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【宗次郎アルバムレビュー⑤】1998~2000年『まほろば』『あゆみ』『天空のオリオン』

オカリナ奏者・宗次郎さんのオリジナル・アルバム作品のレビュー記事。
第5回の今回は、1998~2000年に発表の『まほろば』『あゆみ』『天空のオリオン』を紹介します。
(↓前回・第4回の記事や、宗次郎さんのCD総目録も、ぜひご参照ください)


◎第16作『まほろば』(1998)

三内丸山遺跡にインスパイアされた、縄文への想いをテーマにした作品。

発売日:1998.9.18(キティ:現ユニバーサルミュージック)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:大島ミチル(①⑦⑧)、朝川朋之(②④⑩)、田尻光隆(③⑤⑥)、熊原正幸(⑨)

①まほろば(大島ミチル編曲)
冒頭のポルタメント(二つの音を滑らかにつなげた演奏)のかかったストリングス音(バイオリン類の弦楽器アンサンブル)が、まるで時空を超えて、縄文時代へとタイムスリップするかのように錯覚させる。
ゆったりとした、「故郷の原風景」によく似たメロディーが流れ、縄文の大自然が目の前に広がり、メイン・テーマが動きのある編曲・アレンジを伴って流れ出すと、縄文のムラの人々の営みが目に浮かんでくる…。
音楽を通して、縄文の世界へとタイムトラベルをしているかのような、イマジネーションあふれる良曲。 
“まほろば”とは、素晴らしいところを意味する、日本の古語。

②すべては森の神にまかせて(朝川朋之編曲)
ストリングスとハープによる、なかなか重厚なアレンジが聴きどころ。
森や木々や水や風に、大自然に神々が宿り、見守ってくれているという、縄文の人たちのアニミズム、そして精神性の高さを感じさせるような、気高いメロディーが印象的。

③UMI-YURA(田尻光隆編曲)
タイトル通り、海の波に揺られているかのような、ゆったりとした3拍子系の曲。Bメロ(曲の構成で、主旋律の2番目の部分)が特に美しい。
アルバム『水心』にも「海にゆられて」という曲があるが、「UMI-YURA」は「海にゆられて」と比べて、どこか悲しげで哀愁が漂っている。

④ハナサクハル(朝川朋之編曲)
春の到来を喜ぶ、縄文の人たちの気持ちを表現した曲だそうだが、リズミカルで楽しげなメロディーに、聴いていてウキウキとした気持ちが湧いてくる。
ハープ奏者の朝川朋之さんによる編曲が秀逸。木管楽器やハープ、ハンドクラップ(手拍子)の音が印象的で、とても効果的に使われている。
2016年8月の、岐阜・本巣市での宗次郎さんの淡墨桜コンサートを聴きに行った際、宗次郎さんと地元の根尾中学校のみなさんとで、この曲を演奏していたのが、とても素晴らしくて記憶に残っている。

⑤HITOMI~幼き瞳~(田尻光隆編曲)
悲しみに満ちたメロディーが印象的。タイトルからすると、明るい無垢なイメージの曲調を連想しそうだが、むしろ逆で、悲劇的な雰囲気が漂う曲。
縄文時代は、人の一生の平均年齢が低く、子供の生存率も低かったそうなのだが、成長するまでに命を落としてしまった、多くの幼子たちへの哀歌なのかもしれない。

⑥光アフレテ(田尻光隆編曲)
このアルバムで、一番のお気に入りの曲。
宗次郎さんらしい、日本的な詩情あふれるメロディーが素晴らしい。シンセによるミニマル風フレーズ(短い音型を繰り返すタイプのフレーズ)を活かしたアレンジも秀逸。
どこか、わらべ唄っぽい雰囲気を感じさせつつも、さわやかな印象のメロディー。
“和”の郷愁を呼び覚ましてくれる、こういうタイプの宗次郎さんの曲が大好きだ。

⑦パチャママ~祈り~(大島ミチル編曲)
オカリナとパーカッション(打楽器)のみという、ある意味、もっとも縄文らしい雰囲気を味わえる作品。
土笛と打楽器という、原始的とも言えるアンサンブルで、縄文時代の人たちも、きっとこんな音色を奏でていたんだろうな…と思わせてくれる曲。
オカリナも、リバーブ(エコーのこと・残響のかかる音響効果)をかけずに生音に近く、テナーF管の低音が、心地よく響く。

