「あはは」

中目黒の裏通り。
わたしは外資系をクビになった友達の救いようのない愚痴を右耳で聞きながら、左耳ではECMレーベルの畝るようなピアノ曲を流し、人生の行き止まりを歩いていた。
すると突然足元に、その声は降ってきた。
「あはは」
見下ろすと、真っ白なスモックを着た小さな子どもが一人。
何の文脈もなく、ただ何もない青空を仰いでケラケラと笑っていた。
「あっはははっ」
あまりのシュールさに、わたしは「……ちょっと待って......いま、少しだけ」
と通話をミュートする。
視線に気づいたのか、子どもはわたしを一べつすると、まるでモノクロ映画のワンシーンのように、静かに雑踏の中へ消えていった。
取り残された静けさの中、スマートフォンから友達の声が漏れている。
――ねえ、聞いてる?
「……聞いてる。うん」
疲れているのだろうか。
道の脇に置かれた大きいゴミ袋と小さいゴミ袋が、パンダとマルチーズに見えてきた。
わたしは目を擦りながら小さく息を吐き、ミュートを解除した。
「――ねえ、なんとかなるって。きっとさ。」
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あとがき
行き止まりのような午後、不意に混じる子どもの笑い声は、理由もなくこちらを少しだけ軽くしてくれたりします。
「あはは」という笑い声がほんのわずかに、世界の見え方をやわらげてくれるなら、「なんとかなる」という言葉も、きっとそれで十分なのだと思います。
このストーリーとは全く関係ありませんが、先日お邪魔した展示会にて、友人が制作したオブジェがとても素敵だったので一部ご紹介させて下さい。
インダストリアルな廃材のコラージュが生む、洗練された違和感と退廃的なかっこよさが絶妙なのです◯




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