【後編】デノン初のBluetooth®対応レコードプレーヤー「DP-500BT」開発者 岡芹 亮インタビュー
デノン初のBluetooth®対応レコードプレーヤー「DP-500BT」開発者 岡芹 亮インタビュー 前編 はこちら

Bluetooth対応プレミアム・セミマニュアル・Hi-Fiレコードプレーヤー
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再生が終わるとオートリフト&ストップ。開発者自身も使ってうれしい機能
●さて、前編では回転制御の仕方やトーンアーム設計など、デノンならではのこだわりポイントについてうかがいましたが、DP-500BTは新しくレコードを聴く層に向けて、Bluetooth対応など利便性にも細かく配慮されていると聞きます。このあたりの話をお願いします。まず、レコードを聴き終わったところで自動的にアームが上がる「オートリフトアップ&ストップ機能」を搭載していますね。

はい、トーンアームの性能に直接影響しないリフター部分に機構を取り付けています。アナログレコードの再生が終わって針が内周のエンドまで行くと、レバーと一緒に自動でリフターが上がって、ターンテーブルの回転が止まります。だから、レコードを聴きながらうたた寝をしてしまっても、大切なレコードや針を痛めることがありません。私、レコードを聴きながら気持ちよくなって寝てしまうことが多いので、オートリフトアップ機能は自分が絶対欲しいと思って付けちゃいました(笑)。

●そうですか(笑)。リフトアップは位置で制御しているのですか?
いえ、針の位置やトーンアームの角度も見ていますが、音による制御も加えています。再生が終わって針が内周まで来ると同じパターンの音が「プツ、プツ」と続きますよね。するとループし始めたとマイコンが判断してリフターを動かすモーターを駆動し、アームリフターの根元に付けた専用の機構でレバーと同時にリフターを上げる仕組みです。
もし音声を検出できなくても、内周の特定の位置にトーンアームが来たらセンサーが反応してタイマーがかかり、2分経った時点でアームを上げるという仕組みなので安心です。また、アームが上がったら一定時間でターンテーブルが止まるオートストップ機能も組み込みました。
フルオートのレコードプレーヤーも手軽で便利ですが、オートスタート機能をつけると、どうしてもトーンアーム周りのスペースに制限が生じてデザインや設計に制約が出てしまいます。針を下ろすところのマニュアル感覚はしっかり味わってもらって、上げるときはオートで。レコードを聴きながら寝てしまえる優しさ、大事ですよね(笑)。
Bluetooth送信はaptX Adaptiveまで対応。レコードをワイヤレスでも手軽に楽しむために
●さて、DP-500BTのもう一つの大きな特長がBluetoothを搭載したことです。Bluetooth対応のイヤフォンやヘッドフォンを使っている人には嬉しい機能ですよね。どのような注目点がありますか?

はい、本製品はBluetooth送信機能を搭載しています。普段お使いのBluetooth対応のスピーカーやアンプ、イヤフォンやヘッドフォンをそのまま接続できます。aptX Adaptive/aptX HD/aptXと幅広いコーデックに対応していて、DP-500BTのサウンドを高音質に伝送できます。特にaptX Adaptiveなら96kHz/24bitまで対応していますから、ハイレゾ相当です。あと、配線が必要なくなるので、置き場所もわりと自由になります。受け側の機器は8台までメモリーできます。
●アンプがなくてもレコードが楽しめるということですね。
そうです。アンプを使うと必ずレコードプレーヤーと並ぶじゃないですか。で、ケーブルで繋ぎますよね。でも、Bluetooth搭載なら離れていてもいいんです。例えば壁にスピーカーを掛けたり、本棚にスピーカーを置いたりして。レコードプレーヤーだけデスクの横とか近いところに置いて手元で操作すればいいんですから。
●操作はレコードプレーヤー側でできるのですか?
はい、本体の右側部分にBluetooth機能のON/OFFボタンが付いているのですが、このボタンを押せば、スピーカーやヘッドフォンとのペアリングもあっという間に完了。接続を切りたいときも本体側の操作で簡単に切断できます。

音量が大きい! そんな時も慌てずレコード本体でボリューム調整
●レコードプレーヤー本体でボリューム操作もできるそうですね。
本体にボリュームコントロールを付けたのには理由があります。製品の試作段階でいくつものBluetoothのデバイスと接続してテストをします。一般的にはBluetooth出力は固定値なので、例えばイヤフォンで予想を超える音量が出てしまうことがあります。そのような場合に針を慌てて上げたりするのは好ましくありません。
また、音量を下げようと思っても、受信する側の機器にボリュームが付いていなかったり、付いていても音量設定はアプリを使ってやらなくてはいけないものがあったりで、特に完全ワイヤレス・イヤフォンの場合は非常に面倒くさい。何度もタップしたりして私なんかは特に面倒くさいと思っちゃう(笑)。でも本体でボリュームを下げられれば、そういう問題は解消しますよね。

ボリュームは「+」と「-」がありますが第一優先は大きな音を下げるためです。
●こういう細かな機能を見ると、デノンのBluetooth使いやすそうですね。
自分でもいろいろなBluetoothの機器も触ってみますけど、これは送信だけですごいシンプルだし、使いやすいと思いますね。例えばaptXとかaptX Adaptiveなどになるとライトの色が変わるので、分かりやすいし。

