眠れない夏の夜のために
「おじいちゃん、寝る前に何かお話ししてよ~」
「そうだな。じゃあ、ある小学校での出来事……」
昔、夏休みになると学校の体育館にみんなで泊まって、集団生活を体験するって行事があったんだよ。
その夏も、体育館で夜の映画鑑賞が有るはずだったんだけど、映写機が壊れてしまって、しょうがないんで別の企画を考えることになったんだな。そうしたら、新卒の若い男の先生が、肝試しをやろうと言い出してな。先生たちが校舎のいろんな場所に隠れて、生徒が数人ずつ決められたコースを通ってゴールに行き着けるかという、お遊びだ。
女子はきゃーきゃー騒いで、結構盛り上がってな。肝試し自体は大成功で、みな体育館に戻って寝ることになったんだ。
みな興奮が覚めやらず、話が尽きない。
「理科室のガイコツの後ろから、火の玉が浮かび上がったのにはビックリしたよな」と言う話をしていると、企画した若い先生が、
「ガイコツの後ろ? おまえたち理科室に入ったのか?」
理科室は使わなかったはずだと言うんだ。
「そんなこと言ったって、みんなガイコツの後ろに火の玉が浮かんでるのを見たんだから」
先生も、皆がそう主張するもんだから、じゃあ明日にでも現場を確認してみようと言うことでみんな寝ることにしたんだ。
その先生は気になったらしく、みなが寝静まってから、体育館をこっそり抜け出したんだ。それを見ていた悪ガキ3人が、その後を付けて行ったわけだ。
理科室に先生が入っていくのを見届けて、3人もこっそり教室の外まで行ったんだ。
「すまなかった、俺が悪かった」
教室の中から、先生の声が聞こえてきたんだ。
ドアが開いていたので中を覗くと、先生はガイコツの後ろに浮かぶ火の玉と話をしていたんだ。
3人は見てはいけないものを見てしまった気がして、慌てて体育館に戻って寝たふりをしたんだけど、実際は朝まで一睡も出来なかった。
そして、翌朝、あの先生がいないと騒ぎになり、他の先生たちが探し回ったんだ。
しばらくして、救急車のサイレンが近づいてきたんだ。そして、放心状態の先生が救急車に乗って去っていった。
その日以来、先生は学校へ来なくなったんだ。重い病気で退職したとだけ教えられた。悪ガキ3人は、理科室で見たあの光景が気になって、先生をお見舞いに行くことにしたんだ。
先生の入院していた部屋は、入り口に鉄格子のある檻の中みたいなところで、先生は頭からすっぽり白い布をかぶって頭だけ出していた。手の自由がきかない洋服を着ていたんだ。
3人を見た先生は、彼らのいる場所よりずっと後ろを見ながら、呟いたんだ。
「おまえたち、見てたよな……。かわいそうだけど、3人とも家には帰れないから」
そう言って、頬をゆるめて笑ったんだ。
「……おじいちゃんの話はこれでお終い」
「え~、終わりなの? その後、先生と3人はどうなったの?
おじいちゃんはその悪ガキの一人だったんでしょ」
「いいや、おじいちゃんはな、その先生だったんだよ」
了
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