⑧祭祀~MATSURI~(大島ミチル編曲)
ゆったりめの前半と、壮大に盛り上がって行く後半の、大きく2つの部分から構成される曲。
祭祀のための祭壇を組み上げて、厳かな前祭を行い、炎を燈し、火を囲んで本祭を盛大に行っていく、縄文の人々の光景が目に浮かんでくるような、イマジネーションあふれる作品。
このアルバムの中でも、もっともダイナミックな曲となっている。
大自然の恵みを、神々に感謝する…そんな気持ちを、歌や踊りや音楽で表して、祭りを行っていたのかも…などと、色々想像しながら聴くと、楽しい曲である。
曲が盛り上がるにつれて、リズムが次第に加速していくアレンジが素晴らしく、高揚感を味わえる作品。

⑨まだ見ぬ人へ(熊原正幸編曲)
このアルバムでは珍しく、シンセサイザーメインの伴奏による曲。
シンセ・ストリングス(弦楽)系の音が、主に使われているが、寂しげで、どこか悲哀がただよっている曲調である。
メロディーも伴奏も、何となくぼんやりとした雰囲気な曲のため、このアルバムの中では、もう一つ印象に残りにくい曲となっている。

⑩アシタハレ(朝川朋之編曲)
ハープと弦楽によるアレンジが美しい。
どこか物悲しさを感じられるメロディーだが、やがて衰退してしまった、縄文文化への哀愁が込められているのかもしれない。
このアルバムの前半は楽し気な曲が中心だったが、終盤の9曲目と10曲目は、しんみりとした雰囲気がただよう。
“縄文への哀歌”で『まほろば』は幕を閉じられる。

<総評>
前作『愛しの森a-moll』で、原始の森・屋久島をテーマにした宗次郎さんは、その、縄文の森のイメージに続いて、三内丸山遺跡にインスパイアされた本作『まほろば』を制作。自然と共生していた縄文の人々のこころを、見事な音楽性で表現している。

宗次郎さんのアルバムは、本作『まほろば』以降、一枚のアルバムに数人の編曲家・アレンジャーが参加する形となった。

それまでは、一人のアレンジャーがアルバム一枚を丸々担当していたのだが、曲ごとにアレンジャーが変わる形となった。

本作では、大島ミチルさん、朝川朋之さん、田尻光隆さん、熊原正幸さんと、4人のアレンジャーが参加している。次作『あゆみ』以降も、しばらくは、このスタイルをメインとしたアルバム制作体制が続くこととなる。

このスタイルの長所は、宗次郎さんが作曲時に思い描いた曲調について、その曲調を最も得意とするアレンジャーに編曲を仕上げてもらうことで、楽曲の完成度を上げることができるということである。

逆に短所は、アルバム全体の統一感が下手をすると失われる危険性もあるということ。

そういう意味では、本作では9曲目だけ、他の曲と雰囲気が異なり、ちょっと浮いている感じも受けた。

また、本作から、宗次郎さんはポリドールからキティへと、所属レコード会社を移籍されているが、そのこともある程度、制作体制の変更に関係しているのかもしれない。もっとも、ポリドールもキティも、その後、合併・吸収され、現在はユニバーサルミュージックとなっている。レコード業界の再編もあり、2013年までの、宗次郎さんのアルバム(『木道』~『オカリーナの森からⅡ』)の発売元は、ユニバーサルミュージックが中心となっている。

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『まほろば』全10曲・再生リスト

「まほろば」(1曲目)

「ハナサクハル」(4曲目)

「光アフレテ」(6曲目)

「パチャママ~祈り~」(7曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
レコチョク

(※宗次郎さんの『まほろば』は、以下の記事でも紹介しています。
ぜひ、あわせてご覧ください↓)


◎第17作『あゆみ』(1999)

さわやかで、あたたかい曲調の作品に彩られて、前向きな気持ちになれる美しい作品。

発売日:1999.9.15(キティ:現ユニバーサルミュージック)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:大島ミチル(①②⑤⑥)、田尻光隆(③④)、沢田完(⑦⑨)、朝川朋之(⑧⑩)

