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キリング・ミー・ソフトリー【小説】11_助演女優賞


最寄り駅から自宅へ向かう道沿いの桜が日を追う毎に咲き誇る時期。
春の訪れによって花開くのはそればかりではないのに何故、持て囃されるのだろう。
道端で健気に生きるタンポポに自分を重ね合わせ、同情しながら海岸通りを目指し走り始めた。
忙しさに怠け、忘れかけたジョギング。気温の上昇により風が心地良い。
自転車で競い合う小学生の群れに追い抜かれる。所詮、公園がゴール地点。昔懐かしさを覚えた。



雑念を振り払うべく歩みを進め、汗を拭う。願っても無駄で頭が真っ白にならない。
やはり引っ越しのアルバイトを続けるべきかと血迷う折、深い青が視界に飛び込んでくる。
ふと立ち止まり、スマートフォンで見慣れた寄せては返す穏やかな波の模様を撮って莉里さんへ送った。
馬鹿馬鹿しい、さあ家に戻ろう。


『キレー!ここ、アキくんちの側?』
忽ち返事が届く。なんで、今に限って。
続けざま一撃喰らう。
『私、海大好きなの!見せてくれてありがとね』
彼女はあくまで〈〉が好きだと述べた、そう、分かってる、勘違いすんな。
スマートフォンを胸に当て呼吸を整える。
いくら感情に蓋をし保険をかけようが消し去れず誤魔化しきれない、この人のことが好きだ。



何の気もなしに景色を共有したいと思った、その瞬間だけで恋と呼ぶには充分だった。
心臓がギュッと押し潰される。
この病をどう治すのやら、教科書には載っていなかった。


ゴールデンウィークは各地でイベント、野外音楽フェスティバルが開催される。
きのピや友人らと集まって関東へ遊びに行く計画を立てていた。もしや莉里さんもどこぞの会場に現れるのではと淡い期待を抱き尋ねると、私は仕事だからパス、らしい。
代わりに5月下旬行われるパンク・ラウド系ロックの野外フェスに参加する情報を聞きつけ、勢いに任せてチケットを購入した後、こういったジャンルのフェスは未開拓、且つ単独での移動手段について不安に見舞われたが、恐らく目的地に彼女さえいれば何とでもなる。



自覚があるのかないのか、度々こちらを翻弄し期待させてはすり抜けていく莉里さん。他の男と寄り添うシーンなど想像したくもない自分が、友人という都合の良いぬるま湯に浸かり関係性を繋いでいた。
『これでまた会えるね。楽しみ!』
たかが社交辞令にクラッときて、いよいよ再会してしまえば、のめり込む。
1ヶ月記憶の部屋に住まう彼女を辿った。


どうかバレませんようにと祈りつつ、無邪気な少年を演じる。




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