あの時の私に、今日の海を見せてやりたい
ただのビーチピクニックのはずが、1年前の“ぎこちなさ”に答えを出す日になった。
波の音が静かに重なって、空はこの上ないぐらいの快晴。
ブランケットの上で彼が笑う。その横顔を見ながら、私は心の奥で「あの時の私」に話しかけていた。
先週、彼が仕事でフリマントル方面に行ったときに「めっちゃ濃いブルーの海が見える、すごく素敵なビーチを見つけた」って話してくれた。
自然が大好きで、フリマントルという街にも目がない私は、その話を聞いた瞬間に食いついた。
休みが重なっていた日曜、すぐさま「じゃあ行こう!」と決めた。
前日の夜、張り切ってお弁当を作った。
ブランケットとおやつを詰めて、ピクニック気分でいざ出陣。
電車から見える海岸線がすでに最高で、思わず窓に顔を近づけたままニヤニヤしてしまう。
「このマンション借りようか?」と冗談で言ったら、
「借りてもいいけど、他のことへの貯金ができなくなるよ?」と彼に現実を突きつけられ、
一瞬で夢から引き戻された。笑
ビーチに着いて、ブランケットを広げてお弁当を食べ、
潮風を浴びながら2人で寝転んだ。
気づけば、彼の腕の中——腕枕のかたちで。
その瞬間、1年数ヶ月前の“あの日”を思い出した。

デーティング期間の頃、まだ付き合う前のふたりで行ったビーチ。
あの時、彼が「膝枕しようか?」とか「腕枕がいい?」と優しく言ってくれたのに、
私は本能的に避けてしまった。
頭では「彼は優しい人」ってわかっていたのに、
体が怖がって動けなかった。
自分でもどうしたらいいか分からんくて、
ただぎこちなく笑ってごまかした。
あの時、彼はどう感じていたんやろう。
今日の海辺で、勇気を出して聞いてみた。
最初は「だいぶ前のことやし、覚えてないな」と笑っていた彼。
ちょっと寂しくなって「やっぱり私の記憶力が良すぎるだけか」なんて思っていたら、
ふと「your eyes are so beautiful」って言った。
まさかの記憶の断片。
あの頃はデーティング期間のはじめの方で好意を伝えるのも回りくどかった彼が、
今ではストレートに「I love you」と言ってくれる。
その変化がなんだか嬉しかった。
そしてもうひとつ聞いた。
「当時、膝枕とか腕枕を断ってしまったこと、どう思ってた?」
彼は少し考えてから言った。
“It’s ok, I understand.”
その言葉に、あの時の私の強ばった気持ちがふっと溶けていく気がした。
1年数ヶ月前は、彼からの好意に気づいてもスルーしてしまったり、
優しさに戸惑って距離をとってしまったりしたけれど、
今日は違った。
ニュージーランドとオーストラリアで国は違えど
同じ“ビーチ”という場所で、
今は安心して、彼の腕の中にいられる。
あの時の「ごめん」を、
今日ようやく笑顔で言えた気がした。
ただビーチに行って、お弁当を食べて、寝転がっただけの日。
でも、心の中でずっと答え合わせをしていた気がする。
過去のぎこちなさに今の自分が優しく返事をしたような、
そんな一日だった。

家に帰って、足の甲を見てびっくり。
白人の彼は真っ赤っかに痛そうに日焼けしとるのに、
黄色人種の私は何の変化もなし。笑
あの時の私に伝えたい。
あのぎこちない時を経て、今私は彼の足の甲の日焼けに手を焼いとるよ、と。笑
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