①あゆみ(大島ミチル編曲)
オカリナに、パーカッション(打楽器)、ハープ、8弦ギター、そしてストリングス(バイオリン類弦楽器のアンサンブル)というアコースティックなアンサンブルで、このアルバム全体の方向性を見事に表現している。
明るく、さわやかな曲調がとても魅力的で、流麗なメロディーが素晴らしい傑作。
個人的に、“6拍子”の“さわやか系”の作品ということで、最も好きなタイプの曲。オカリナの音を通して、宗次郎さんの優しいお人柄が伝わってくるような気がする。聴いていて優しい気持ちになれる曲。

②花ふる道(大島ミチル編曲)
フォルクローレ(南米アンデスの民族音楽)風の曲。宗次郎さんお得意の曲調といえる。フォルクローレの中でも、楽しげな舞曲の雰囲気。
スタッカート(音を短く切って歯切れよく演奏すること)を効果的に使った演奏が素晴らしく、アレンジも見事。
宗次郎さんは、たいへんフォルクローレがお好きなようで、この曲でも、とても活き活きと楽しんで演奏されておられるのが、音を通して伝わってくる。聴いているこちらも楽しく幸せな気持ちになれる。(これこそまさに音楽の醍醐味!)

③三日月が笑ってる(田尻光隆編曲)
このアルバムの中で、もっとも日本的なメロディーラインの曲。
これもまた、宗次郎さんお得意の曲調といえるが、シンセサイザーを使ったアレンジも素晴らしい。特にイントロ・前奏部が印象的。
“月”をテーマにした宗次郎さんの作品は、これまでにも「月の下で」や「月まで歩いて」などがあったが、この曲は明るく楽しい雰囲気で描かれており、まさしくタイトル通り、“お月さんが笑っている”ような感じの曲である。

④西都(田尻光隆編曲)
哀愁漂うメロディーが印象的。
西都というのは、宮崎県に西都市という地名があるそうだが、ここでは、中国の古都・長安の別名の意味で使われているものと思われる。…とすると、宗次郎さん版“シルクロード”と言えるかもしれない。
ストリングスの編曲・アレンジが素晴らしく、オカリナとストリングスの見事なハーモニーを味わうことができる。
3曲目と同じく、この曲も何となく“月”をイメージするのだが、こちらは、夜空に寂しげに浮かんでいる月を、静かに見上げているような気持ちになる。

⑤旅立ち(大島ミチル編曲)
オカリナとパーカッション、そして8弦ギターのみというシンプルな編成ながら、圧倒的な躍動感を味わえる良曲。民族音楽の舞踊曲・ダンス曲が好きな方には、特におすすめの曲。グルーブ感(高揚感)あふれるリズムを堪能できる。
宗次郎さん作曲のメロディーも素晴らしく、とにかくカッコいい曲である。
イメージとしては、馬にまたがり颯爽と駆け出して行く、旅立ちのシーンを連想する。

⑥夢の道(大島ミチル編曲)
果てしない旅路を連想させるような曲調。
どこまでも続く道を歩き続けているような、ゆったりと、たゆとう雰囲気の曲。後半のヴォイスを取り入れたアレンジが印象的。

⑦道行(沢田完編曲)
オーケストラによるスケール感のある作品。このアルバムで最も大編成の曲であり、宗次郎さんの全作品を通じても、一二を争うほどの雄大さ壮麗さを感じさせる名曲。
もはや、オカリナとオーケストラによる交響詩と言ってもよい、壮大なスケールのサウンドを味わうことができる。
ゆったりとした美しく明朗なメロディーが大変素晴らしく、まるで、どこまでも広大な、澄み渡った青空や大自然が、眼前に広がっているかのような解放感を与えてくれる。傑作!!

