キリング・ミー・ソフトリー【小説】12_暖かい田舎から
大学では新入生オリエンテーション、ガイダンス、健康診断とイベントが盛りだくさん。
相変わらず知成のおかげで友人作りには困らない。こちらがアルバイト及び自分改造計画に奮闘する中、彼はSNSを通じ、いち早く交流を深めたのだ。
そんな知成に放置され溜息を吐けば
「大人気だな。」
と聞こえ、短髪で凛々しい眉と眼差しが光る、どこかスポーツマン風の体格が良いイケメンが隣に立っていた。
「あいつと、小中高一緒の親友なんだろ?」
どうやら知成が知り合った者の一人で、真司(しんじ)と名乗る。
落ち着き払った安定感があり、非常に頼れそうな気がした。
「俺は千暁。知成は、ちーって……。」
「ちー。」
真司が語りかけた途端、吹き出してしまう。
「マジ、すげえ似合わない。」
「ちー。」
ダメ押しで再度ラブリーなあだ名を呼ばれ、腹を抱えて笑った。
つられた彼の真面目な表情が徐々に崩れていく。
「何、そのリアクション。おもしれー。」
「要はニックネームじゃないのか?俺も知成に倣ったんだぞ。」
「千暁でいいよ。多分これ、ずっとツボ。」
楽しげな様子を察し、知成が駆け付けてくる。
「あ、もう仲良くなっちゃった感じ?」
長髪パーマ、何かしらのアクセサリーをぶら下げ古着に身を包む軟派な知成と大人っぽくシンプルカジュアルな出立ちで硬派な真司は正反対だが、取り敢えずここでも異性にモテるタイプと連む宿命だと分かった。
彼らが脂の乗った美味しい刺身ならば、差し詰め自分は添え物のつまである。
真司には交際中の恋人がいるようで、彼女は大学の最寄り駅で待ち構えていた。
「真司くーん!そろそろ終わる頃かなと思ったの。」
そう言って元気いっぱい手を振る、ベビーフェイス。肩辺りでふわりとハネる黒髪が印象的だった。
「迎えに来なくても。」
真司がやれやれと肩をすくめる。
身長差が30cm近い。
成る程、ああいう女の子が好きなのか。
「お邪魔っぽいから退散しよ。」
そそくさと去る前に止められた。
「待って!真司くんのお友達ですよね。私、美弥(みや)っていいます。○○高の3年生です。先輩方、よろしくお願いします。」
案外きちんと挨拶され、思わず知成と顔を見合わせる。
「どうも。俺は知成で、」
「千暁。ご丁寧にありがと。」
風で柔らかく舞う、散り始めの桜が美しかった。
新たな友人が出来た話を莉里さんに嬉々として知らせると、
『なんか寂しい。もっと絡んでよ』
容易くノックアウトされる。
