慣れと学習
アシベです。
いつもnoteを読んで下さり、ありがとうございます。
この8月でnoteを書き始めてから7ヶ月が経ち、これまで12本も記事を書き上げてきました。記事を書いているうちにコツが掴め、当初と比べて上手く書けるようになっています。
そんな成長ぶりを振り返るつもりで、13本目の今回は「慣れ」をテーマに書いていきたいと思います。
「慣れ」とは、
ある状態や状況に繰り返し接することで、それに対して違和感がなくなり、普通のこととして受け入れられるようになる状態を指します。また、経験を重ねて、ある行動や作業が上手になることも意味します。
経験を積んで馴染む、繰り返し学習して意識せずともできるようになる、環境や状況に適応するなど様々な文脈で何気なく用いられていますが、神経発達障害(LD含む)やギフテッドを理解する上でも重要な概念でもあります。
以前、発達障害啓発週間期間中にLDをテーマにした記事を書きました。
こちらも併せて読むことを強く推奨します。
慣れと学習の密接な関係
ここからが本題です。なぜ密接に関係しているのかを理解するには神経可塑性の概念についても理解する必要があります。ノーマン・ドイジは神経可塑性について、以下のように述べています。
神経可塑性とは、自己の活動や心的経験に応じて、脳が自らの構造や機能を変える性質のことである
例えば、新しいことを学習してスキルを身に着ける、経験することで今までできなかったことができるようになる、といった変化が分かりやすいかと思います。
つまり、「できない」→「できる」ようになること。
ところが、神経発達障害や凸凹のある子どもや成人は、慣れや学習がうまく積み上がらないために、仕事や学業で苦労しているケースが少なくありません。
生活習慣や運動,そして学習も繰り返すことで習得していく・・・慣れとか自動化が進む。
— 辺境の魔道士@ギフトミンタラ (@jnkun2015) January 28, 2021
しかし,凸凹のある子どもは,何度繰り返しても人と同じように習得することが難しい領域がある。
働かない神経細胞・・・やる気のない神経細胞がいるんだね。
一体なぜ、慣れや学習が積み上がりにくいのでしょうか?
LDの場合はワーキングメモリーの障害が影響していると考えられます。ワーキングメモリーは作業記憶と言われ、作業や思考を行うために必要な情報を一時的に記憶・処理する機能のことですが、読み・書き・聞く・話す・計算するといったいずれの能力においてもワーキングメモリー(Baddeley, 2012)が関与します。
俳優のトム・クルーズは、ディスレクシア(読字障害)であることは有名ですが、少年時代は文字が読めないことに悩んでいました。母親やアシスタントのサポートを受けながら、台本を録音して聞き、セリフを暗記することで、その困難を克服してきました。
Nicolsonらは、読み書きの困難の背後には手続学習に問題があり、小脳機能が関与していると見ています。
学習障害って,物事の習得についてのいくつかの困難を持っている。
— 辺境の魔道士@ギフトミンタラ (@jnkun2015) July 15, 2018
自動化されない・・・効率の悪さ。
発達性読み書き障害(ディスレクシア)は、文字と音の結びつき(デコーディング)の弱さが主たる原因の学習障害です。一方で「文字や記号の視覚認知・記憶」の弱さも報告されています。fMRIで計測した脳領域では音韻処理は「左頭頂側頭部」、視覚認知処理は「左紡錘状回」の弱さとして現れます。 pic.twitter.com/5bVxoCazMh
— 読み書きLDの触読学習『触るグリフ』 (@sawaru126) October 19, 2021
ギフテッド理解においても「慣れ」は無視できない
この見出しを見た瞬間「えっ⁉」と思いますよね。
実はギフテッドも慣れが生じにくい性質があります。なぜなら、ギフテッドは非同期発達といって、神経発達障害や凸凹のある子どものように認知能力の偏りやアンバランスがあるからです。
2014年12月に発行された「読み書き困難を持つ知的ギフテッドの支援」という論文に実際の事例が掲載されています。この論文ではディスレクシアと併存している知的ギフテッドの男の子が抱える困りごとや支援について書かれており、2Eへの理解を深める上でも参考になると思います。
また、2016年3月に発行された『認知機能にアンバランスを抱えるこどもの「生きづらさ」と教育 : WISC-Ⅳで高い一般知的能力指標を示す知的ギフティッド群』という論文においても、先に紹介した論文と同様の困難が紹介されています。以下は知的ギフテッドが抱える困難を引用したものです。
・興味や関心のない作業は取り組めない
・単純な反復作業が苦手
・対人関係が苦手
・感情や感覚のコントロールが苦手
・書字が苦手
・暗算が苦手
・整理整頓が苦手
・協調運動が苦手
・ゲームなどの過集中
・なかなか達成感が得られない
このことから、LDをはじめとする神経発達障害やギフテッドも慣れが生じにくい性質があることが分かるかと思います。先ほどトム・クルーズの例を挙げた通り、ディスレクシアがあっても何らかの支援や配慮を受けることで、克服することも可能です。
慣れるまでに要する時間は当然個人差がありますが、LDがあっても神経可塑性によって「できない」から「できる」に変えることもできます。筆者の私も子どもの頃は作文や感想文を書くのが苦手でした。Twitterやnoteを通じて文章を書くことが楽しくなり、今はスラスラと書けるようになりました。
これらの知見を踏まえて、自分なりに「できる」ことを増やし、仕事や学業でも成功体験をどんどん積み重ねていって下さい。
参考文献一覧
・玉永公子(2023). 『LDは治癒可能 学習するとニューロンの構造が変わる』. 論創社. p17
・室橋春光(2021). 『臨床的作業記憶論 覚え書き: 発達障害の諸相とワーキングメモリ』. 北大路書房. p231, 235
・株式会社 宮崎言語療法室 触読学習シート(サワルグリフ). ディスレクシアと診断された有名人と隠れた才能について - ディスレクシア(読み書き障害)の多感覚学習|触るグリフ
https://sawaruglyph.com/celebrity/(参照 2025-08-09)