⑧春の道(朝川朋之編曲)
透明感あふれるピアノとオカリナの音色が印象的。
ロマンチックなメロディーが素晴らしく、宗次郎さんの作品中で最もロマンチックで清らかな透明感を味わえる作品と言える。オカリナ、ピアノ、ストリングスによるアンサンブルが美しい。
まるで、感動的なシーンで流れる映画音楽のような、豊かな抒情性をたたえた傑作。

⑨大空と雲と(沢田完編曲)
親しみやすい美しいメロディーラインが素晴らしい。タイトル通り、広々とした大空をイメージできるような雄大な曲。
オーケストレーション(オーケストラの編曲)が見事で、曲が次第に、どんどんと盛り上がって行く構成が素晴らしい。7曲目と共に、オーケストラとのライブ演奏を聴いてみたいと思える良曲。

⑩青空を越えて(朝川朋之編曲)
マンドリンの音色が印象的な可愛らしい雰囲気の曲。アンサンブルが素晴らしく、オカリナとマンドリンの音色は、とても相性が良いことがよくわかる。
前向きな気持ち・晴々とした気持ちになれる、さわやかで楽しい曲。

<総評>
全体的に明るく、さわやかで温かな曲調の作品が多く、数ある宗次郎さんのオリジナルアルバムの中で、最も清々しい印象の作品。“空”や“道”といったテーマの曲が多いのも特徴的。

宗次郎さんの曲の一つのタイプとして、“さわやか系”の曲は、これまでのアルバムにも各1~2曲ずつ程度入っていることが多かったが、『あゆみ』は、それらをまとめて凝縮した感がある。

宗次郎さんのアルバムを聴いてみたいと思っておられる方で、曲調やテーマ的に重くなく、長調の曲が多くて気楽に聴いて癒されるようなCDを求めておられる場合は、この『あゆみ』を選べば間違いはない。

自分自身、宗次郎さんの作品の中でも、“さわやか系”の曲が特に大好きなのだが、『あゆみ』はお気に入りの1枚。個人的には、90年代の宗次郎さんのアルバムの中では、最も好きなアルバムだったりする。(ちなみに、『あゆみ』は90年代最後の作品)

宗次郎さんのアルバムとしては、自然三部作や、次作の『天空のオリオン』の方が知名度は高いと思われるが、『あゆみ』は、もっと評価されるべき傑作であると言える。

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『あゆみ』全10曲・再生リスト

「あゆみ」(1曲目)

「旅立ち」(5曲目)

「道行」(7曲目)

「春の道」(8曲目)

「大空と雲と」(9曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
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◎第18作『天空のオリオン』(2000)

北欧・東欧をモチーフにしたファンタジックな作品。人気曲「天空のオリオン」収録。

発売日:2000.9.1(キティ:現ユニバーサルミュージック)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:武沢豊(①②⑦)大島ミチル(③⑤⑥)、大塚彩子(④⑧⑨)、宗次郎・斎藤葉(⑩)、沢田完(⑪)

カンテレ演奏:はざた雅子(①②⑤⑪)

①カレヤラ(武沢豊編曲)
“カレヤラ”とは、カレリア(フィンランド南東~ロシア北西部の地方)のフィンランド語での呼び方“Karjala”を元にしているらしい。
森林と湖沼がとても多い地方とのことで、カンテレ奏者はざた雅子さんが弾く、カンテレ(フィンランドの民族楽器の琴)の音色が、そのイメージを増幅する。
森と湖と雪の北欧へ、音楽を通してイマジネーションの旅をする、このアルバムの冒頭を飾るにふさわしい美しい曲。
アレンジ・編曲担当の武沢豊さんと宗次郎さんは、本作が初顔合わせだが、とても洗練された編曲で素晴らしい。

②North Wind(武沢豊編曲)
ストリングス(バイオリン類の弦楽器のアンサンブル)による前奏・イントロのメロディーが印象的。
短調の、どこか哀愁のある流麗なメロディーラインが、北欧の冷たく寒い空気感を見事に表している。
この曲も、1曲目に続き武沢豊さんによる洗練度の高いアレンジとなっている。カンテレの音が、隠し味的にどこで使われているのかを探しながら聴くのも楽しい。

