2.3 「恋愛」こんなに違う日本とスペインの「結婚観」──【イベリコ豚の国で迷子になって】
若くしての結婚を望みそれを実現した挙句、家庭から「逃げる」ために風俗に走るというのは、なんだか悲しく思えてしまう。
そもそも、日本ではどうして結婚に対する社会的なプレッシャーがここまで大きのかよくわからない。
少し前まで(今もかもしれないけれど)25歳を過ぎても結婚していない女性は「クリスマスケーキ」と呼ばれていたし、婚活が良い例だろう。男性が急かされることはあまりないけれど、私の周りの男友達は20代半ばの頃から「安定したい」「海外赴任になったときについてきてほしい」、つまり「お世話してほしい」という理由で結婚したがっていた。ひどい話だ。
日本政府の統計によれば、日本人の初婚平均年齢は男性31.2歳、女性は29.6歳(2019)だった。この数字を見たとき、意外と年齢が上だと思ったけれど実際は、女性の「婚姻件数が最も多い年齢」つまり「結婚のピーク」は26歳で、それ以降は1歳ごとに急激に減っていく、という結婚を焦せらせるような記事を発見した(だから婚活を積極的にしましょう、という話なのだろう)。
一方で、ユーロスタットによれば、スペインで初婚の平均年齢は33.2歳(2013)。また、私が住むカタルーニャ州では男性が36.05歳、女性が34.06歳(2019)だ。フランスもそうだけれど、スペインにも「パレハ・デ・エチョ(pareja de hecho)」という、「公式なカップル」であることを認める事実婚制度があるせいか、正式に「結婚」することにこだわりがある人は、そんなに多くないようにみえる。
子供がいても籍を入れていないカップルも知っている。離婚の手続きが面倒くさい(結婚するときにそんなことを考えるんだとも思ってしまうけど)とか、単純に書類上の話でしかないからどちらでもいい、と考える人が多いようだ。
たまたま世間話をしたよく知らない人(美容師とか)何人かに「いつからバルセロナに住んでいるの」というお決まりの質問から、「これからどうするの?(こっちが知りたい)」と訊かれたことが何回かあって、その度に「1年間学生して、そのあいだにパレハ・デ・エチョ(事実婚)してくれる人を見つけようと思ってきたけど、それをしてくれる相手を見つけるほうが勉強するより100倍難しいことに気づいたから諦めた」と答えている。半分本気だ。そして、毎回ほとんど似たような返答をされる。
「ここの人たち結婚したがらないから、難しいよ」
そんなことはわかっている。独身の周りには独身しか集まってこないのか、結構いい年をしているのに彼らに落ち着く様子はない。日本にいる同年代の友達はほとんど結婚しているし、すでに子供が2人いる人だってかなりいる。だから、スペインにいることはかなり気楽ではあるのだけれど、私はいつも孤独死を恐れていて、だから数十年後を考えると心穏やかでいられないこともある。
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ちなみに、もしキャバクラがアルゼンチンにあったら行くと思うかと馬鹿げた質問をハビエルにしてみたところ、苦笑いして「仕事じゃなければ行かない」と即答された。その理由は「必要性がないから」。そして「お互いが特別な存在であることをわかっているし、幸せで満足している」と言い切った。
そう、ハビエルとマレナは2018年に結婚し、2人のあいだには2歳になる息子のマヌエルがいる。正直、私が彼の著書『Camino al Este』を読みはじめたとき、意地悪くも彼らが日本で再会したけどうまくいかなかった、という結末を迎えるものだと完全に“期待”していた。そんな感想をハビエルに伝えると、笑いながらこう答えた。
「恋愛もののノンフィクションのほとんどが、悲劇的な結末を迎える。普通だけれどうまくいったという愛の形を描いた作品がなくて、この本を書いていたときに参考にするものがなくて困ったよ」
そして、微笑んでこう続けた。
「普通の愛の形の幸せを書くことは、挑戦だったよ。だって現実に日常生活でマジックなんて起きない。愛や幸せは、毎日の小さな出来事のなかにあるんじゃないかな」
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