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運転手はタオル巻き、の巻

今日は月曜日。美容師をしている夫の休日である。

これから夫に、息子のカットと、わたしのカットカラーをしてもらうんだ♡

午後からは講習会で名古屋に向かうと言う夫。
つまり、午前中しか空き時間がなく結構忙しい。

なのにだ。

前日の夜にえらい目に遭ったわたしたちは、一家揃って寝不足からの大寝坊。
おかげで予定よりもだいぶ時間が押してしまい、バタバタと家を出てきていた。


そして事件は起きた。


「あぁ〜〜〜、しまったアレ忘れた…」


いつもの3倍速くらい忙しそうに、わたしの頭にカラー材を塗りたくっていた夫。
なんとこのあとの講習会で使うものを家に忘れてきたと!

忘れ物、無くし物、うっかり、すっかり。
こういうことをお互いにやらかしまくる夫婦なので、思うことはあっても何も言えない。


時間はギリギリ。
夫が忘れ物を取りに戻る時間はない。どうする!!



一方、貴重な休日に髪の毛やってもらって申し訳ないなぁ〜とは思っているわたし。

「じゃあ、カラー待ちの間にわたしが家に戻って取ってくるか?」

ちょっとした罪悪感からそう申し出た。


そうして、私はカラー剤ベッタリの頭にタオルを巻かれたまま車を運転して家に戻ることになった。

駄菓子菓子。


何でこんなこと言ってしまったんだろう。


私は、すぐに後悔することになった。


みなさんは、お外で頭と首元にタオルをグルングルンに巻かれた人を見たことがありますか?あるわけないですよね?
あの姿で問題ないのは美容室だからですよね?

そうです。お外には行っちゃダメなんですよ、あの姿の人は。


もし、お外に出たならどうなるか。


そう。日常社会に絶対いるわけない、違和感バリバリ人間の出来上がりです。

さらにそれが、普通に車を運転しちゃってるこの状況。

いったいどれほどの恥ずかしさかって?

恥ずかしさにもいろいろありますが、座敷席での想定外穴あき靴下や、グレーTシャツの大汗染みみたいな生ぬるいレベルを想像してもらっちゃ困ります。


そこらの道端を、点滴のガラガラをひきながら裸足で散歩しているようなもんです。



終わった。悪目立ちしてるに違いない。
たとえ自意識過剰であろうと、すれ違う全員が私の頭を見ている、そんな気がしてくる!!!

赤信号で隣の車線に車が止まるたびにヒェー!
横断歩道の高校生にヒェー!
交通整理おじさんにはもう確実にバレててキェー!!!


あぁ、せめて!せめて知り合いには会いませんように、誰にも会いませんように、会いま……


ギャー!!!うしろの運転手、仲良しママ友の、旦那さんんんんっ!!!!!


よりによって、一生に一度しかないこんなタイミングで知り合いとバッタリしてしまった。



私は、床に穴が開くほどアクセルを踏んで逃げた。


駄菓子菓子、そういうときに限って踏切や信号にひっかかりあっさり追い付かれる。

家の方向も一緒だ。おそらくこのまま同じ道のりを行くことになる。

この際振り返ってジェスチャーと顔で説明して笑いに振り切ることも考えたが、恥じらいを捨てきれずあきらめた。


そうなるとこの頭に気付かれないために必要なのはもう、物理的な距離だけか…


わたしは再びハンドルを握りしめ、まっすぐ前だけを見て田舎道をぶっ飛ばした。


🚙🌪️🌪️🌪️


そうして恥ずかしい思いをしながらようやく家にたどり着いたわたしは、夫の忘れ物を取りに行くよりも何よりも先に、その後ろの車の男性の奥様(ママ友)に連絡を入れた。
とにかく誰かにこのどうかしてる状況を共有して笑ってほしかったのだ。

「やばいやばいめっちゃ面白いこと起きた」

興奮まじりにここまでのかくかくしかじかを報告した。

ママ友からの返信を待つ間は、洗面所の鏡で自分の姿を再確認したりもした。

こんな姿で!!!どうかしてる!!!!

1人で大笑いしたりもした。

ママ友の返信にはこうあった。

「最高なんだけど🤣なにしてんのww旦那に聞いたら、前にいるのは気づいてたけど頭はよく見えてなかったって。セーフセーフ!」

アウト中のアウトでしかないはずだが、どうやらセーフだったらしい。


しかし、戦いはまだ終わらない。
わたしはあの恥ずかしさにもう一度耐え、店に戻らねばならない。


はぁぁぁぁぁん!!!!!!


わたしは再びまっすぐ前だけを見て、帰り道を爆走した。


15分運転して店に戻り、「ねーねー!めっちゃウケるんだけどー!!!!!」と、道中での出来事を話して夫を笑わせようと前のめりに店に入ると、


「あれ持ってきてくれた?」



「あっ…」



そう。
わたしは忘れ物を取りに戻ったのに、それを持たずに店に戻ってきてしまったのである。



「え?」




うちのアホ嫁はいったい何しに行ったのか。


そう言いたいけど、元はと言えば…を考えると何も言えない。
そんな想いが全部込められた感じの、
夫の「え?」だった。


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