③森のトロール(大島ミチル編曲)
トロール”と言えば、北欧に伝わる妖精(妖怪?)で、ファンタジー系の映画やゲームなどでもすっかりおなじみだが、この曲もハープの音をふんだんに使い、ファンタジックな雰囲気を味わえる曲調となっている。
愛らしいメロディーラインながら、どこか不思議で幻想的な感じも漂う良曲。
このまま、ファンタジー系の映画やゲーム、アニメなどのサントラとして流しても、ピッタリ合いそうな気がする。
このアルバムの中でも、特に“北欧っぽい”雰囲気の作品。

④夢街道(大塚彩子編曲)
NHK BS-2『世界悠々』テーマ曲。
軽快で覚えやすいメロディーが秀逸。宗次郎さんの数ある作品の中でも、特にキャッチーなタイプの部類に入る。一度聴いたら忘れられないような、強い印象が残るメロディーラインの曲。
アルバム『愛しの森a-moll』以来となる、大塚彩子さんによるアレンジも素晴らしい。
NHK BSのテレビ番組のテーマ曲だったらしいが、どこか旅情をそそる雰囲気の曲。世界中の様々な街道を旅しているような…、そんなイメージにぴったりの作品。
スタッカート(音を歯切れよく短く切る演奏)を効果的に使ったAメロ(主旋律で1番目の部分)と、流れるようなスケール旋律(音階を順に滑らかに演奏するタイプの旋律)のBメロ(主旋律で2番目の部分)の対比が素晴らしく、特にBメロの旋律は、宗次郎さんの見事な、流れるような滑らかな演奏を堪能できる。

⑤憧れ(大島ミチル編曲)
イントロのカンテレの音色が印象的。
カンテレとストリングスを使ったアレンジが聴きどころ。哀愁に満ちたメロディーを奏でる宗次郎さんのオカリナを、見事に支えるアレンジとなっている。
このアルバムの中では悲しい雰囲気の曲だが、寒く暗く深い冬に閉ざされた、北欧の人たちの春への憧れを描いているのだろうか…。

⑥風の中の少女(大島ミチル編曲)
ヨーロッパの舞曲風の民族音楽を思わせる曲調。
6拍子系のメロディーと、アコーディオンをふんだんに使ったアレンジが印象的。どちらかと言うと、東欧の舞曲っぽい印象を受ける。
“風の中の少女”というタイトルだが、秋の収穫祭のような村のフェスティバルで、民族衣装を着て踊っている、東欧の村の少女たちの姿が目に浮かんでくるかのよう…。
リズミカルで中々楽し気な曲ではあるが、メロディーにはどこか、スラブ的な哀愁が漂っているように感じられる。

⑦天空のオリオン(武沢豊編曲)
宗次郎さんの代表曲の一つにして人気作。コンサートでも必ず演奏される名曲。
ゆったりとした抒情的で清らかな旋律が美しく、まさに、冬の凛とした空気の中、満天の星空で一際美しく輝いている、オリオンの星々を連想できる作品。
オカリナ・ソプラノG管(高音の笛)による演奏で、高音域の澄んだ音色と曲調が見事にマッチしている。
癒し度満点のこの曲は、ヒーリング・ニューエイジ音楽の重鎮・宗次郎さんの本領発揮といったところ。

⑧白夜の森で(大塚彩子編曲)
ハープのアルペジオ(分散和音)に乗って、オカリナの音色が流麗なメロディーを奏でる。
アレンジ自体はとてもシンプルで、3曲目のアレンジと同じく、ハープを多用しているのが特徴的。
“白夜の森”がテーマということで、北欧の寒冷な空気感とともに、どこか幻想的・ファンタジックな雰囲気も感じさせるメロディーとアンサンブルが見事。

⑨リュブリャーナの青い空(大塚彩子編曲)
リュブリャーナは、スロベニアの首都。
まるでヨーロッパの民族舞踊の曲を思わせるようなメロディーとアレンジ。躍動的な曲で、聴いていてとても楽しい作品。ヨーロッパの市場や広場などの風景に、ピッタリ合いそうな感じの曲。
ヴァイオリンも、フィドル(民族音楽でのヴァイオリン演奏)風な奏法をしているのが印象的。
コンサート時のMCでの、この曲についての説明がとても印象に残っている。
当時の紀宮さま(黒田清子さん)が、スロベニアを訪問される際、宗次郎さんが音楽大使として同行することになり、スロベニアの首都リュブリャーナの風光明媚な様子をイメージした曲を作ろうと、事前に作曲した曲で、現地で演奏したら拍手喝采の、大盛り上がりとなった…とのこと。実際には、リュブリャーナの青い空というのを、見たことがない上で作った曲だったのですが…というオチで、会場が笑いに包まれたのを覚えている。

