50代。言わない20年が、10年後の私に返ってきた
タイムマシンがあったら、どこに行きたいですか?
私はふと思い立って、10年後の自分に会いに行きました。
そこで見たのは、
耳障りなテレビの音だけが響くリビング。
夫は自分の部屋でくつろぎ、
私はキッチンで——頼まれてもいないコーヒーを淹れていました。
夫は「ありがとう」も言わずに受け取り、
私はそれを見て勝手に被害者になり、心の中で毒づく。
「なんで私ばっかりしなあかんの?」
「なんで気づいてくれないの?」
……ええ、10年後もやってるんです。
“勝手にやって、勝手にキレる”という一人相撲。
せっかく自由もお金もあるはずの未来なのに、
私の顔はまるで
「一晩中、出汁も取らずに煮込まれた出がらし昆布」
みたいに、暗くてシワシワでした。
「なんでこんなふうになったんだろう」
「もう、一人の方が楽だった」
そんな暗くて狭い空間に、
私は自分を閉じ込めていたのです。
「責任感」という名の、自作自演の縛りプレイ
現在の私は、10年後の私に聞きました。
「ねえ、10年後の私。
まだ『なんで私ばっかり』って、冷えたコーヒー持ちながら叫んでるの?」
10年後の私は、力なく言いました。
「そうだよ。
でも今さら夫に言っても変わるわけないし、
『嫌なこと言ってる』って思われるだけでしょ。
めんどくさいし、
今日がこのまま穏便に終わるなら……もうこれでいいわ」
……この期に及んで、まだ“いい子”。
その瞬間、私はやっと分かりました。
夫が冷たいからでも、鈍いからでもない。
私が20年間、
波風を立てないために
気づかせないように先回りして
神業のスピードで全部片付けて
“そういう家庭”を完成させてきたからだ。
つまり、
私が作った仕組みの中で、夫は今日も快適に生きてるだけ。
(ここ、現実チェック。)
「言わない」って、優しさじゃなくて、ただの回避やったりする。
そして回避は、あとで利息をつけて自分に返ってくる。こわ。
人生2周目:あの未来から戻ってきたとしたら
あの暗いキッチンを、一回見てしまった。
出がらし昆布になった未来まで、ちゃんと見てしまった。
だから思ったんです。
いまの私は、未来から強制送還されてきた「2周目」なんだって。
もし神様がこう言ったら、どうする?
「一回だけチャンスをやる。
その代わり、自分を救う努力を1ミリもしなかったら、
またあの絶望のコーヒーサーバー前に強制送還だぞ」
……そんなこと言われたら、
「今日は疲れてるし明日でいいか」なんて、のんきに煎餅かじってられる?
私は無理。
自分を殺す“言わない”を、今日で卒業すると決めました。
痛みを引き受けてでも、10年後の笑顔を買い戻す
最近、私は夫に「こうしてほしい」を言うようになりました。
すると夫が言うんです。
「そんなこと言わなくてもわかるやろ」
……出た。
(全国の奥さんが一斉に白目むくやつ。)
昔の私なら、怯えて黙ってたと思います。
でも2周目の私は、
心の中で白目を剥きながら返しました。
「言わないと分からないよ。宇宙人じゃないんだから。
私もあなたのこと分からない。
だから言葉にしてほしい。
そうしてくれたら私が安心する」
正直、しんどい。めちゃくちゃ消耗する。
胃はキリキリするし、怖いし、伝わらない夜もある。
そして思うんです。
「もう黙ってコーヒー淹れてる方が500倍ラクやわ!!」
って。
でもね。
ラクを選び続けた結果が、10年後の“出がらし昆布”だった。
私は10年後の私を、こう書き換えたい。
自分の好きなことをして
シワの種類が「怒り」じゃなくて「笑い」になってる人
あの暗いキッチンから私を連れ出せるのは、
今の私の「しんどい一言」だけなんです。
最後に:あなたの優しさは、未来のあなたを殺していませんか?
今、家族を優先して飲み込んでいるその言葉。
それって、10年後のあなたを閉じ込める牢獄の壁を、
せっせと積み上げていませんか?
その優しさは、未来のあなたを窒息させていませんか?
私はもう、
“責任感”っていう綺麗な包装紙で、逃げを包むのをやめます。
10年後の私が、笑って言えるように。
「あの時、胃を痛めながら向き合ってくれてありがとう」って。
……とりあえず今日は、
夫のコーヒーより先に、
自分のためのチョコを一口食べてから、戦いに挑もうと思います。
とびっきり高級なやつを。
〈こちらもあわせて〉
▶︎「察してほしい」「言えない」が夫婦の間で積み重なる話、もう少し書いています。
▶︎「言えない」「ちゃんとしなきゃ」を一緒に手放していく場所を作っています。
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