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arusakka
『迷探偵 沖田』第13話:父の遺した座標
工作員から奪った小型端末には、一つの座標が示されていた。 場所は、沖田の故郷である地方の寂れた村。 志乃は眠り続ける沖田に一度だけ別れを告げ、鉄路を北へと辿った。
辿り着いたのは、深い霧に包まれた古い邸宅。葛城邸のような華やかさはなく、ただ死を待つ老人のように沈黙する家。そこは、沖田宗一朗の隠れ家であった。 志乃は三つの鍵のうち、真鍮の鍵を手に取った。 玄関の鍵穴に差し込むと、驚くほど滑らかに回る。
室内に漂うのは、古い書籍と、かすかなオゾンの匂い。 奥の書斎で見つけたのは、沖田の母親が残した日記だった。 そこには、夫・宗一朗が進めていた「魂の硝子化」への恐怖と、息子への深い愛が綴られていた。
「……沖田さん。あなたは、この日記を読んでいたのですね」
日記の最終ページには、沖田の筆跡でこう記されていた。 『父は神になろうとし、母は人であろうとした。僕は、そのどちらにもなれず、ただ鍵を数えるだけの亡霊になった』
その時、背後の闇から、車椅子に乗った一人の老人が姿を現した。 「……宗一朗の息子は、まだ目覚めぬか」
老人の名は、羽鳥。宗一朗のかつての助手であり、唯一の生き残りだった。 彼が語り始めたのは、沖田という名前さえもが、組織によって「調律」された偽りの記号であるという、衝撃の事実だった。