⑩月といっしょに(宗次郎&斎藤葉編曲)
オカリナとハープのデュオ(二重奏)の曲。どこまでも優しく、温かいメロディーと音色で、夢見心地の気分が味わえる。
月をモチーフにした曲のようだが、この曲を聴いていると、雪に閉ざされた真冬の北欧の村の民家で、暖炉の火にあたりながら、おばあちゃんが子供たちに昔話を、優しい眼差しで語って聞かせているような、牧歌的な情景が連想される。

⑪Northern Lights Fantasy(沢田完編曲)
非常に雄大なスケール感のある大曲。壮大なオーケストレーション(オーケストラ編曲)が、広大な北欧の夜空を連想させる。
アレンジ担当の沢田完さんは、前作『あゆみ』の「道行」「大空と雲と」でも、スケールの大きいアレンジを提供されておられたが、この曲も素晴らしく、まるで映画音楽のテーマ曲を思わせる、ドラマチックなアレンジとなっている。
特に中間部は、オーロラの光のカーテンをイメージできるような、音画的な描写(音楽で風景を描写すること)となっている。
宗次郎さんのオカリナの音色が、オーケストラサウンドの中でも、最大限の魅力を発揮している楽曲と言える。

<総評>
宗次郎さんのアルバムというと、どちらかと言うと、日本的なメロディーや日本的な風物・自然をテーマにした曲が多く、世間的にも、そのイメージで見られることが多いと思う。

だが、本作『天空のオリオン』では、全面的にヨーロッパ、それも北欧(フィンランド)や東欧(スロベニア、スラブ)をメインモチーフに据えているのが最大の特徴と言える。

楽器も、フィンランドの民族楽器カンテレを取り入れたアレンジや、ハープを多用しており、これまでのアルバム以上に、欧州の民族曲風やファンタジックな雰囲気を堪能できる名作となっている。

中でも、コンサートで必ず演奏される「天空のオリオン」は高い人気を誇り、宗次郎さんの代表曲の一つとなった。

宗次郎さんと北欧・フィンランドとの関わりは、1994年発表のカバーアルバム『鳥の歌』に遡れる。

このアルバム『鳥の歌』で、「4つのフィンランド民謡」として、フィンランドの民謡がメドレーで収録されているが、ここでもカンテレが使用されている。その前年の1993年“水心”コンサートツアーの際も、MCでフィンランドを旅したことをお話しされ、現地の曲の紹介として先述の「4つのフィンランド民謡」を披露された。

この時分から、宗次郎さんはフィンランドに特別な愛着を持たれていたようだが、その思いが一枚のアルバムとして結実したのが、本作『天空のオリオン』だと言える。

初のヨーロッパ・モチーフのアルバムを経て、宗次郎さんの表現力・音楽性は飛躍的に広がったと言える。実際、この後しばらく、日本的なモチーフからは離れて、欧米的なモチーフによる作品が続くことになる。(北米大陸の自然をテーマにした次作『静かな地球の上で』や、オカリナによるキリスト教の讃美歌カバー『オカリナ・エチュード4~チャーチ~』など)

そういう意味でも、大きな転機、ターニングポイントと位置付けることができる、重要なアルバムである。

宗次郎さんの音楽=日本的、と思い込んでおられる方にも、このアルバムをぜひ聴いていただいて、欧風サウンドの宗次郎作品もあるということを知ってもらえればと思う。

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『天空のオリオン』全11曲・再生リスト

「カレヤラ」(1曲目)

「夢街道」(4曲目)

「天空のオリオン」(7曲目)

「リュブリャーナの青い空」(9曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
レコチョク


次回の<宗次郎アルバムレビュー>の第6回目では、2001~2002年に発表された『静かな地球の上で』『イアイライケレ』を紹介します。
どうぞお楽しみに!

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