キリング・ミー・ソフトリー【小説】10_日常がラブソング
ファッション誌を開くものの、到底買える値段ではない衣類が並んでいた為、絶えずおしゃれな知成に泣きついて今日は一緒に買い物へ来た。
「ちー、どしたん。最近すごくない?」
慣れないコンタクトで現れた自分に、彼は明るい調子で問いかける。
清潔感が大事だからこういう服でいいの、量産型上等だよと全国どこにでもある店へ連れて行かれた。
当人は古着屋で服を調達しているらしいが、好きな店を紹介して貰いインターネットで検索すれば成る程、自分には着こなせそうもなかった。
「……あの、実は大学デビューとか、じゃなくて。」
「ん?」
様々な色や柄のシャツを当て、真剣な眼差しで似合う一着を選んでくれる相手に対し歯切れの悪い物言いになってしまう。
「えっと、好き、な人が出来た。」
「は?いつ、誰?俺、ちーのそういう話、聞いたことない!」
知成の反応に周囲の視線が一斉に集まる。大騒ぎされるのは想定内だった。
「はい、買い物後回し。飯行こ。」
「腹減ってねえわ。」
建物内のカフェに引き摺られ、男2人で奇妙なティータイムへ突入した。
そこで初めて莉里さんの存在を打ち明ける。
ついでに莉里さんのつぶやきアプリのアカウントも見せると、知成はひたすら渋い顔でスマートフォンの画面をスクロールした。
「フォロワー殆ど男じゃね?」
「えっ。」
「うーわ。このmannyってヤツ、莉里さんの呟きに毎回なんかしらのコメントかましてる。すげえ狙ってんだな。」
まさか。
一先ず彼女とメッセージアプリで繋がって安堵し、細かい部分を確認していなかったのだ。彼女自身のフォローはバンドの公式アカウントが主だが、フォロワーは確かに男性だらけ。
「若い女の子だと絡まれ易いわな。この音楽の趣味は尚更。」
「でもさ!わざわざ俺と会うってことは、てか連絡ずっとしてる時点で、彼氏いない筈。」
「うーん。ちーが友達になろって言ったせいで浮気じゃない認識かも知んないし、グレー。」
愕然とした。
気持ちを落ち着かせるべくコーヒーをガバッと飲み舌を火傷する。私に惚れたらお終い、と莉里さんに微笑まれた感覚、痛みの分だけ現実味が増す。
「なんだかんだ俺は応援すっかな。せっかくちーが好きになれた人だし。SNSぐらいで人は測れなくね?印象なんざ簡単に作れちゃうし、やっぱ実際話してみないとね。」
「ありがと。俺、一旦考える。」
きっと引き返すなら今のうち。
高校は卒業したけれど、恋心を締め括る方法なんて分からない。