Bluetoothヘッドフォンやイヤフォンがあればアンプがなくても手軽にレコードが聴けて、すごく便利ですよ。私自身も音を確認する時はこのペアリングの方が断然早いので、よく使っています。「レコードはアンプを通さないと」とか、「Hi-Fi的にはこうでなくてはいけない」とか言い出すと、使う人の趣味の幅を狭めてしまいますよね。今のレコードの聴き方ってもっと自由で、大らかでいいんじゃないかと思います。
ピュアなアナログサウンドを、一人でもたくさんの人に体験してもらいたい
●サウンド面のことも聞かせてください。フォノイコライザー内蔵ですね。
みなさんご存じかと思いますが、レコードプレーヤーはレコード盤の溝に刻まれた振動を針が読み取り、カンチレバーを通してカートリッジ内部の磁石またはコイルを動かすことで、微小なアナログ電気信号を作るんですね。そこで、取り出された小さな信号を実際に聴くことができる音楽に戻すためには、この信号をフォノイコライザーというもので補正し、大幅に増幅する必要があります。
Hi-Fiオーディオ用のアンプには通常フォノイコライザーが搭載されていますが、一方、ミニコンポや小型のアンプには装備されていないものも多いと思います。その点、デノンの設計思想に則って設計されたON/OFF切り替え可能なMMカートリッジ対応のフォノイコライザーを内蔵しています。ですから、Bluetoothデバイスの再生はもちろん、「PHONO」入力端子のないミニコンポやアクティブスピーカーなどにもケーブルで接続して再生できます。
フォノイコライザーについて詳しくはこちら
●音質にはどう関係するのですか?
このあたりのイコライジングはデノンのサウンドマスターである山内慎一を中心としたチームが緻密な音質調整をしてくれました。音抜けが良く、躍動感があり、前面から背景まで全体的なバランスが整った「Vivid & Spacious」という今のデノンサウンドの良さがしっかりと表現できていると思います。内蔵フォノイコライザーの音質も含めてレコードプレーヤーの基本性能を磨き上げたので、わざわざ外部のフォノイコライザーを用意しなくても高音質を楽しんでもらえます。
さらに、オーディオ用の電源や信号回路、モーター系の電源にはDP-3000NEで開発したカスタムグレードのコンデンサーを使うなど、安定した再生のために細かな部分にもこだわりました。
レコードプレーヤーを綿々と作ってきたデノン。技術と設計思想を引き継いで、これからも
●DP-500BTには、デノンがこれまでの歴史で培った数々のアナログ技術が随所に投入され、さらに、現代のライフスタイルにフィットする「使えるレコードプレーヤー」であることがよく分かりました。最後に、岡芹さんから付け加えたいことや、こんな方々にDP-500BTは使ってほしいなどメッセージがありましたらぜひお願いします。
デノンの歴史ということで言えば、私はおそらくこの会社で最年長の社員だと思います。古い話になりますが、私が入社した1981年当時は日本コロムビア(株)傘下で、三鷹事業所が日本電気音響(株)の古い建屋にまだあった時代です。そこではカートリッジをはじめ、レコードプレーヤー、業務機器などの開発が行われていました。ちょうど、業務機器仕様のCDプレーヤーの開発が始まっていた頃ですね。
いわば過渡期に会社に入社したのですが、当時そこでは昔の放送局向けの業務機器や、DL-103とか、草創期の民生アナログレコードプレーヤーの開発に携わった方々がまだ現役で働いておられました。私はリアルタイムでそうした先輩社員の仕事ぶりを見て、ノウハウをそばで学ぶことができました。アナログ再生に関わる当時の先端技術を叩き込まれた最後の世代と言えるかもしれません。
その後CDの登場により、2000年代の初めにはレコードの売上はいったん底を打ちましたが、デノンはその時代もDP-500MやDP-1300MKⅡ、また2000年以降も入門機としてのDP-29FやフルオートのDP-300Fといったレコードプレーヤーをずっと作り続けていたんです。
●それが、2010年代以降になるとレコードが見直され始め、世界的にレコードブームが盛り上がって現在に至るという。
はい、そうですね。ただ、今のレコードブームは、CDが出る前にレコードを買っていた世代だけではなく、20〜30代の若年層も牽引しています。レコードを「新鮮」と感じている世代と言えます。アナログらしいサウンドに惹かれる人もいれば、またライフスタイルを彩るアイテムの一つとしてレコードやレコードプレーヤーに興味を持つ人も少なくないと思います。音楽好きにとっては、アナログレコードを持っていること自体がカッコいい、ということもあるでしょう。
このようにレコードを新鮮なものと捉える新しい世代に向けて、デノンとして提示できるものは何か。それがDP-400やDP-450USBなどの「デザインシリーズ」であり、綿々と受け継いできたアナログサウンド再生の技術です。今回の開発に私がアサインされたのも、昔のアナログ時代の技術を知っていることが大きな理由だと思います。そこに今回はBluetoothをはじめとする現代の技術も組み合わせて、もちろん若い世代のエンジニアにも参加してもらって、今の時代に使い勝手の良い、信頼性の高い製品づくりを目指した。それがDP-500BTということです。
ですから、新しい世代、できるだけ多くの人にこのアナログレコードプレーヤーの楽しさを味わってほしいんですよ。そのためにも、できうる限りデノンのエッセンスは製品に入れ込んだつもりです。
コンポは持っているけどBluetoothのレコードプレーヤーが欲しい人にもいいと思います。アンプを持っていない人でもスマートスピーカーやBluetoothのヘッドフォンがあればOK。いい音でアナログレコードを聴きたい、だけどデザインにもこだわりたい、自分の好きなスタイルで趣味を楽しみたい。そんな音楽が大好きな皆さんに使ってもらいたい製品ですね。


●今日はお忙しいところありがとうございました。
(編集部I&W)
