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キリング・ミー・ソフトリー【小説】08_男子たちに明日はない?


東京に住む歳上のお姉さん〉を好きになったとて、何をどうするんだ。
イケメンでもなくアルバイトもしておらず大学進学後も田舎の実家暮らし、幸いそろそろ運転免許を取得予定、将来性はある、まず太刀打ち出来やしない。
彼女には高身長の男前が釣り合う。
だから咄嗟に保険をかけ、友人になろうと誘った。傷付くのを恐れ考えるのを止め、せめて仕事を探す。


急にやる気を出し情報誌を広げ、家事を手伝い、知成の指導のもとピアスを開け、次はコンタクトをしたいと両親に打ち明けたところ、どうしちゃったのと心底驚いた様子だった。
「大学デビュー、ってか。」
苦し紛れの言い訳もタイミングが良かったばかりに納得させる理由となる。


俺は18年間、悟った風を装い一方的に諦めてはいつも誰かの影に隠れ、守られた。
こんな茶番はもうお終いにしよう。


卒業式当日、知成の姿を探すまでもなかった。コスプレ撮影の囲みと見紛う圧倒的な輪が校庭に作られている。
彼は万物を惹きつけるカリスマ性を持つ。
そんな群れも、唯一無二の親友が現れた途端に海割りの如く道を開いてくれた。知成が平然と手を振る。
「ちー、おはよう!」
「おはよ。すげえな、何これ。」
知成は両手にたくさんの紙袋をぶら下げており、近寄って中を覗くと数えきれない手紙やプレゼントが入っていた。
尋常ではない事態に思わず笑ってしまう。


「2人とも同じとこ行くんだって。」
「ヤバーい。かわいい、一生推せる。」
「追いかけちゃおうかな。」
「やだ、私も!」
きゃあきゃあ盛り上がる後輩達の話が飛び込み、告白されるのでは?と悠長に構えていたが、来る由もなかった。
やはり自分は知成が大好きな親友というだけ、アイドルのような人気者が選ぶからこそ価値が生まれる。
ここでも現実を突き付けられ、打ちひしがれた。



「彼女欲しかったなあ。」
帰り道。殆どボタンのない制服を着た知成の荷物を半分担ぎつつ嘆く。
「マジみんな見る目なし。俺、過去にいっぺんでもちーのことディスったヤツ全員フッた。ありえねえ。」
「ああ、うん。素敵なお知らせありがと、めちゃくちゃ虚しい。」
概ね〈いい人〉以上にステップアップした試しがない。片想いすらままならず、好きな女はもれなく知成に惚れていた。


愛してくれるのは家族くらい、ただ、もしかしたら莉里さんは。戯言が脳裏を過る。



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