいい。絵描きは社会的地位がない。クレジットカードだって作れない。」
 教室で多くの生徒さんを抱える先生の言葉です。ボクは意外に思いましたが、今はその言葉に大きな愛情を感じます。言葉の向こうに見えるのは「この世界は厳しい世界だぞ。それでもいいなら頑張りなさい。」と言う想いです。
 今にしてみれば、あの時期は節目でした。二〇代の後半。それからの道程は挫折の連続でした。だからこそ、あの先生の言葉に意味を見出すことができるような気もします。

 何年か後、デッサンを教わっていた先生に差し上げた年賀状の返信にはこんな一言がありました。
「思うようにやりなさい。」
 ずしんと胸に響く一言でした。いつかボクもこの言葉を誰かに贈ってあげられるだろうかと考えます。

 絵を描かれる方の言葉はまるで油彩のようだと思ったりします。人生のデッサンを重ね、緻密に描かれたそのデッサンをかき消すように下地を塗り、また荒描きから始めます。下絵には乾きが早く艶のないオイルを使います。ザクザクと大胆に描く荒描きはまるで若い頃の挑戦の日々に似ています。艶がないのはその後の描画で使用する絵の具が定着しやすくするためです。そして徐々に艶の出る油を配合して変化を持たせつつ作品を仕上げて行きます。荒描きで捉えた形を少しずつ明確に繊細に描いて行く作業は、失敗の中から答えを見出す過程に似ています。
 出来上がった作品の下地には多くの想いやメッセージが重ねられ仕上がった作品からはその様子を伺い知ることは難しいでしょう。否定的な言葉の下地には補色関係にある熱いメッセージが込められています。

 繰り返す失敗も戸惑いもすべてこれからの人生の下地になって行くこことは間違いないのでしょう。だからこそ繰り返し。何度でも。

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